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友人への聴取

「まったく、息子が御迷惑をおかけして申し訳ありません」

「こちらこそ情報が交錯してご不安にさせました。お詫び申し上げます」

 父親の言葉に長谷部が労りをこめた人好きのする笑みとともに返す。当の久藤帆恭は教室の隅を見つめて動かない。

「緊張しなくていい。いくつか確認したいことがあるだけだ」

 大城が言うと「はい」まだ声変わり間もないのか、低くなりきっていない声による返答だった。

「事件が発覚した後にホテルで聞かせてくれた内容と重複したらすまない。だが、なるべく正確に答えてもらえると助かる」

「わかりました」

「まずは……白河六花さんとはどのような関係だろう?」

「クラスメイトです。五月くらいに話すようになってから、仲良くなりました」

「仲良くなったから、旅行を計画したんだね」

「はい」

「旅行のこと、親御さんには」

「友達とは旅行すると聞いてましたが、異性がいるとは聞いていませんでした」

 帆恭は答えようと口を開いていたが、先に父親が答えた。

「……。言いにくかったか?」

「別に。聞かれませんでしたから」

 直後、反抗的な息子の名前を呼んで諫める。「お父さん、落ち着いてください」長谷部が言うと、父親は居住まいを正して両腕を組んだ。

「どうして旅行先を熱海にしたんだ?」

「みんなで遠出してみたいというのは中間試験くらいから……たぶん五月の半ばくらいから話していました。それで期末試験の最終日、海に行こうと方向性が定まりました。神奈川だと近過ぎて遠出した感じが薄いから、ほかのところを探しました。熱海なら観光地ですし、行ってみたいところも多かったのですんなり決まりました」

「光栄だね。じゃあ、初日から順に聞いていこうか。どこからなら話しやすいだろう?」

「初めからで大丈夫です。終業式の後、横浜駅集合しました。終業式自体は十時前に終わってたんですけど、ホテルのチェックインが十五時以降だったので、集合は十二時半でした。そこから新横浜駅で新幹線に乗り換えました。乗ったのは、これです」

 帆恭はすらすら話しながらスマートフォンを操作し、画面を刑事たちに見せた。メール送受信アプリが表示され、オンラインで新幹線のチケットを購入した履歴が残っていた。望月は、よく確認して手帳の自分の文字と見比べる。新幹線の名前と発着駅、その時刻が一致している――事前に髙橋から、ホテルの男子部屋に新幹線の切符が二枚回収されたと聞かされていた。矛盾は無いらしい。

 帆恭は望月からスマートフォンを回収して机の端に置くと、話を続けた。

「熱海駅ついたの、これ見たら十三時四十二分らしいです。正確には覚えてないですけど、十四時前だったのは覚えてます。新幹線でも飲食は軽くしましたがみんな空腹だったので、駅にスーツケースやリュックサックを預けて昼食にしました」店名と料理名を大城が尋ねると、店名はすぐに答えられたが料理名は「なんとかカツカレー」だと答えた。

「店を出たのが十五時前です。熱海駅に戻って荷物を回収したらチェックインしました。簡単に荷物整理を済ませたらホテルのエントランスで合流しました。そこから、僕と白河さんと園田さんで起雲閣へ行きました」

「あとの三人は?」

「トリックアート迷路館組です。体動かすほうが好きな三人に文化財のんびり見せるより良いと思いましたし、こっちの三人はゆっくりしたいのが集まったので賢明だと思いました。どちらの施設も十七時閉館だったのでそれにあわせてまた合流しました。近くの海鮮丼が有名なお店で夕食とって、歩いたのでホテルについたのは二十時くらいでした。初日で移動があったので、汗流してからすぐ寝ました」

「それが、一日目だね」

「はい。二日目は朝から十四時まで海で遊んでました。レジャーシートやパラソルを返却して、十四時半くらいに海が見えるカフェで遅めの昼食を取りました。名前は覚えてないんですけど、ナポリタン食べました。あとはホテル戻って、プリン買いに行きました」

「熱海プリンだね? ひとりで行った?」

「……。白河さんと行きました」

 捜査陣は努めて父親を気にしないようにした。大城が「正直にありがとう」と告げて先を促す。

「初日のとき、ホテルへ移動しているときにちょうどお店の前を通りました。そのとき白河さんが気にしていたので……買いに行けるタイミング限られていましたし、僕から買いに行こうって約束しました」

「積極的だね」

「普通ですよ、これくらい。仲良くなかったら一緒に旅行しませんから」

「それもそうか。それから?」

「プリンが買えた後は、白河さんがお兄さんにお土産買いたいらしくて、平和通りを少し歩きました。気に入った栞を見つけられたみたいで、それを買ってからホテルに戻りました。鐘の音? チャイム、このあたりでも聞くようなタイプの音楽聞こえてきたので、プリンを買ったのが十七時過ぎ、ホテルに着いたのは三十分後くらいだったと思います。十八時くらいから夕食とって、部屋に戻ってからみんなでプリン食べました。僕らの部屋の冷蔵庫で冷やしていたので、そっちに集まってました。二十時には男女で分かれて、就寝準備進めました。シャワーを順に浴びてからは、しばらく男子三人で話してました。時計は見てませんでしたけど、隣の部屋からスマホのアラーム聞こえたりもしました。二十一時三十二分には園田さんから個人電話が掛かってきたので、髪の毛乾かしてスマホとカードキーだけ持って部屋を出ました」

 ふたたびスマートフォンのスクリーンに通話履歴を映して、刑事らに見せた。何も指摘されなかったため納得してもらえたと判断したらしく話を再開する。

「エレベーターホールで合流してからはずっと園田さんと一緒でした。二十二時くらいまでラウンジで園田さんと話していたんですけどホテルの方に未成年は部屋に戻るようにと言われて部屋に戻ることにしました。もう寝ようかと思ってたんですけど、僕らの部屋に五人集まって話してました。二十三時くらいに、絵を描きに行ったきり戻らない白河さんを探しに非常階段を使って外へでてみたんですけど、そのときには通報があったみたいですね。公園近くに到着したときには、もう……」

 言葉を失った息子に「大丈夫なのか」父親が不器用に尋ねる。

「……何が?」

「何がって……身近な子が死んだんだろう?」

「母さんが死んだときは無関心だったのに。息子が容疑者になったら急に家庭思いな父親面ですか?」

 望月は内頬を噛んでやりすごそうと試み、大城と長谷部は似たような仕草で居住まいを正した。

「嫌なもの見せてすみませんでした。他に答えることってありますか?」

 隣の父親を無視して、帆恭は刑事らに謝罪とともに頭を下げると逆に質問した。

 大城は「いくつか、ね」と答えながら気を取りなおす。

「二十二時に部屋から戻ったときのことだ。五人ということは、その時点でもう六花さんの姿は無かったわけだね?」

「はい」

「二十三時になってから探し始めたそうだけれど、二十二時も結構遅いんじゃあないか?」

「遅いと思います」

「この時点ではまだ探そうとは思わなかったのかな」

「白河さんが絵を描くのが好きなのは知っていましたし、描いているときは邪魔されずひとりで描いていたいと聞いたことがありました。それに園田さんから、七歳のとき外で二十二時過ぎても描いていたら祖母に怒られたというエピソードを教えてもらって。それなら、ライン送っておいて戻ってきたら話すなり寝るなりしようということになったんです」

