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通夜と決意

 空っぽ。

 空虚な通夜だった。三年前の葬儀のときも頼れる大人は身近にいなかった。幼い妹に手伝わせるわけにもいかず、由弦が生前の母親にも協力してもらってあらゆる手配をした。あれから三年が経過した。再び同じ手順を踏むとは想像していなかった。

 今、棺は六花の部屋にある。

 幼いころから暗い部屋では眠れない子だった。いつものようにベッドの傍の間接照明はつけたままにしている。棺を部屋に静置するとき、どうしても室内の様子が気になった。高いところの掃除を手伝ったり勉強を教えたりする際に何度か出入りしたことはある。主人が戻ってきたはずなのに、部屋の様相がまったく異なって見えた。

 白い本棚に並んだものを視線で追っていく……教科書やノート、スケッチブック、トラベラーズノートのリフィルいくつか、移住の際に彼女が唯一持ってきた書籍『雪のフィアンセたち』、中学時代に長期休みの課題図書だと話していたものが数冊、日記帳……厚い日記帳にはひとつだけ付箋がついていた。思わず手に取り、そのページを開く。数日前の――終業式の日付だった。付箋には「帰ってきたら書く!」 と、二行にわたり妹の字が綴られていた。

 日記帳は五年分の記録を、一日一ページ書けるようになっているタイプだ。いつだったか、一緒に買いに行った覚えがある。

 日記をつけたことがないのに最初から負担が重いものを選ぶのをなぜ止めなかったのか……



 リビングで宿題をしていると、

「そういうかっこいい字書けるようになりたい!」

 急に六花が宣言した。

「がんばれ」

「コツは?」

「知らない」

 日本語は他言語のアルファベットとは一線を画す雰囲気がある。事実、由弦も母の書く字に憧れた。書道のように墨汁と筆で練習する機会は無かったが、はねやはらいを再現するには持っている筆記用具で十分だった。

「結局のところ慣れだよ。母さんの字、真似してみればわかってくると思う。そのうちかっこいい字になってくよ」

「うぅぅぃい……」

 あからさまに乗り気では無かった。書く理由が無ければ練習も憂鬱だ。

 数日後。

 ふと思い立ったある日の午後、母親の診察中に、小学生だった六花の手を引いていくつか近くのバラエティショップを巡った。

 何かを習得するとき必ず練習は欠かせない――由弦は、それは間違いないと信じていた。

 初出場した射撃大会の準優勝という結果は、他者のコンディションによる差異は否定しないが、畢竟、自らの全力が出せたからだと認識している。

 文字を書くことも例外ではない。練習しなければ「そういうかっこいい字」は書けない。とはいえ、十歳の妹にこの論理を押しつけても意味は無いとわかっていた。ならば、実際に練習するかどうかは任せるとして、その第一歩を手伝うくらいはしてやっても良いと思った。その程度なら、父親の死にまつわる考察の気晴らしになる気がした。

「日記って何書くの?」

「好きなことでしょ」

「好きなことって?」

「わかんないよ。クリスの好きなことを書くんだから」

「何が好き?」

「自分に聞いて。ほら、ここにもあった。良いなって思うの……」

 有無を聞くまでもなかった。数秒ほど目を離した隙に、鮮緑は一冊の日記帳に惹きつけられていた。ただ、不安なのは

「それ、五年日記だよ。千八百日以上、毎日書かないといけないんだよ?」

「がんばる」

 事前にがんばれと言った手前、否定できなかった。名前を呼ばれながら制服の裾を引かれる。

「これが良い!」

 店内の照明を受けて、見上げてくる瞳が煌めいているように錯覚する――生前の父親の瞳と重なった。

 見上げながら声をかけると、おだやかな眼差しが降ってくる。

「クリスには声かけなくていいの?」

「いやぁ、あのピオニーちゃんは読書にはそれほど興味ないでしょ。絵を描いたり自然の中でのびのび過ごしたり、そういうほうが合ってるよ」

 射撃大会の成績を受けて、書斎のコレクションから自分で選んだ一冊をくれるという。ただ、古書ばかりでどれを選べば良いのか判断基準をもっていなかった。指南までは求めていなかったが助言は欲しかった。しかし、父親は「好きなのでいいよ」とだけ言って床に座りこみ近くの書籍を抜き取って読み始めてしまった。

 改めて部屋を見渡す――壁一面はもちろん、部屋中が本棚であり書籍に満たされている。多量の紙が集められた特有の香りを深く吸いこんでみる――気合を入れて背表紙をひとつひとつ丁寧に確認していった。

