扉が開かれし夜
街がオレンジ色の光で埋め尽くされる。
街の人達は伝統に従って、お化けの仮装をしている。
今日は私の格好は浮いていないなと考えながら目的地の場所を目指す。
歩いていると突然声をかけられた「ねぇお姉さん、トリックオアトリート」声をした方に振り向くとそこには5歳程度の男の子が居た。
今の私の姿なら大丈夫だよねと思い返事を返す「ごめんね私、今お菓子持ってないの」
この伝統行事に参加する為に此処に来た訳ではない、格好こそ魔女だが、これは私の職業だ。
「そうなんだ…」悲しそうだ顔で言われたのがとても辛かった。「ごめんね、他の子にさっきあげちゃったのよね」私はウソをついた。ウソなんか最近ついてないのに、いや最近はにんげんと喋ってすらいないのだ。
「そっか、じゃあ変わりに僕があげるよ」「え?」予想外の答えに驚いて声が出る。
男の子はかぼちゃの鞄をゴソゴソと漁っていた。
その姿を私は、ぼんやりと見ていることしかできなかった。
しばらくすると男の子は「あった!!」と言って私に何かを差し出した。
「このお菓子はね、お母さんが手作りなの!!美味しいから食べてね」
屈託のない笑顔で言われてた。私には一生向けられないと思った優しい笑顔。「ありがとう」と自然と言葉が零れる。
遠くからは母親らしきひとが走って来て、「すみませんうちの子が何か失礼なことをしませんでしたか?」と言った。最近の人は私の事を知らないのか、それとも気づかないのか、今日はよく話しかけられる。
「いえ、大丈夫ですよ。その子からお菓子を貰ったんです。優しくて素直な気持ち子ですね」自分から話題を振るなんていつもならしないことなのに今日はしてしまう。
「あっ、そうなんですね。じゃあ帰ろうか」「うん!!」
その微笑ましい会話を私は眺めていた。私にもあんな幸せな次官があったらな…
「お姉さんまたね!!」男の子が笑顔で手を振って言っていた。私は何も言わず振り返した。
街の灯りが段々と少なくなってくる、道はやがて盛りのなかに入っていった。誰も近寄らない森の奥。
私はそこに住んでいる。小さな木で作られた家。
家の扉を開けると「よォおかえり、遅かったな」と超えがした。
「えぇ今日は祭りが行われていて、混んでいたのよ」
暗いの中に光る2つの光、その招待は猫である。
猫はゆっくり歩いてこちらに来た。「お前、にんげんの匂いが強く着いてるぜ、何か貰ったのか?」
「そうよ、お菓子を貰ったの。かぼちゃの形をしたペロペロキャンディよ」「きょうはだれもお前を怖がれなかったのか」笑いながら猫は答える。
「今日なんの日か知ってたくせにね、ノックス」「そうかー?」ふざけた態度で答えるノックスに私は、溜息が出る。
「ところでよ。ゼノ晩ごはんは何だ?」「今から作るから楽しみに待ってない」喋る不思議な猫と嫌わ者の魔女の生活は今に始まったわけではない。でも今日は嫌われ者でなかったな。
私は男の子からもらったキャンディを眺めていた。月の光に当たってキラキラと光っていた。
この作品は、ほのぼのストリートと言う感じに投稿するので、相当な話数になると思います。