「探しに行くとき、非常階段を使った理由は?」

「二十二時のときに部屋に戻るよう言われたので、エントランスを通過したら同じようなこと言われて足止めされるかもしれないと思いました。なので、非常階段を使いました」

「ありがとう。最後にもう一つ。二十二時十五分ころ、五人で飲み物を買いに行ったね?」

「はい、エレベーターホールぬけた先に何台か自販機あったので」

「その後のことだ。六花さんを探しに行く前、誰か外に出なかったかい?」

「園田さんです。時間見てないので正確にはわかりませんけど、戻ってくるまで五分か十分くらいだったと思います。戻ってきたときに三回ノックするよう伝えていたので、また内側から開けました」

「忘れものをしたのかな」

「いえ、お手洗いだと言ってました。彼女、ラウンジ行ったときからカバンは持ってましたし、カードキーも持ってたとは思いますけど……」

「なるほど、親切だね。いまのところ、これでこちらからは以上だ。帆恭くんからは何かあるか?」

「……犯人、見つかりますか?」

 大城は「最善を尽くしている」静かに答えた。



***



 父親の到着を警察署で待っている間、帆恭はその青年を見て直感した。

 会う機会はなかったが――白河六花の兄だ――雰囲気でわかった。「あのっ」何も考えず、声をかけた。ぼんやりと体を向けてくれたが、視線は定まっていない。ひとまず、一緒に旅行していたうちのひとりだと名乗った。青年は白河由弦だと名乗り返してくれた。

 帆恭は栞を差し出した。

「これ……六花、さん。お兄さんにあげるって言ってたんで」

「六花が……?」

「二日目、一緒に熱海プリン買ったときに僕の荷物と混ざって渡しそびれて、それでそのままに」

「みんなで買いに行ったの?」

「あ、いえ……」

「プリンはみんなで食べたの?」

「はい、夕食後に部屋に集まったときに」

 それまで曖昧だった視線が栞を捉える。

 すると青年は「ありがとう」初めて目を合わせてくれた。長めの前髪ととんでもなくユニークなフレームの眼鏡でわかりにくかったが、青みがかった瞳は紛れもなく白河六花の兄だと証明してくれた。

 自分のように他の子の荷物に妹さんのものが紛れていたら連絡取れなくなるから。

 これを理由にして連絡先を交換する。

「何かあったら、連絡ください」

 帆恭はしばらく会釈を残して立ち去るその背を眺めていた。


 六花が久藤に持たせたのは、千円札一枚、百円玉二枚だった。

「六人分でしょう? 熱海プリン、ひとつ四百円だって。この服、ポケットなくてさ」

 花柄のワンピース姿で腰辺りを軽く叩いて見せた。片手にはジップロックがある。他のメンバーに悪いから、絵を描いていたと言い訳するために持ってきたという。

「割り勘にしようよ。そうすれば楽しい時間も半分こで納得できるでしょ?」

 買いに来たのは良いものの、想像以上に長蛇の列だった。炎天下の中では大変だからと近くの商店街へ避難しているよう伝えて、帆恭は並び続けた。まもなく戻ってきた六花はジップロックの他、コンビニで買ったアイス二つと、海が描かれた栞を持っていた。

「お兄さん、海好きなんだ?」

「ううん。これは絵が不発だったときのスペア」

「不発って、なにそれ。白河の絵、うまいじゃん」

「ありがとう」


 笑いかたは兄妹でそっくりだった。



***



「心臓、止まるかと思いました」

 望月が真剣につぶやくと、長谷部が軽快な笑い声をあげた。

 知らない土地で初対面の刑事に協力してもらう運びに文句は無かったが、望月は緊張していた。しかし、車両移動の時点で、長谷部の人柄を知ってだいぶリラックスしていた。

「……大袈裟とは言わないんですね」

「実際、かなり耳は痛かったですから」

 何のことか見当がつかない望月は大城を見遣るが、彼もまた気難しい表情をしていた。

 首をかしげながら席を立つと「あの……次の子、呼んできます。佐々木順也くん」居心地の悪さを忘れようと、そそくさと退室した。






 たおやかな女性が「よろしくお願いします」深く頭を下げた。その隣で、真似するように佐々木順也も頭を下げる。

「いえ、ご足労お掛けしました」

「主人の都合が合わず私のみなのですが、問題ございませんでしょうか?」

「もちろん、ありません。未成年者単独の聴取ができませんもんで、ご協力感謝します」

 恐縮を言葉にする彼女に着席を促し、順也も座らせた。

 どこか浮足立っている少年に対して「緊張しなくていい。いくつか確認したいことがあるだけだから」手順どおりに進めていく。

「わかりました!」快活な返事だった。無意識に長谷部は若干笑みを深めた。

「事件が発覚した後にホテルで聞かせてくれた内容と重複したらすまない。だが、なるべく正確に答えてもらえると助かる」

「はい、変なこと言ったらすみません」

「できるだけ正確であれば助かる。まず、白河六花さんとはどのような関係だろう」

「クラス同じで、前後の――僕があの席で、白河六花さんがすぐ後ろの席です。あっ、出席番号順のときだけです」

「よく話していたのかい?」

「はい。うるさくし過ぎて何回か先生に怒られました」

「ほどほどにね。ところで旅行のこと、親御さんには伝えたか?」

「はい、言いました。ホテル泊るのに同意書、書いてもらわなきゃいけなかったので」

「なるほどね。ホテル側に提出したのは確認済みだ」

「ほんとですか! 全員分ですか?」

「ああ。六人とも提出してあるのを確認した」

「へー、すっげーすね!」

「順也……」

「はーい」

「ちなみに、すんなり許してもらえたかい?」

「はい。変なことしないならって」

「変なこと?」

「わかんないです。何って聞いたら、わからないなら良いって言われたんで」

「……」

 思わず捜査陣の視線が女性へと視線が流れる。彼女は小さく謝罪を口にした。

「他に同性が二人いればこの子が何かしても取り押さえてくれると思いまして」

「そうでしたか。ありがとうございます。――熱海に決めた理由は覚えているかい?」

「海ですね! 海の日近かったので! 刑事さん、山派ですか?」

「どちらかといえば、かな」

「ヤマハ、静岡ですもんね!」

「順也っ……すみません。落ち着きが無くて……ジュン、いい加減になさい!」女性の雰囲気が一瞬で極妻に近くなり叱りつけた。順也は「はいっ、ごめんなさい」姿勢を正した。