 いつの時代なのか、誰による著作なのか、そもそもどこの言語が用いられているのか。

 知らない世界はとにかく新鮮でたまらなく惹かれた。

 中でも、その書籍の古さは異質だった。なんとなく手に取った一冊……ポアンカレ著作・田邊元訳『科学の價値』に簡単に目を通した。

 一九二七年に上梓された初版であったが、シミや損傷は穏やかだった。風化によって紙は変色していたものの、それ以上は何も気にせず読書できそうだ。父親が書籍を大切にする人だと知っているが、今までの持ち主からずっと大切にされ続けてきたと推察できる。

 由弦はそれを片手に、読書もとい待機している父親のそばで膝を曲げた。気がついたのか、人差し指の関節で眼鏡のブリッジを押し上げながら上目遣いに視線が合わせられた。背の高い父親に見上げられる、この珍しい感覚を面白がっているのを悟られたくなくてぶっきらぼうに尋ねる。

「こういうのでも、本当にもらっていいの?」

「ああ、もちろん。何を気にしてるんだ?」

「いや……かなり古いから、本当は気に入っているのかなぁって」

「日本にいたころ、古本屋で買ったんだ。それは初版だったかな」

「へぇ」

「当時はとにかくミユキの気を引きたくてね。話を合わせようと、彼女が尊敬すると言っていた学者の著作を網羅しようとしていた」

 隙あらば惚気てくる親を持つと苦労する。あからさまな父親だけで済めばいいが、母親は無自覚とくる。「はいはい。ほんと、健気な恋が実りましておめでとうございました」と突き返して他のを探そうとした、そのとき。書籍は押し返された。

「愛着がないといえば嘘になるが。それでも、関心を持ってくれたなら満足さ」

 関心。

 まあ一応、関心ではあるだろう。ただ、父親が望むものとは程遠いと自覚している。日本語で書かれた書籍だったから以上の理由はなかった。特にこういった古いものには画数が多い漢字もよく使われていてかっこいいと感じたくらいだ。少なくとも、内容への興味ではなかった。

「じゃあ……これが良い」

 父親は優しく目を細めて頭を撫でてくれたが――同じ言葉で物を求めているのに、妹の関心の純粋さとは比べるまでもない。

 妹と繋ぐ手が汗ばんでいないか、気が気ではなくなる。都合よく理由を思いついて、手を離す。その手で妹が選んだ日記帳を掴み、差しだした。

 よこしまな思考が混ざっている。

 正確には、一種の現実逃避。あの事件が、より没頭できる何かを求めさせているだけ。しかし、いつまでも見つけられずに縋り続けている。崇高な目的などなく、好奇心ですらない。

 焦りたいのかもしれない。忘れるために好都合な焦りが欲しいのだ。焦れば焦らない自分に焦らずに済むから、一石二鳥とも言える。畢竟、パラドックスのような、ないものねだりに過ぎない。

 それを知らない妹が……心の赴くまま好きを見つけられる彼女の感性が疎ましく、羨ましかった。



 由弦は、本棚に背を預けて座って妹の日記帳の最初のページを開いた。

 花瓶に生けられた花の絵が描かれているページの端には、闇夜に咲き誇れる日を待ち望む、と書かれていた――六花――自分の名前からの連想だろうか。描かれた花にはなんとなく見覚えがある。おそらく母親の見舞いで持って行ったいずれかだろうと予想した。


チーズ! Omaのチーズ食べたい 見つかるかな 今はパンでがまん

いちご大福 考えた人すごい みどりいろのお茶も、もっっっのすごくおいしい!

すれちがったわんちゃんかわいかった♡ 手ふったら、シッポふってくれた!

この花 名前なんだろう?

お水! そういえば!

やきそばパン考えた人、頭悪すぎて大好き


 文字よりも絵のほうが大きく数も多い。一日一ページを守りながら、スケッチブックのような使いかたをしていたのだろうと想像する。やはり指定しなくても好きなものを描けたのだと眦が下がっていく。

 しかし。

 次のページをめくった瞬間、白河は全身を強張らせた。

 銃乱射事件の日から二年――日記をつけ始めて一年目、この日だけ絵がない。十二歳の妹が文字で記録したものだ。文字だけで完結しているページだった。




今日も、リビングでやってた。

ひとつのことに集中しているゲンは知らない人みたい。

はなしかけるのも怖くて見ているのも怖い。

そのうち、パパみたいに本当にどこか知らないところへ行ってしまうのかな。

ママのようにごめんねと言ったきり動かなくなってしまう日がくるの?

わたしが声をあげて泣いていたら、だれか気づいてくれるのかな。

それとも、みんな知らないふりをするのかな。

この日になったから、わたしも考える。

考えないといけないと思う。

だれに言えばいいのかわからなかった。

何を言えば伝わるのかもわからなかった。

あのニュースの男の人、話したことがあること。

だれも聞いてくれなかった。

ううん、違う。聞いてもらっても、何を言えば良かったかわからない。聞かれてもこわくなって泣いてたと思う。

うまく言葉が見つけられなくて、聞いてくれる時間を守れなくて、だれにも伝えられなかった。

わたしが話したせいでパパはうたれたの?

