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貴族のお嬢さん

第4話です。

 猫探しの日から数日がたった。

 僕は毎日冒険者ギルドへと通っている。

 だけど、一度もロッシルさんに会うことは無かった。

 冒険者の仕事は順調だ。

 ここ数日で、部屋の掃除や、荷物運び、森での木の実採集、いろいろやった。

 これじゃあ冒険者というより、便利屋だ。

 迷宮には1回もいっていない。

 迷宮での依頼が1つもないのだ。

 依頼なしでは、通行許可証は発行して貰えなかった。

 新人のソロ冒険者では、探索は難しいと言われて断られるのだ。

 しょうがない、今日も依頼ボードとにらめっこするか。

 そういえば、最近掲示板を見ていなかった。

 何か良い募集があるかもしれない。

 そう思い、掲示板の方へと足を進める。


[Cランクの前衛職募集中! ファナルマ]

[Bランク以上 魔法使い  サコラフまで]


 やっぱり高ランクの冒険者ばかりだ。

 低級の冒険者は、学校の同級生パーティばかりで、ソロの人は余っていない。

 僕みたいな低級のソロ冒険者は珍しい。

 僕だって、学校で友達はいた。

 ただ、みんな冒険者を諦めたり、学校に残ったりで、冒険者になったのは僕だけだった。 

 今日もこつこつ依頼をこなすしかないか。


 ん?なんかギルドの仲がいつもよりざわついている気がする。

 なんでざわついてるんだろう?


「なんだかんだ子供がいるぞ」

「おいおい、ここはガキのくるとこじゃないぜ」

「父親でも探しに来たのか?」


 騒動の中心には、女の子がいた。

 ギルドに子供?何しに来たんだろう?

 なんか受付で話している。

 依頼を頼みに来たのだろうか?

 受付の人と少し話していたら、その子は奥に連れていかれた。

 ちょっと気になりはしたけど、適当に依頼を選んで、僕も受付に向かった。


「あの、この依頼お願いします」

「えー、ロムヘイド・ユークスさんですよね?」

「え?あっ、はい」

「すみません、ちょっと奥の部屋まで来ていただけますか?」

「え?僕何か?」

「あ、大丈夫です!別に問題があったとかじゃ無いんです。この間の猫探しの件で、お礼が言いたいって子がきてて」

「はい」


 猫探しのお礼?報酬は十分もらったはずだけど…

 とりあえず行ってみるか。


·····


 部屋に通されると、さっきの女の子がいた。


「こちらが、あなたの白猫を見つけられた冒険者、ロムヘイドさんです」

「あ、ありがとうございます!」

「あ、どうも」


 突然お礼を言われて、びっくりしてしまった。

 見たところ、裕福そうな服装をしている。

 貴族のだろうか?

 こないだの猫のお礼って、わざわざ直接言いに来るなんてすごい礼儀正しい。

 報酬も十分すぎるくらいに貰ったのに。


「ロムヘイドさんがうちのメナンテを見つけてくれたんですよね?」

「ま、まぁ、ルッシルさんとふたりでですけどね」

「ほんとにありがとうございます!メナンテがいなくなった時は、ほんとにもうどうしたらいいか分かんなくって!ルッシルさんって方も、今日はいらっしゃらないんですか?」

「分かりません。あれから会ってないので」

「そうなのですか…。ルッシルさんにもお礼を言いたいんですけど…、残念ですね」

「はい…」

「それはそうと、今度私を迷宮に連れて行って頂けませんか?」

「は、はぁ…え?何て?」


 猫を見つけただけで、お貴族様の、しかも小さな女の子の護衛に指名された。

 どうしよう、こんな小さい子を、1人で護衛なんて絶対無理だ。

 断ろうと口を開こうとしたその時、部屋の扉が開いた。


「何の用事かだけかはおしえてくれないか?」

「来ていただければ分かりますので」


 受付の職員さんに促されながら入ってきたのは、見覚えのある冒険者だった。


「ロッシルさん!」

「ん?あ、あー、久しぶりだな」

「まあ!この方がロッシルさんですのね!」

「あぁ、そうだが」


 ロッシルさんは、まだ状況があまり分かっていないようだ。

 

「うちのメナンテを助けていただいたと聞きました!ほんとにありがとうございました!」

「メナンテ?何のことだ」

「え?ロムヘイドさんと共に、メナンテを救っていただいたのではないのですか?」

「あー?あー!あの猫のことか」


 やっと状況が飲み込めたようだ。


「それで、今度は私の護衛を依頼したいのです!」

「は?」


 ロッシルさんも、僕と同じでとても驚いた反応をしていた。


「断る」

「え?なんでですか?」

「いや、キミはまだ小さいだろ。迷宮はそんな安価な気持ちで行ける場所じゃない。それに…、俺ほもう他人とは迷宮に潜らない」


 ロッシルさんはすぐさま断った。

 他人とはもう迷宮に潜らないって…、

 やっぱり何かあったんだろうか。


「ちょっと、やめてください!ちょっと!何の用事ですか?」

「メアルル様!メアルルさま〜〜!」


 何やら外が騒がしい。


「あら、セビュスシャンの声だわ」


 どうやら、この女の子の執事?か何かみたいだ。


バン!


「メアルル様!勝手にどこか行かれてはいけません!」

「あら、セビュス、私はただ、猫を探してくださった冒険者の方たちにお礼が言いたかっただけですわ」

「ですが、もう報酬は支払わせて頂いたはずです。それに、旦那様が勝手に外を出歩くなと…」

「ですけど!私は直接お礼を言わないとと思ったのです!だから、来ただけです」

「ですが…。急にいなくなられては心配します」

「それは、ごめんなさい。でも、どうしてもお礼が言いたかったんです」

「そうですか。これからは、このようにどうか爺やめにだけでも相談してください」

「分かりました」


 この女の子は、勝手に家を抜け出してきたみたいだ。

 それだと、使用人の人達はかなり困っただろう。

 それにしても、執事もいるなんて、この子の家はかなり大きいみたいだ。


「皆さま。お嬢様がご迷惑をおかけしました。お詫びと言ってはなんですが、邸宅にご招待させていただいてもよろしいでしょうか?メアルル様もこれでご満足いただけますか?」

「ええ、当然のことをするまでです」

「え?」


 お嬢様の護衛は回避できそうだと思っていたら、今度はそのお家に招待されることになりそうだ。

 隣のルッシルさんをちらっと見ると、すごく嫌そうな顔をしている。


「どうか、お越しください。あの猫を見つけてくださったことに、お嬢様はそれだけ感謝されているのです」

「お願いします」


 お嬢様に、うるうるした目でせびられた。

 「まあ、断る理由もないか。ありがたく招待されよう」


 ロッシルさんは受け入れるみたいだ。

 誰かが行くなら僕も行きやすい。


「僕も、お願いします」


 ありがたく招待されることにした。


「私が迷宮に行こうとしてたことは内緒ですよ!」


 お嬢様に上目遣いでお願いをされた。

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