「よーし、本題に入ろう。終業式から帰って、まずどこへ何を持って行ったのかな?」長谷部が気を取りなおすように軽く手を叩き、尋ねた。

「横浜駅にリュックサック持って行きました」

「時間はわかるか?」大城が問いを重ねた。

「十二時二十五分です。俺が着いたの最後だったんで、そのままプラットホーム移動しました。新幹線乗り換えて、熱海着いたらハンバーグ食いました。おいしかったです!」

「それは良かったな。その後は?」

「ホテルで、部屋に荷物置きました。んで、俺と理仁と古舘で迷路館行ったんです! あれ、めっちゃすごかったです。やばかったです!」

「そしたら?」

「海鮮丼食って、ホテル戻って、風呂入って、寝ました!」

「その日、何か……驚いたことや怖かったことはあったか?」

「いえ、何にも」

「そうか。じゃあ、翌日は?」

「九時半くらいから海水浴してました。オムライス食ったら眠くなってきて、ホテル戻ってから爆睡してました」

「何時まで寝ていたか、わかるかな」

「十七時五十分くらいじゃないかと思います。帆恭と理仁が起こしてくれたんで。寝起きでホテルのレストランで飯食いました。戻ったらプリンあるってんで、めっちゃテンション上がりました! なんか、帆恭が六人分買ってきてくれてたんです! やばかったです、バカ美味かったっす!」

「その後はどうしたんだろう?」

「女子たちが一旦、部屋に戻って。男三人でいろいろ話したりしてました」

「話していただけかな?」

「え? あっ、寝る準備! 大浴場行くのダルかったんで、部屋のシャワー使いました。帆恭と理仁が一番譲ってくれました。あっ、そうだ。あとはもう寝るだけってなったとき、帆恭が部屋出てっちゃいましたね」

「時間はわかるかな?」

「えーっと……二十一時三十二分って言ったと思います!」

「誰が言っていたんだろう?」

「帆恭です。今日、六花の兄さんに呼び出されて色々話したんです、そのときに」

「……何時だ? 今日の」

「十時です。五人ともビビり散らかしてたんですけど、優しかったですよ」

「彼に何を話しだんだ?」

「刑事さんたちが聞いてきてるのとあんま変わんないです。妹は楽しそうだったか、とか。そういった感じで、怒ってないし恨んでないよって」

 刑事たちが纏う雰囲気の変化を感じ取ったのか「あの……マズかったっすか?」肩身を狭くする。

「いや。君は気にする必要は無いよ」

「ですけど」

「そうだ、続きからいいかい?」

「わ、わかりました。あの、俺、あとは部屋で話してて……一回、二十二時過ぎにみんなで飲み物買いに行って、それで……」

「その後は?」

「……二十三時過ぎ、非常階段降りて、それで、あの…………パトランプ、光ってる場所まで行きました。お巡りさん立ってたんで、知らないか聞こうとしました。そしたら、いろいろあって、まあ、結局……六花かもしれないって」

「話してくれてありがとう。こちらから聞きたいことは以上だ。君のほうからは何かあるかい?」

「六花殺したやつ、捕まりますよね?」

「そのために最善を尽くしている」大城は似たような言葉を繰り返した。



***



「もう行っていいよ、いらない。邪魔」

 しばらく走った車内、人通りが消えたところで佐々木順也は冷たく言い放った。隅に縮こまるように座っていた女性が大きく肩を震わせる。

「しかし」

「何? ああ、横領? 黙っといてやるよ。あと貸し九だな――ふははっ、おめでとう! ようやく一桁じゃん! 長かったねぇ、田中ぁ」

「ありがとうございます!」

「さっさと消えろよー。邪魔っつったよなぁ?」

 女性が一目散に逃げだすと、再び車は走り出す。

 しばらくして運転手が口を開いた。

「僭越ながら、あの女はイガラシです」

「で?」

「いえ、失礼いたしました」

「あー、そうだ。田中ぁ」

「はい」

「新しいおもちゃ、探しといた?」

「はい? 見つかったからもう探さなくていいとお話されていたと記憶しておりますが」

「あー。うん、言った言った」

「お気に召されませんでしたか?」

「違う違う」

「でしたら」

「なんか壊れた」

 順也はあくびまじりに答えた。



***



 望月は自分の両頬を強く叩いて「次の子、呼んできます。園田彩結さんです」駆け足で教室を後にした。佐々木順也のおかげで気が緩みそうになったらしい。

「若いっすね、彼女」

「経験が浅いだけですよ」

「同じようなものでしょう」

 長谷部と大城の会話は廊下の先には届かなかった。






「園田彩結と申します。こちらは母です。よろしくお願いいたします」

 母親よりも落ち着き払った少女が頭を下げた。

「こちらこそよろしく。緊張する必要は無いから、いくつか確認させてほしいだけだ」

「はい、善処します」

 しっかりした子だと感心しながら、笑みを返した。

 大城に代わって望月が質問役を担当する。

「いきなり本筋から逸れて悪いのですが……今朝、白河六花さんのお兄さんと落ち合って話をしたそうですね?」

 傍らの母親がそっと彩結の腕にふれた。消え入りそうな声で娘の名を呼ぶ。

「心配なさらないでください。私は答えられますから」

 彩結は労わるように母の手を取り、刑事をまっすぐ見据えた。

「はい、白河さんのお兄さん――ユヅルさんとお話しました。それが、私たちが示せる最大の誠意になると思いました」

「誠意というと?」

「六花さんが亡くなったのは、まぎれもなく私たちとの旅行中のことでした。どのような原因であれ、私たちの責任は免れません。もっと早く動き出すべきだったと悔やんでも悔やみきれません」

「どのような話をしましたか?」

「旅行の様子についてです」

「詳細は」

「本題へ移ろうか」大城が我慢しきれず遮った。望月が肩を跳ねさせた。

「彼に話した内容を我々にも教えてくれれば良い。さて、白河六花さんとはどのような関係だろう」

「友人です」

「仲が良かった?」

「……六花さんは明るくて素直だったので、誰とでも親しかったと思います。私は彼女の後ろの席だったので幸運に恵まれただけです」

「幸運か」

「おおげさな表現ではありません。心から幸運だと思っています」

「旅行のこと親御さんには伝えてあったのかい?」

「はい。男の子がいることも話して、説得しました。ホテル側に提出する親権者同意書を書いてもらわないと宿泊できませんでしたし、先に話しておいたほうが良いと思いました。熱海旅行、どうしても行きたかったので」

「何か思い入れがあるのかい?」

「いえ、そういった大層なものでは……高校生になったら、夏休みに友達と旅行したりお祭りに行ったりするのだと漠然と考えていて……ありきたりですけど、青春できると良いな、と。そう思ってました」

「そうだったんだね。じゃあ、さっそく初日から順に教えてくれるかな?」

「えっと、どこからですか? 熱海着いてからですか?」

「話しやすいところからで構わない」

「それなら……そうですね、終業式後からにします。白河さんのお兄さんに話した内容も、このあたりを含んでいたので。新横浜駅発の新幹線の時間に合わせて横浜駅に集合しました。六人とも定期が横浜駅を経由していたので……」

