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ロッシルさん

第3話です。

 依頼の猫も捕まえられたので、僕たちは冒険者ギルドへと戻った。

 帰る途中で、さっきのぶつかりそうになった人達に謝ろうと思ったけど、もう彼らはいなかった。

 そういえば、あんな路地裏で何をしていたんだろう?

 僕らと同じく探し物の依頼でも受けた冒険者だったのかもしれない。

 それなら、冒険者ギルドで会えるかも。

 といってもあまり顔も覚えていないのだけど。

 そういえば、1人は顔に傷があったような気が、

 まあもし会えたら謝っておこう。


「あの、すみません。依頼の猫を連れてきました」

「はい、分かりました。猫探しの依頼ですね。

 依頼内容は…、白猫。首輪と紋章付き……、

 確認できました。こちらで引き取らせていただきますね」

「ああ、頼む」

 にゃあー

「こちら報酬の、500ナヤスです。お疲れ様でした」

「ああ」


 ん?聞き間違いか?500ナヤスって…

 猫探しの依頼で?


「あの、500ナヤスって、ほんとですか?」

「はい、そう書いていますので」

「あ、あー、そうですか」


 どうやらほんとらしい。

 変わった人もいるようだ。

 そういえば、猫の首輪に付いてたプレート、どっかで見たことあったような気がする。

 紋章って言っていたな。紋章ってことは、どっかの貴族のペットってことか。どうりで高いわけだ。


「あー、そのなんだ。いろいろ助かった。これは全部お前にやる」

「え?」

「あー、俺1人じゃ捕まえられてなかったんだ。

 助かった。あー、これもだな。昨日のだ」


 なんか増えた。

 いや、まあ捕まえたのは僕かもしれない。

 でも猫の居場所を見つけたのは彼だ。

 それに、命を助けてもらった。

 第一僕の受けた依頼じゃない。


「受け取れませんよ。僕の依頼じゃないですし」

「うーん、そうか。まあ手伝ってくれたんだ。

 半分は受け取ってくれ」

「ありがとうございます」


 昨日のと合わせて、270ナヤスも貰えた。

 僕の方がちょっと多い気がする。


「あの、僕の方がちょっと多いですよ」

「ああ、それでいい。今回は礼になった」

「いいんですか?こちらこそ色々ありがとうございました」

「ああ、君は器用だな」

「え?」

「いや、あんな魔法の使い方は初めて見た。小出しにして走っているのだろう。タイミングが難しそうだ。大抵はいっぺんで飛ぶやつがほとんどだ。」


 いや、わざとじゃないのだ。

 魔力の使い方が下手で、一度に出せる量が少ないのだ。

 だからあんな使い方になる。

 捕まえようと飛び上がった時も、体を支えれずに直ぐに落ちた。


「威力が弱いだけなんです」

「いや、だが器用だ。まあなんだ、今日はそれで助かった。」


 そう言ってギルドから出ていこうとする。

 コンプレックスでも褒められるのは少し気分がいい。

 ん?そういえば、この人の名前を聞いていない。


「あの!」


 僕は咄嗟に呼び止めていた。


「なんだ?」

「えーっと、僕、ロムヘイドです。ロムヘイド・ユークスって言います。自己紹介まだだったなって思って」

「ああ、そういえばそうか。ロッシル・ララムスフォーツだ」

「あっ、はい。そうだ!パーティ!

 パーティ組みませんか?」


 咄嗟に言葉が出た。そんなつもり無かったのに。

 ちらっとロッシルさんに目をやると、彼も面食らってしまっている。


「あ、あの、迷惑じゃなければと言うか、その…」

「ああ、いや、そのなんだ。俺でいいのか?」


 良いのだろうか?

