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第二十一話 タケウマンチップス

 今、竹馬バトルサポーター界隈で大ブームとなっているお菓子がある。

 その名も「タケウマンチップス」。

 竹風味のポテトチップスに加え、プロ竹馬バトラーたちの限定カードが1枚ランダム封入。中にはレアカードも存在し、バトラー志望の子どもたちを中心に熱狂的な人気を博している。店頭には長蛇の列ができ、即完売が続いていた。


「……やっぱ、ダメだった……」


 朝5時からスーパーに並んでいたタケルは、戦利品ゼロの空のエコバッグを手に、ラボのドアを開けた。

 どんよりとした表情で入ってくるタケルを、ソファにいたユレルと竹丸が振り返る。


「うそ、まだ開店からそんな経ってないでしょ?」

「うん……でも俺が並んだスーパー、開店と同時に30人くらい突入しててさ。レジ着く頃には、もう全部売り切れてた……」


 タケルはガクッと腰を落として座る。ユレルは同情の視線を送った。


「タケル、そもそもアマチュア竹馬バトラーでしょ? カードにすらなってないのに、そんなに必死になる?」

「うるさいな……欲しいもんは欲しいんだよ。あのカード眺めてるだけでテンション上がるんだよ」



「なら、転売で買えばいいネ!」


 ラボの奥から顔を覗かせたジョニーが、満面の笑みでタブレットを操作する。


「見て、タケル。ココなーら、箱で買えるヨ! 定価の5倍だけどネ!」

「たっっっか!」

「プレミア、ついてる! 限定カード、レアカード、封入率低いの全部あリマーす! 今すぐカートに入れるネ!」

「いらないよ! 自分で正々堂々と買わないと意味ないんだ!」


 ジョニーに突っ込みながら、タケルは床に寝転がる。



 そのとき!

 ラボのドアが開き、すっと優雅な気配が差し込む。


「おや……浮かない顔ですね、タケルさん」


 入ってきたのは、冬野夏雄。

 白のコートに身を包み、髪を撫でながら静かに微笑む。


「あっ、夏雄!」


 タケルが、ぱっと顔を上げる。


「どうしました? スーパーにでも殴り込んできたような顔ですね」

「……タケウマンチップスが買えなかったんだよ。もう全国的に品薄でさ……」


 それを聞いた夏雄の瞳がすっと細くなる。


「ふむ。君がそれほどまでに望むなら……僕に任せてください」

「えっ?」

「冬野グループのネットワークを使えば、倉庫単位で確保することも可能です。必要なら全国の小売店から回収して、一括購入しても……」

「まじで? 神かよ、夏雄!」


 飛び跳ねながら夏雄の手をがしっと掴むタケルに、ユレルが慌てて割って入る。


「ちょ、待った! そんなのダメ! いくらなんでも夏雄くんに頼りすぎだよ!」

「えー、でも……」

「努力もせずに欲しい物だけ手に入れるのはダメ! タケルだって転売からは買わないって言ったでしょ!」

「うっ……ぐ、言った……」


 言い返せずにしゅんとするタケル。

 夏雄は微笑んだまま、ユレルの方に向き直る。


「ユレルさんの言う通りです。望みを手にするには、それに見合う努力が必要です、タケルさん」

「……よし、わかった。俺、自力で手に入れる!」



 その日から、タケルは街のスーパーやコンビニを走り回った。

 開店前から並び、ダッシュで棚に向かい、何度も完売の札を見せつけられ、落ち込んで、また走って……。



 そして三日目の朝、とうとう――


「ゲットォォォォォォ!」


 両手にタケウマンチップスを抱えるタケルは、満面の笑みでラボに入って来た。


 ユレルと竹丸が拍手で出迎える。


「よかったね、タケル!」

「ウマァァァ! その顔が見たかったウマ!」


 タケルは早速カードを開封し、珍しいキラ仕様のプロバトラーを引き当てて大興奮。

 その日は嬉しそうに一日中、カードを並べたり、ポテトチップスの匂いを嗅いだりしていた。



 一週間後。


 いつものようにラボで研究を進めるユレルが、床に落ちているカードを見つけた。


「あれ……? これ、タケルが大切にしているカードじゃない?」


 拾い上げ、タケルに差し出す。


「はい。落ちてたよ」

「あー……それ、もういらねえ。飽きた」

「は?」


 あっさり返されたカードを持て余すユレル。


「あんなに探してたのに、一週間で飽きるとかありえないんだけど!」


 すると、背後のジョニーがひょこっと顔を出す。なぜか赤いネクタイを締め、パソコンの前に座っている。


「ならば、ジョニーが買い取りマース! 今なら高騰中! 相場の1.3倍で転売して、利益、ウハウハ!」

「おおっ、マジで? ジョニー、俺はやるぞ!」

「おい、こらァァァ!!」


 ユレルがカードをさっと奪い返し、竹丸もぴょんと飛び上がって前に立つ。


「転売なんて許さないウマ!」

「いや、ほら、事情が……」

「言い訳しない!」


 みんなのやり取りを見ていた夏雄が、カップを手に優雅にため息をついた。


「ふふ、また賑やかになってきましたね……」


 タケルのカード熱は長くは続かなかったが、その熱量は確かにタケルを動かす原動力になっているのも事実だった。 

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