 彩結は一度言葉を区切ると「あの、お兄さんにはここまで詳しく言ってないんですけど、どれくらい詳しいほうが良いですか?」不安そうに質問した。

「お兄さんが知っていることを不足なく知りたいのが大前提だ。余分な情報があるのは構わない。可能なかぎり正確かつ丁寧にお願いしたい」

 少女は「わかりました」神妙にうなづき、言葉を続けた。

「新幹線で熱海駅に着いたのは十三時四十五分くらいだと思います。少し遅めの昼食をとってチェックインしました。荷物が多かったので、その前後で駅のコインロッカーに荷物を預けました。それで、あの、このとき白河さんは貴重品持ち運びようの鞄を持っていなかったので、会計用にと二千円をうけとり、チェックインしてからおつり分を彼女に返しました」店名と料理名を尋ねると、どちらもすんなり答えた。

「提案したの、私だったので」

「そうだったんだ。それで、チェックインしておつりを返した後は?」

「疲れて帰った後にやることが少なくて済むように、スーツケースから着替えやスキンケア用品を出しておきました。鞄に貴重品がちゃんとそろっているのを確認して、エントランスへ行きました。ほとんど待たずに男の子たちも来たので二手に分かれて出かけました。私は、白河さんと久藤くんと一緒に、路線バスに乗って起雲閣へ行きました。白河さんが行きたいといっていたところで、終始楽しそうにしていたと印象をお兄さんに伝えました」

 彩結は曖昧に目を細め、閉じた。軽く息をつくと再び目を開けて大城を見つめながら話す。

「十七時の閉館まで楽しみ、迷路館へ行っていた三人と合流して夕食を食べました。バスに乗って戻ることも考えましたが、古舘さんが満腹だから乗り物あまり乗りたくないと早めに言ってくれたので歩いてホテルに戻りました。二十時ころに部屋に到着し、そこから大浴場へ行きました。少し疲れてましたけど、せっかくなら旅行しているって感覚が欲しかったので。白河さんと古舘さんと私の三人で行って、飲みものを買ってから部屋に戻りました」

「何を買ったか、覚えているか?」

「缶コーヒーです。白河さんと園田さんはテトラパックの飲み物だったと思います」

「起きているつもりだったのか?」

「いえ、明日用に。ホテルサービスで冷蔵庫に入っていたお水は三人で飲み切っていたので、朝から慌ただしくするより買っておいたほうがいいと思いました。私、お恥ずかしながら朝に弱いもので……」

「なるほど、懸命だ。その後、初日は何かあったかい?」

「それは、まあ、はい。次の日が朝から海の予定だったので早めに休もうとは話しましたけれど、夜の楽しみも欠かせないじゃないですか。私のスマホのアラームが鳴るまででしたけど、楽しかったです」

「アラームというのは? 時間制限を掛けていたのかな」

「普段は二十二時には電気を消してベッド入るので、目安として二十一時二十五分に毎日掛けてます」

「旅行中もずっと掛けていた?」

「初日に設定切ってないことに気がついた、というほうが正確です。結局そのままにしました。音量あまり大きくありませんし、スヌーズにしなければ一回止めれば済みますから」

「それもそうだね」

「これが一日目です」

 一度言葉を切ると「二日目は」静かに続ける。

「九時三十分にホテルを出発して、海へ行きました。親水公園ムーンテラスで海を背景に何枚か写真を撮ってから、サンビーチへ……シートやパラソルを借りて、適宜軽食や飲み物を近くで買ってきて、そのまま十四時過ぎまで遊んでいました。そこから片付けをして、近くのカフェに行きました。店員さんが勧めてくれたナポリタンを食べました。白河さん、そういうとき物怖じせずはじめましての人とも話せて……彼女が聞いてくれたんです」 彩結は目を細めた。

 担任教師いわく誰にでも明るく平等に接する――白河六花への評価は、あながち表層というわけではないのだろうか……ふと思考に浮かんだが、大城は軽く膝を進めて少女の言葉に耳を傾けた。

「そのあとは、ホテルに戻って自由時間でした。私と古舘さんはすぐに寝てしまったんですけど、このとき白河さんは外に絵を描きに行ってたみたいです。ジップロックに小さめの皮革カバーのノートを入れていて、それだけ持って行ったみたいです。何を描いたかきいたら、彼氏さんに見せてからって言われました」

「彼氏?」

「あっ、恋人のことです」

「それはわかる。白河六花さんには恋人がいたのか?」

「そう、だと思います。クラスとか学校内ではなくて、校外だと思います。だから、あまり積極的には……そもそも白河さんが自身のことで自慢したり尊大な対応をしたりすることが無いので、自然と隠しているようになってしまっていただけだとは思いますけど」

「実際に姿を見たり紹介してもらったわけでは無いのかな」

「はい。お兄ちゃんのことって誤魔化されることもあったので、あまり聞かないようにしてました」

「彼女のお兄さんとは今朝」

「初対面でした。どことなく妹さんに似ていると感じました。ただ、お兄さんの名前はユヅルさんだと伺いました。白河さんが彼氏さんに使っていた愛称にとはまったく違いました」

「彼氏について、お兄さんには聞いたかい?」

「いえ、無理です。聞いてません」

「そうか」

「恋人の他にも、その……周りが白河さんを放っておかないことは、何度かありました。強く言い争ってる姿は何度か見たことあります」

「相手は知っている生徒さん?」

「……言わないといけませんか?」

「いや。構わない。そうだなぁ、絵を描いてきたと言っていたんだね、戻ってきた六花さんは」

「あ、はい。そうです。十七時四十分前だったと思います。夕食行こうって約束が十八時だったので古舘さんを起こして、用意を整えてからホテルのレストランへ向かいました。食事を済ませてから男の子たちの部屋に集まって、熱海プリンを食べました。自由時間のとき、久藤くんがみんなの分を買ってきてくれたそうです」

 わずかに望月の表情が引きつったところを目敏く大城が捉え、軽く足を蹴って注意を促した。望月は不自然なほど背筋を伸ばした。幸い、彩結は記憶をたどるように空中を眺めたまま話を続ける。

「そのあと、少し明日のことを話していたのですが、明らかに古舘さんの眠気が限界でした。私たちも疲労感はありましたから部屋に引き上げました。これが二十時ころです。時計は見ていませんでしたが……寝る子は育つよって、堀本くんが古舘さんを揶揄って。古舘さんは二十時じゃん、小学生だよこんなの……なんて、そういうやり取りをしていたので覚えています」

「部屋に引き上げた後は何をしていたのかな」

 彩結は大城を見つめながら答えた。

「まずは古舘さんの対応ですね。ひとまずシャワーを最初に浴びてきてもらいました。そのまま寝ようとしてしまったので、私が彼女の髪を乾かしていました。せっかくの旅行で体調不良になるのは可哀そうだと思ったので。最後に、私がシャワーを使いました。ホテルで待機しているときにお話したとおり、二十時四十分くらいだと思います。十五分くらいで済ませたつもりなのですが、このときには白河さんはもう室内にいませんでした。彼女がぜんぶ荷物持って出ていたというのは、古舘さんが寝てたのでメインの照明とベッドのところの常夜灯は消していたので暗くて気がつきませんでした。リュックサックひとつに納まるくらいの荷物で少なかったから……すみません、言い訳です」