そうだとしたら、あの日、わたしはママと泣いていてよかった?

猫は好きだけど、被りたくなかった(横線削除)

わたしの仮面は猫なんかじゃなくて、いやなものがぜんぶ集められてはりつけられた呪いだった。

ぜんぶきらいだった。

だれにも言えないのはわたしの弱さだったかもしれない。今も言えないのはわたしの弱さだと思う。

楽になりたいのに、終わりにできない。

ゲンみたいにちゃんと向きあえるなら何か違ったのかな。何か変えられたのかな。

あの日のためにずっときらいなまちがってる道を進むしかなかった。

真実から遁走を続けた。だからこそ願ってる。

だれか私を終わらせて。

けれど、そうしたらひとりぼっちになる。

そうなったら、わたしはたえられる?

それとも、何か変えようとがんばれる?

もう何にもわからない。




 由弦は、日記帳を閉じた。

 早朝の電話に出たのは罪悪感だ。二十時五十七分の電話を、意図的に無視したからだ。ちょうど父親の事件に関する考察に熱が入っていたため、途切れさせたくなかった。

 学問そのものは、人の好奇心から生じたというのは至言だろう。偏見は学問の敵だが、偏見は感情に由来し、好奇心という感情から生じた学問は、どうしても偏見と重なりうる。除外が困難である以上、つきあっていくしかないわけだが途方もない作業だ。失敗する可能性はあり、また、失敗すれば新たな無理解や偏見が際限なく生じていく。真実に寄り添うためには、そのような自らの不純物と向き合わねばならないのは承知のうえだった。それでもなお、あのとき、何かをつかめる気がしていた。

 真実である保証はもちろん無い。

 しかし、逃したくなかった。

「…………」

 由弦はテーブルに突っ伏せた。

 恋人がいるかどうか……刑事の推察どおり、由弦は知らなかった。しかし、肯定するのも否定するのも癪に障った。どうにか言葉を選んだ結果が「可能性は否めません」だった。



 リビングのテーブルに教科書とノートを持ってくると、

「兄上ぇ、この問題の解きかたを教えてくれませぬかっ?」

 コーヒーで朝食を食道へ流しこんでいる由弦の前に六花が陣取った。何も答えずただ眺めていたら、演劇の幕が上がる。

「定期考査を間近に控えつつ、解けない問題が立ちはだかりけり。何卒お力添えいただきたく存じまする!」

「古典? いつ?」

「……」

 コーヒーを飲み干してから「いつ?」同じ質問を重ねた。

「今日の一限でございまするねぇ」

「……は?」

「およそ二時間後……」

 リビングの時計の短針は今にも七を指そうとしている。

「諦めも大切だよ」

「あああっ、そこをどうにかぁ……!」



 必修科目のテストのため早々に起きた日を狙ってきたかのような一幕から、まだ半月すら経過していない。六花が期末試験の結果を見せて由弦に自慢してきたのは、たった五日前だった。

 兄なら絶対に断らないと信じて、若干身体を傾けながらおねだりする姿はもう見られないらしい。白い棺が目のまえにたしかに存在しているのに、どこか現実離れした感覚がはびこっている。

 霊安室で目にした六花を思い出す。

 表情豊かな少女は、殊にすぐ顔を真っ赤にしていた彼女は、生前の父親によく「ピオニーみたいだ」と揶揄われていたとは思えないほど、人工造形物のような不気味な蒼白に支配されていた。その反面、ただ眠っているだけのように見えて、リビングで寝落ちした彼女をみつけたときのようにそっと頬へ手を伸ばした。あと数センチメートル――怖くなって手を引っ込めた。

 首に包帯が巻かれているのが目に留まった。

 由弦は何かに誘われるまま包帯の端を見つけて慎重に解いた。

 何を隠そうとしていたのか理解すると、可能なかぎり包帯を元に戻した。異様な蒼白にも納得した。六花に何があったのか、ほんのわずかながらわかった気がした。

 終始付き添ってくれた警察官に、どこに倒れていたのか尋ねると、彼女は車に乗せてくれた。まもなく到着したのは海が見える道路から少し離れた場所だった。

「ここは?」

「宿泊していたホテルから親水公園のムーンテラスへ行く途中の道を、少し逸れたところです」

「ああ……献花、ありますね。あそこですか」

 ホテルも海も見える場所だった。

「このあたりの夜って、暗いんですかね」

「ライトアップされると、けっこう明るいです。ここから歩いて二分くらいでムーンテラスです。ただ、当日は雨が降ったり止んだりしていたので人通りがほとんどありませんでした」