 そういえば、ロッシルさんのことはまだあまり知らない。

 役職がなんなのかさえ、それどころかそもそも戦闘経験があるのかも分からない。

 一緒に猫を探しただけなのだ。


「……いや。俺とは組まない方がいい。すまない」


 そう言うとロッシルさんは足早に立ち去っていった。

 僕は1人取り残された。


「……今回は好調だったなぁ……」

「……お疲れ様でした。300ナヤスです……」

「……なぁ、最近王都の方が物騒らしいぞ……」

「……俺の腕上がった気がしねえか?……」


 今まで気にならなかった周りの声が妙に聞こえてくる。

 なんとなく誘ってみただけのはずだったのに、断られるとなんかショックだ。

 僕はやっぱりパーティは組めないのか。


「……うわー、その怪我でよく無事だったな……」

「……んー?ノロムのやつ、また1人でつったってるじゃねえか……」

「「わははははは」」


 聞き覚えのある声が近づいてきた。ゲリメルだ。


「おうおうノロム、調子はどうだ?俺たちは5階層まで行ってきたぜ」


 今1番会いたくないやつだ。

 ゲリメル達のパーティは、探索、順調みたいだ。

 それに比べて僕は…。


「ほっといてよ」


 そう言ってその場から逃げ出してしまった。


·····


 1人で家への道を歩きながら考える。

 ロッシルさんには、断られたけど、組めたからといってどうなるんだ。

 細くて頼りなさそうな男だったじゃないか。

 ん?でも………、

 空中から落ちた僕を受け止めてくれた。

 あの細い腕で?

 いや、あの時……、思ったよりごつごつしてた気がする。

 筋力はかなりあるのかもしれない。

 それに、猫を見つけた時だってそうだ。

 僕が気づくより数倍早く、鳴き声に気づいていた。

 あんな距離で猫の鳴き声に気づいたのか?

 よく考えれば不思議なことが多い。

 それに、組まないほうが良いってなんだ?

 何か含みがあった気がする。

 昔組んでたパーティで何か合ったのか?

 そもそもなんで冒険者を続けてるんだ?

 猫探しなんかするんだ、迷宮にも潜ってないのだろう。

 考えれば考えるほど、分からなくなる。

 いや、考えても無駄だ。もう断られたんだ。

 関わることも無いだろう。

 なんて色々考えていたら、家に着いた。


「ただいま!」

「あれ、今日は少し早いわね」


 家に帰ると母さんが出迎えてくれた。


「昨日言ってた猫は見つかったの?」

「うん、」

「それは良かったじゃない。でも何かあったの?

 浮かない顔してるわよ」

「いや、なんでもないよ」


 母さんは心配そうな顔をしている。

 でも、言えない。パーティが組めなかったなんて。

 だいたい母さんは、冒険者をしていることにも反対なんだ。特に迷宮を毛嫌いしている。

 パーティを組もうとしたなんて言えば、怒るに決まっている。

 僕が迷宮に潜らないから許してくれてるようなもんなのだ。

 昨日、迷宮に潜ったことも言ってない。

 母さんに嘘をつくのは心が痛いけど、しょうがない。

 

 母さんが迷宮を毛嫌いするのには、原因がある。

 あれは3年前だ。

 父さんが迷宮で死んだ。

 母さんの目の前で。

 それから、母さんは塞ぎ込んでしまった。

 僕の通う学校も辞めさせようとしたり、この街から引っ越そうとしたり、

 冒険者になりたかった僕は、なんとか母さんを説得して、ここに残ることが出来た。

 これ以上母さんを心配させてはダメだ。

 そんなことは分かってる。

 でも、迷宮には憧れてしまうのだ。


「これ、今日の報酬」

「え?こんなに?どうしたの?」

「猫探しの報酬」

「こんなにたくさん?ほんとに?」

「うん、お貴族様みたい」

「こんなこともあるのね」

「じゃあ、ちょっと走ってくる」

「気をつけてね」


 報酬だけおいて僕は家を出た。

 時間があるので、鍛錬だ。

 まずは走り込み、そして素振り。

 パーティは無理でもソロで頑張ればいい。

 そう考えると、いつもよりも気合いが湧いてきて、鍛錬に力がはいった。

そういえば、主人公の名前今回初です。

ロムヘイド・ユークスです。

ゲリメルにはのろまなノロムって呼ばれています。


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