「いや。君も疲れていただろう? 気を使えと言うには無理がある」

「……。疲れてはいましたけど、私、古舘さんほどではなかったので」

「そうらしいね。シャワー後、君は外出している」

「はい。落ち着かなくて部屋の隅で足踏みしていたのですが、やはり、ちゃんと話さないといけないといいましょうか、話しておきたいと思って部屋の外へ出ました。出たのですが、スマートフォン持ってないことに気がついてカードをルームキーに翳した直後に古舘さんもドアを内側から開けてびっくりしました。飲み物買ってくると言っていましたが、手にはスマートフォンしか持ってなかったので指摘したら、空調とか電気とか使うための扉付近のポケットから抜き取ったので、それを見送りました」

「ポケットからカードを抜き取ったのは君ではないんだね?」

「私一枚持っていたので。カードキー、二枚も持ち歩く意味ありませんよ……?」

「その後はどうしたんだろう?」軽く笑みを見せて先を促した。

「暗くてもスマホ置いたところは覚えていたので、手探りで見つけてまた部屋の外でました。そのとき、久藤くんに電話かけながらエレベーターホールに歩いて行きました。ちゃんと話したくて……五階に宿泊者が自由に使っていい場所がありましたので、そこで話しました。二十二時にホテルの従業員の方から未成年者は部屋に戻るようお叱りを受けたので、ふたりで戻りました。古舘さんはやっぱり眠かったみたいで。カードをどこかにやってしまったらしくて部屋に入れなくなったということを私に直接連絡してくれていたみたいなのですが、気づかなくて……。堀本くんたちが彼女を引きとる形で部屋にいれてあげてました。三日目は来宮神社に行ってもう帰る予定でしたから、少しくらい夜更かししても良いかと思いました。五人で自販機に飲み物を買いに行きながら六花さんが戻ってきたときに気づけるようグループチャットのほうにもメッセージ送って、部屋で話しながら待ってました」

「何を買ったか、覚えているか?」

「缶コーヒーです。昨日の夜に買ったのと同じです。このときはすぐに飲むためでした」

「ちなみに、ほかに誰が触ったのか、わかるかい?」

「缶コーヒーですか? あの日は……白河さんが開けてくれました。お恥ずかしながらプルトップを開けるの苦手なので普段から回して蓋を開けるタイプにしているのですが寝起きだったからか、なかなか開けられなかったんです。それを見かねたのか、彼女が、かして、と言って開けてくれました。」

「ありがとう。ちなみに古舘さんのルームキーはどうなったんだろう?」

「ポケットに入れていたみたいで。ベッドの上に、彼女が座ってた近くにありました。カードに番号が振ってあったので、それで男の子たちの部屋のものではないとわかりました」

「なるほど。ホテルに待機してもらっているときふたりとも部屋のカードを持っていたから、探す時間が無いように思ってね。さて……その後のことを話せるか?」

「……。二十三時が過ぎていて、さすがに遅すぎるということで探しに行くことになりました。知らない土地で迷子になってしまっただけなら、連絡が無いのは変ですし……すぐに非常階段で一階まで降りました」

「非常階段よりもエレベーターを使うほうが楽だし早いのではないかな」

「それは、そうだと思いますけど……二十二時の時点で私と久藤くんがホテルの方に注意をうけていたものですから、二十三時過ぎていたら、外へ探しに行くのを止められてしまいかねないと思いました。十五、六歳なので、どうしてもまだ子どもに見えてしまうのは避けられないことですが、怒られるとしても、白河さんを見つけてからじゃないと……。結局、ちゃんと見つけてあげられませんでしたが」

 彩結は力なく俯いた。

「話してくれてありがとう。こちらから確認したいことは以上だ。反対に、こちらに伝えておきたいことはあるかい?」

「伝えておきたいこと、ですか?」

「言っておきたいことでも、何でも構わない」

「……白河さんはなぜ殺されてしまったか、わかりますか?」

「それを解明するため、善処している」大城は言葉を選んで答えた。



***



「白河さん、絵を描くの上手ですよね」

「ほんと? ありがとう、嬉しいな。園田さんに褒められちゃった♡」

 ルーズリーフの落書きを見せながら六花は紙面の端に新しいイラストを描いていた。休み時間が始まってたった数分だけではこれほど描ききれないだろう。

 彩結はペン先を動かし続ける六花の緩やかな笑みを見つめていた。

「部活は入らないんですか? イラスト研究会や美術部に入ったらきっとたくさん褒められますよ」

「んー、褒められたくて描いているわけじゃあないんだよね。なんだっけ、横向きに側転していたら上手になったよ、みたいな。そういうやつだと思う。あっ、褒めてもらえるのはとっても嬉しい! けれどね、うーん、なんだろうなぁ……ごめんね、何て言ったら伝わるかわかんない」

「ゆっくりで構いません。私、知りたいです、白河さんのこと」

「そう? じゃあがんばっちゃおうかなー」

 六花は、はにかみを見せる。彩結も嬉しくなり「はい、是非」笑みを浮かべた。

「絵を描くのは、文字よりも伝えられるから。そういう感覚がある。ほら、おひさまかいて。って言われたときを考えてみて。ひらがなでも、カタカナでも、漢字でも、もちろんほかの国の言葉でも書ける。けれど、その言葉を知らないと……共通認識が知識として持ってないとわからない」

 寂しそうな笑みを改めて、彩結の瞳をまっすぐ見つめる。

「絵なら、わかりそうじゃない?」

「共通認識が必要なのは、絵も同じでは?」

「……ほんとだ。論理破綻しちゃった」

 二人とも朗らかに笑う。

「もう少し考えてみて、わかりそうだったら言ってみるね!」

 六花は彩結にそう伝えた。



***



「なんだか混乱しそうです。一気に情報量増えたような……」

「泣きごと言うな」

「はい……!」

「それから」

「はいっ」

「うだうだやろうとするな。相手の集中力を考えろ。いくらしっかりしているように見えても子どもだ。ストレスが多いと体調やその後に影響する」

「はい、すみませんでした!」

 望月は「古舘実幸さん、呼んできます!」勢いよく教室を飛び出した。

 空いたままの扉を眺めていると、長谷部からの視線を感じて「何です?」端的に問う。

「いやあ、父親の背が大きく見えるなぁと」

「茶化さんでください」






「本日はどうぞよろしくお願いいたします」美人だが、咽そうなほど強く香りを纏う女性が、どこか突き放すような口調で告げた。

「よろしくお願いします。お掛けになってください」

 望月は怯えているのを隠しつつ、長い髪をハーフアップにまとめる少女に視線を向けて「緊張する必要はありません。捜査上の手順で、いくつか確認させてほしいだけです」と伝えた。