「ああ……そういえば、荷物、まだ見つかりませんか」

「……捜索中です。見つかり次第、ご連絡差し上げます」

「わかりました」

 誰もいなかった。

 息絶えるとき、妹は、ひとりぼっちだった。

 両親が生きているころから、六花はひとりで過ごす機会は少なくなかった。しかし、積極的に誰かの視界から外れようとしているのではなく、好きなことをしようとすると自然とひとりのほうが環境として好ましいに過ぎない。

 ひとりで過ごした時間以上に、両親や兄に甘えている時間のほうが長い。決してひとりぼっちが得意ではなかったのだ。

 空っぽの拳を握りしめる由弦の掌には、爪が深く刺さった。



 祖母からの電話を取るために病室から離れて、戻ってきたとき

「日本に行ったら、私、ママの名前もらえるの?」

 六花の声が聞こえた。姿を見ずとも、由弦は母親の動揺を明確に察知した。咄嗟にフォローする方法に思考を割く――母親の言葉の代わりに、六花が続ける。

「クリステルって、オーマからもらったんでしょう? それなら、私、日本で使う日本語の名前、ママと一緒が良い」

「引っ越すのは、嫌……?」

「違う、ううん、えっとね、引っ越すのは関係ないよ。ミアたちと離れるのは寂しいし嫌だよ。けど、違うの。ママと一緒が良いの。一緒じゃないと嫌なの」

「帰化するわけじゃないから、クリスの名前を変えられるわけでは無いのよ。あなたが生まれて日本国籍は留保しているから、これから新しく名前を決められないの」

「じゃあキカする」

「クリス……」

 これ以上は――わざと音を抑えずに扉を開けた。向けられる二種類の瞳をそしらぬ表情で受け止める。六花は「ジュース買ってくる」と病室を出た。

 安堵のため息は掠れていた。様子を伺おうとすると、視線がかち合う。自分が先に何か意味のある建設的なことを言わなければならない――思考を回して言葉を探した。

「わかってるよ、クリスは。わかってて言ってるだけだよ」

 母親の言葉を遮るように、軽く被りを振った。

「母さんの故郷でしょう? 興味あるよ。おもしろい国なんでしょう? それに、こっちよりも暖かいらしいから。僕、寒いのあまり好きじゃないし。友達とも、携帯あれば連絡取れるし」

 そっと手を取られて、由弦は母親に誘われるままベッドに腰かける。気恥ずかしさはあったが、抵抗せずそのまま抱きしめられた。

「ごめんね。ありがとう。クリスをよろしくね」

「……うん」

 なんとなく触れたシーツが湿っている気がして、母親の手を握るように包むことにした。

 偶然手を置いた場所は、先ほどまでクリスが顔を押しつけている箇所だった。



 由弦は日記帳を片手に、覚束ない足取りでリビングに向かう。椅子に体を預けて通話記録を確認した。

 六花が死んだ夜。六花から電話があった。着信には気づいていた。しかし、父親の事件について知らない人に見えるような熱中とともに考えて、六花からの連絡を無視した。

 母親の「よろしくね」という言葉はどのようにでも解釈できるが少なくとも、ひとりにしないであげてほしいというニュアンスは明確だった。にもかかわらず、約束を守れなかった。

 二十時五十七分。

 普段から兄が起きていると知っていたから掛けてきたのだろう。それは、わかる。

 しかしこのとき彼女がどのような状況だったのか、わからない。

 単純に暇だったから掛けてきたかもしれない。友人らに促されて掛けてみただけかもしれない。あるいは――だからこそ由弦は、妹が死んだ時間を知りたかった。しかしながら、警察は教えてくれなかった。最初の電話のときも未明としか言っていなかった。警察署での聴取をした刑事には捜査中だからと曖昧にされた。

 なるべく正確な時間を知りたかった。そうすれば、本人には聞けなくても、六花が掛けてきた電話の用件に予想がつけられる気がした。

 開いたままのスマートフォンで、ニュースを確認する。数時間単位でなら――期待を込めた。

 妹のことを良く知っていると思っていた。明るく元気な、ぬけているところがあって少し勉強が苦手な少女のことを。生まれたときから見てきたはずだった。

 由弦はスクリーンを見ていられなくなって、スマートフォンを力任せに壁へ投げつけた。



「割合でいったら、私のほうが妹として上手なんだよ? わかる? ゲンは私が生まれてからしか兄をしていないのに、私は生まれたときから……ううん、受精卵として着床した瞬間から妹をしてる。したがって、人生において私のほうが妹をしている割合が長いんだよ」

「何言ってるの?」

「私もわからなくなってきた」



 由弦もわからなくなってきていた。

「………………」

 否、わかるかもしれない――警察署で、一緒に旅行していた五人のうちひとりと連絡先を交換したと思い出す。

 椅子を蹴るように立ち上がり、スマートフォンを拾い上げた。

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