「はい」

「いきなり本筋から逸れて悪いのですが……今朝、白河六花さんのお兄さんと落ち合って話をしたそうですね?」

「っ……」

「なんですって?」

 実幸は小さく肩を震わせただけだが、母親が強く反応した。

「どういうことかしら。そういえば、今日はずいぶん早く家を出ましたね?」

「……良いか悪いか、わからな」

「悪いに決まっているでしょう? もう嫌だ恥ずかしい、警察の方のご迷惑になっているじゃないの。高校生なんですからもう大人として考えなさい」

「ですが」

「言い訳はおよしなさい」

「……」

「実幸さん」うつむいてしまった少女に、優しく呼びかけた。「私たちは知りたいだけです。あなたの言葉で教えてください」

 すると実幸は口を真一文字に引き結ぶ。望月はただ辛抱強く微笑む。

「断れると思いますか?」

「何をですか?」

「一緒に旅行してた女の子が死んじゃって……そのお兄さんが、私たちに話を聞きたいって言ってきたんですよ……? 何言われるかわからなくても、行くしかないじゃないですか」

「実幸」

「お母様は黙っててください! あの日、迎えにも来てくださらなかった! 今日も、いつものように私の付き添いなんてマツナガに任せればよかったじゃない!」

「何を言っているの、あなたを思って時間を作ったのに」

「刑事さん!」

 実幸は母親に向けていた鋭い視線を捜査陣に投げる。

「ホテルに提出した同意書、私だけ親権者欄の名字と違うの見ましたよね? まだでしたら確認してください。この人、どうせ私のことちゃんと見てないんですから!」

 そこまで言い切り、肩で息をする。気圧されたが、望月は居住まいを正して向き直った。

「……まだ落ち着いて話せますか? それとも、後日にしましょうか?」

「すみません。話せます」

「こちらこそすみません、話すの怖かったですよね。勇気出してくれてありがとうございます」

「いえ……はい」

「では、質問していくので、たくさん教えてください! まずは、白河六花さんとはどのような――お母様、手順です。実幸さんを疑っているわけでは無くて、もれなく五人に聞いています」

「今からでもマツナガに連絡しましょうか?」

 娘のその一言が効いたらしく、ようやく母親は付き添いとしての役割を全うしてくれることになった。

 実幸はあらためて望月を見つめると、

「白河さんは同じクラスの友達です。四月に体育の時間に話しかけてくれて、仲良くなりました」

「部活などが同じわけでは」

「違います。そもそも六花さん、どこにも所属してません。放課後、教室でノートやホワイトボードに絵を描いていましたけど、どこにも入るつもりは無かったみたいです」

「何か事情が?」

「わかりません。ただ自由が好きな感じはしたので、そういうことかもしれません」

「そういうこと、ですか?」

「部活に入ったら、大会とかあるじゃないですか。イラスト関係の部活動いくつかありますけど、文化祭のとき必ず合作本作っているので、そういう縛られるのが嫌だったのかなって、ことです」

「なるほど、ありがとうございます。そういうことですか。あ……の、旅行について親御さんはぁ」

「さっきのとおりです。男女一緒でもどうだっていいんですよ」

「実幸」

「違うの?」

「……あとで話しましょう。早くなさい」

 急に照準を向けられ、蛇に睨まれたように望月が肩を跳ねさせる。

「はいっ、あの、なぜ熱海に?」

「海行こうというのは前から話していたんですけど、海水浴するなら距離的にもちょうどいいのかと思いました」

「でしたら、次は、初日からどうだったのか教えてください」

「こだま……? 新幹線なんですけど、それに乗って数駅でした。ホテルにチェックインするには早かったので荷物はコインロッカーに預けて、遅めのお昼ごはん食べました」

 大城が料理名を尋ねると、実幸は小柄な体躯をさらに縮こまらせて

「すみません、私名前とか覚えるの苦手で……オムライス食べたのは覚えてます。理仁と久藤くんがカツカレー、佐々木くんがハンバーグ、女子はみんなオムライスでした」

「よく覚えていますね」

「ぜんぶおいしそうだったので。私が一番食べ終わるの遅かったんですけど、みんなのんびり待っててくれて。ホテル到着したときにはもうチェックインできました。あっ、駅に荷物取りに行ってから、ホテル行きました」

「それぞれ荷物の量は違ったんですか?」

「そうですね。佐々木くんと六花さんがリュックサックだけで、理仁と久藤くんはリュックサックとボディバッグ、私と園田さんは小さめのスーツケースと貴重品持ち運べる肩掛けバッグでした」

「そうなんですね。では、部屋についた後は?」

「六花さんと園田さんがすぐ用意終わらせてて、もういいやと思ってカバン整理しないまま、スマホと財布とメイクポーチを持ったのだけ確認して、一緒に部屋を出ました。エントランスでちょっと待ってたら男子も降りてきたのでそれぞれ分かれました。私は理仁と佐々木くんと一緒に路線バスで迷路館へ行きました」

「六花さんと園田さんは起雲閣へ行かれてます。女の子ひとりで大丈夫でしたか?」

「それは、はい、理仁も佐々木くんもいたので楽しかったです。そもそも、どこ行きたいか話しあってるときに六花さんが起雲閣を推してたので、もうひとつのほう選んだら迷路館だったんです」

「どうしてわざわざ違うほうを選んだのですか? 人数が偏ってしまったとかではなく……」

「あれ? 誰も話してなかったんですか?」

「実幸さんから聞かせてほしいです」

 わずかに視線を彷徨わせたが、やがて机の端を見つめる。

「三角関係――とまではいかなかったらしいんですけど、私の彼氏が、何でしょう、不誠実? みたいな。六花さんにしたかもって聞いて。それで、私と六花さんの仲が変になっちゃったんです」

「……それは、白河六花さんのお兄さんにも」

「一応伝えました、かなりぼかしましたものを。お兄さんは恋路のワビサビって表現してくれましたけど、本当に残念ながらそんな綺麗な感情を発露したわけではありません。ぐちゃぐちゃで曖昧な、変な色をした気持ち悪いものです。あの子にも恋人いるんだからありえないのに」

 自嘲するようなまなざしを望月に向けながら、実幸は言葉を続けた。

「ホテルで待機してるときに園田さんや佐々木くんが刑事さんたちに渡してた写真見てもらえばわかると思うんですけど……かわいいんですよ、六花さん。かわいくて頭も良くて明るくて。積極的に前へ出るタイプでは無くても注目を集めやすかったと思います。隣から見ていたので、よくわかります」

 視線を落とすと

「コンプレックス刺激され続けると、だんだん心が重たくなるんです。当初は話しかけて嬉しかったり笑顔かわいいなって思ったり、それくらいの感情が少しずつ少しずつ汚れていくんです。そういうことじゃないって心のどこかではちゃんとわかってて――わかってても、実際に違うのだとしても、溢れたら人に見えるようになっちゃ、て……」

 ハンカチで両目を押さえながら細く息をついた。

「すみません。えっと……そう、ですね。私が、六花さんを突き放すようなことをしちゃったんです。それを不憫に思った周りの子が旅行を計画してくれました。あれです、その……仲直り大作戦です!」

 明るい声で取り繕うと、顔を上げた。

「佐々木くんがお手洗い行ってる間に、学校でのこと、理仁から話題にして謝ってきました。園田さんからもいろいろ聞いていたんですけれど、ああ、やっぱりなって思って。もう二度とやらないって約束してもらって許しました」

「予想はしていたの?」

「二択で起雲閣を選んでいたら愛想尽きましたけど、違ったので。おかげで私も六花に謝る覚悟できたので正直、有り難かったです。閉館と一緒に出て、久藤くんが調べてくれてたお店でご飯食べてホテル戻りました。そのあと、せっかくだから大浴場行こうってなって、そこで六花さんに謝りました。裸のつきあいっていうじゃないですか。一番素直になれると思ったんです」

「仲直りはどうなったの?」

「無事にできました。六花も、帰り道に理仁から謝られてたらしくて。次あいつが何かしたら一緒に埋めようって……すみません。えっと、お風呂終わって、自販機でジュース買って、部屋に戻りました。それで」

「あっ」

「はい?」

「遮ってごめんなさい、自販機で何買ったか、覚えてますか?」

「えっと……イチゴミルクです、六花さんはそれの黄緑のやつ、園田さんは缶コーヒーでした」

「ごめんね、ありがとうございます。続き、聞きます」

「はい。ベッドが二つしかなかったので、私と六花でひとつのベッド使いました。六花さんが明かり点けたままが良いって言ったので、普段は電気消して寝るんですけど点けたままにしてました。謝れたことでスッキリしてて、いつもよりずっと早くに寝たおかげで海水浴はずっと楽しかったです」

「それは良かった。その後のことは覚えてるかな」

「晴れててとても海がきれいだったので、近くのカフェでご飯食べました。お店の人におすすめをきいて、みんなナポリタン食べました。それからホテル行って、十八時にレストラン前って約束して部屋に戻りました。はしゃぎすぎちゃって、六花さんと園田さんに起こされるまで寝てました。軽くメイクできる時間を考えて起こしてくれたんですけど、もう寝ぼけてて、下地とパウダーだけで部屋を出ました」

「何を食べたか、覚えてる?」

「ビュッフェスタイルだったのでみんないろいろたくさんとってました。男子は何回かおかわり行ってたのであまりわかんないです。基本的に二、三色で彩りは三人とも考えてなさそうでした。そう、お昼が遅めだったので、私たちあまりお腹空いてなかったんです。だから、私はあまり食べなかったんです。園田さんは和食っぽい感じでお米とかお味噌汁とかお刺身を選んでて、六花さんは黄色っぽいスープとバターロールかな? パン食べてました。あっ、お寿司あるよって勧めたらいくつか選んでました」

「実幸さんは?」

「あまりみないで選んだんですけど、たぶんゼリーです。あと、アイスとオレンジジュース」

「眠かった?」

「かなり」

「じゃあ、その後のことって、どうだろう……?」

「プリンおいしかったのは覚えてるんですけど、ほんとに眠くて。みんな私に合わせてくれたみたいで、部屋に戻りました。メイクと汗流して、そのまま寝ようとしてたところふたりが髪の毛乾かしてくれたらしいです。ユヅルさんに聞かれたとき、園田さんが教えてくれました。ああ、そうです。寝ていたら園田さんのスマホのアラームが鳴って、目が覚めました。喉乾いてたんですけど、冷蔵庫の中は空っぽだったので飲み物買いに行こうとしました。ちょうど扉開けたら園田さんがいて、あまり覚えてないんですけどカードキー受け取ったみたいです」

「どこにあったんだ、カードキーは?」

「どこっていうのは?」

「園田さんのカードキーか、空調とかのソケットにあったカードキーか」

「すみません、わからないです。園田さんから受け取ったらしいんですけど、そこまで注意して見てなかったので……それに、受け取ったのにどこにしまったかわからなくなってしまって……園田さんの反応しばらくなくて六人のグループのほうに締め出されたって送ったら理仁たちが何してんのって言いながらも部屋入れてくれました。ゲーム持ってきてて、遊んでいるうちに眠くなくなりました。あっ、そうですよね、二十二時。未成年だから戻るよう言われたんだって、園田さんと久藤くんが部屋に来て、そのまま六花が戻ってくるの待っていたら二十三時をすぎちゃったので、探しに行きました。でも……」

「仲直り出来たばかりだったのに、辛かったですよね」

「……はい」

「こちらから聞きたいことは聞けたんだけど、実幸さんからは何かありますか?」

「捜査、進んでますか?」

「えっと」

「止まってはいない。最善を尽くしている」

 言い淀んだ望月に代わり、大城が断言した。

「犯人必ず見つけてください! 絶対許さない!」



***



「私は六花の引き立て役じゃない!」

「古舘さん……?」

 掴まれた手を振りほどいて、叫ぶように拒絶した。それを後悔させられるほど、見ていられないほど悲痛な顔。乱れた感情に任せて振り上げてしまった拳。

 実幸は、下ろせなくなってしまった怒りの逃げ場を見つけられず、その場から逃げ出すしかなかった。

 少なくとも、六花にすべてをぶつけるという選択肢は霧散した。

 覚悟が決まってからは、もう怖くなかった。できると信じた。

「酷いこと言ってごめん。六花がそう思ってないこと、ちゃんとわかってる。本当にごめんなさい」

 何も隠さない。それが正解の関わりかたになるそう信じて、頭を下げた。すると、六花は実幸を抱きしめてくれた。抱きしめ返しながら、彼女の温かさに涙が出てきた。

 大浴場の湯船につかりながら尋ねる。

「なんで私なの?」

 他にも親子ずれを含む女性たちが多くいたけれど、勇気を出して尋ねた。

「なんでって? 何が?」

「話しかけてくれたの、六花だったでしょ?」

「同じ幸せだって、そう思ったから!」

「……六花はすごいね」

「ついに気づいちゃったか、秘められた邪眼の」

「違うよ。簡単に笑顔にさせてくれる」

「一緒にいてくれるからだよ。ひとりじゃないって教えてくれるから」



***



「あ、の……大城さん」

「おう。次で最後だ」

「……。はい、呼んできます」

 さっきとはうって変わって望月は肩を落として退室した。長谷部が小さくため息をついた。

「こういうとき、自分はちゃんと気をつけます」

「何をだ?」






「伯父の江角です。妹夫妻は海外で活動しているのですぐに戻ってくるのが難しく、代わりに同席させていただきます」

軽く背を押されて「よろしくおねがいします」堀本理仁は伯父とともに頭を下げた。

「おかか」

「お掛けください」

 長谷部のフォローに謝意を示して、両手で首筋を冷やし終えた望月は、ひとつ咳払いをした。

「緊張する必要はありません。捜査上の手順で、いくつか確認させてほしいんです」

「はい」

「いきなり本筋から逸れて悪いのですが……今朝、白河六花さんのお兄さんと落ち合って話をしたそうですね?」

「あ、はい。何か、法に触れますか?」

「いえ。ただ、何を話されたのか確認が必要です」

「そうなんすね」

「そうなんです。どのようなことを話しましたか?」

「あんまり話してないです。旅行どうだったのかってのがメインだったんですけど、久藤くんたちが主に説明してくれたんで、話さないといけないところほとんどありませんでした」

「堀本くんは、何を話しましたか」

「いや……大したことじゃないです、あまり覚えてないので」

「わかりました。続いて、白河六花さんとはどのような関係ですか?」

「関係っていうのは?」

「そのままの意味です」

「クラスメイトですよ、普通に」

「旅行をするのは普通ですか」

「言葉の綾です。ややこしいこと言って失礼しました。仲のいい普通のクラスメイトです」

「こちらこそ揚げ足をとるような問いでした。すみません。質問を続けても良いですか?」

 長谷部が穏やかに仲介する。望月は大城に睨まれていることには気づいていたが、あえて胸を張って怯えているようには見せなかった。

「……はい」

 理仁が肩をすくめるようにうなずいたことで聴取は再開された。

「旅行のこと、親御さんに伝えましたか?」

「親権者同意書のことですか? 海外いるので、データ送って返信してもらいました」

「女の子も一緒でしたよね」

「そういうの気にしてたら一人息子残して海外いきませんって」

「……。熱海旅行にした理由はありますか?」

「旅行したいって話は、結構前からありました。佐々木くんが、海の日近いからって海行こうって言いだしたことで形になった感じです。あまり遠すぎたら移動大変過ぎるじゃないですか。車出せるわけじゃないんで。いや、まあ身近な大人に頼めば可能だったとは思いますけど、友達だけのほうが絶対楽しいものだと思うんで。関東圏でいくつか候補あがったんですけど、せっかくなら少し離れているけど行ける範囲ってことで熱海に決まりました」

「旅程と、実際にどうだったか教えてください。どこからが話しやすいですか?」

「重要なのって、二日目ですよね?」

「本題からですか」

「だって、もう他の四人から聞いてますよね? それなら必要なとこだけで良いと思うんですけど。新幹線乗った話からしたほうがいいならしますけど。どうしたほうがいいですか?」

 望月は、視線を送る。大城は軽くうなづいた。

「では、二日目の話をお願いします」

「九時半にホテルから海行きました。十四時くらいに片付けして引き上げて、カフェで飯食ってホテル戻ったら寝ました。十七時半くらいに目が覚めて、その二十分後くらいですかね。レストラン行くために三人で部屋出ました」

「ルームキーは?」

 堀本は一瞬だけ宙に答えを探すように虚空を眺めた。

「持ってってないです。久藤くんが持ってたので。佐々木くんと俺のは基本的にずっとサイドテーブルの上か部屋入ってすぐの、あれの名前わからないんですけど、あそこに入れてたかのどちらかでした。ホテルで別行動するとしても、基本部屋いたので持ち歩く必要なかったです。話戻していいっすか?」

「はい。レストランへ向かった後は?」

「飯食って、部屋戻ったらプリン食べました。久藤くんが昼間に買ってくれてたやつです。女子たちが二十時に一度引き上げていったので、その後は寝る準備進めながらしゃべったり遊んだりしてました。時間見てなかったので正確なのわかりませんけど、二十一時半くらいに部屋出ていきました。佐々木くんと俺で、続きしてたら園田さんがグループチャットでヘルプ求めてきたので扉開けてみるとほんとにジュースのペットボトル持って女子の部屋の扉の前いたのでこっちの部屋入れました。一応。もう一回ほんとにカード持ってないか探してもらったんですけどね」

「ありませんでしたか?」

「そのときは見つかりませんでした。でも、あとでちゃんと出てきたので、探したりなかったんじゃないですかね」

 軽く頭をかいた。

「えっと、まあ、しばらくしたら五人集まって白河さん戻るの待ってました。けど、二十三時過ぎて返信もリアクションもなかったので、非常階段使って外探しました。近くを少し歩いてみて探していたら、騒がくなってるところがあって、すぐ近くにパトカーも止まっていたので、そっち行きました……旅行中は、こんな感じです。なんか他、ありますか?」

「白河さんが校内でトラブルを抱えているか、聞いたことはありますか?」

「校内はちょっとわからないです。駅前で男と言い争ってるのは見たことあります」

「いつのこと?」

「たぶん、五月下旬くらいです」

「相手の男性の特徴は覚えてる?」

「遠目だったので……若かったのはわかりました」

 理仁は曖昧に被りを振った。



***



「白河っ」

 理仁は走り去ろうとする少女の手を掴んだ。

「本気だよ、俺は。本気で白河のこと好きだ」

「バカなの? 古舘さんは」

「心許せるのは白河だけだよ。隣にいてほしいのは」

「私の気を引くためだけだとしても……上辺の言葉だとしても、そういうこと言えるんですね」

 氷のような言葉に怖気づき、思わず手を離した。

「心より軽蔑申し上げます」

 振り向いた少女の微笑みは、絵画のような美しさだった。


「古舘さんには謝ったの? 許してもらえた?」

 謝罪するなり、六花は理仁に問う。

「二度目は無いって条件付きで」

「もー。ほんとだよ、二度目は熱海の海岸に埋めるから! いや、移動が大変だ。どこがいい?」

「埋められたくないからもうしない」

「ほんとに? いざとなったらアスファルトだよ?」

 首をかしげる少女が生身だと安心して「仰せのとおりに」と返した。



***



「大したことないって、二股掛けようとしてたことですよね?」

 明らかに憤慨する望月を長谷部が笑いながら窘める。

「望月、私情だ」

「大城さんには無いんですか?」

「あるよ。だが、捜査とは分けろ」

「……はい」

「今はそれよりも頭痛くなるくらいに考えなきゃならんことがある。気合入れなおせ」

「確認したいことは確認できましたよ? あ、久藤帆恭くんに白河由弦さんに何を話したか、まだ聞けてないですね」

「それもあるが……今は良い。署に戻ろう。細かいこと考えるのは鷲見さんらに共有してからだ」

「今日中に戻りますか?」

「じゃないと旅費がかさむからな」

 大城の言葉どおり、二人の刑事は長谷部の運転で横浜駅まで送ってもらった。初めての関東に名残惜しさを隠せない望月を無視して、大城は軽く頭を下げる。

「どうも。世話になりました」

「いえ。聞きこみはこちらでも続けますから情報はお伝えします。今度は観光で、是非」

「隠居してからになりそうなもんです。では」

 二人の刑事は横浜発熱海行の新幹線に乗りこんだ。

「あの、さっきの。考えないといけないことって何ですか?」

「公共の場だろ」

「考えてみたいんです」

「被害者の恋人はどこにいる?」

「え? でも、堀本くん、被害者が若い男と言い争っていたって。きっと園田さんや古舘さんの言ってた恋人のことですよ」

「あまり真に受けるなよ。裏取ってからだ」

「裏、ですか?」

「あったりめぇだ。長谷部警部補も行ってたろ、毎日数十件は男女のいざこざが駅前で開幕してるって。馬の耳か、お前のは」

「……じゃあ、すぐ見つからなさそうですね」

「あるいは、それを狙ったか」

「え?」

「ほら、考えるんだろ。考えろ」

 何か言いたい望月だったが、目を閉じてしまった大城の隣で、必死に事件について思考を巡らせた。

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