表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/98

シャロニカマンサ・ユナ

 ユナ王国の玉座の間には、女王である私以外に6人の腹心たちが揃っていた。

 いずれも私を決して裏切ることのない忠誠心の高い者たちだ。


 私は玉座から立ち上がる。


「そろそろ時間です。門を開きましょう」


 進み出たのはふたりの近衛騎士、男性の方はダベルカ・リーラント、女性の方はエリザイラという。

 ダベルカが「門を開きましたら、私めが先行しましょう」と言った。

 私は小さく頷く。


「そうしてもらいます。門の先には数名の男女が倒れていますが、中に邪眼族の男がひとり倒れています。邪眼は【呼吸停止】。急に息ができなくなりますが、焦らずに首を()ねなさい」


「はっ」


「邪眼族の男を殺したら一度、こちらに知らせに来てね」


「かしこまりました」


「では開きますよ。――〈ディメンションゲート〉」


 転移門を作り出す時空魔術だ。

 繋げる先はもちろん、私の息子であるマシューハルトのいる場所である。

 円形の門の先には森が広がっていた。

 数名の男女が倒れているのが見えるが、邪眼族の視界に入らないよう念の為に少しだけ距離を開けてある。


 ダベルカが「では行ってまいります」と告げて門をくぐる。

 エリザイラはダベルカがいない間、私の護衛を務めるべく傍に来た。


 数分と待たずに、ダベルカが門から戻って来た。


「女王陛下、邪眼族の男を始末しました」


「ありがとう。危険はもうないわ。急いでマシューハルトを回収しましょう」


 私はダベルカとエリザイラのふたりの近衛騎士、そして専属侍女のルミナート・トラータを連れて門をくぐった。

 森の木々の匂いに紛れて血の臭いがする。

 命令どおりにダベルカが邪眼族の男の首を刎ねたからだが。

 私は真っ直ぐに倒れているマシューハルトのもとへと向かう。


「その少年がマシューハルト王子ですか、女王陛下?」


「ええ。ダベルカ、抱えてもらえるかしら」


「はっ」


 ダベルカがマシューハルトを抱き上げる。

 マシューハルトが手にしていたショートソードが傍らに落ちているので、手で触れて〈ストレージ〉に仕舞った。


「ルミナート、マシューハルトの治療をしたら〈クレンリネス〉を使って。その後は私の部屋の隣の個室で休ませてあげてね」


「かしこまりました」


 さて後は……クレイグが私の関与に気づかないよう、この場の魔力を乱す必要があるわね。

 私は場に滞留している魔力をかき混ぜるようにして痕跡をメチャクチャにする。

 さあ、ここでするべきことは終わりだ。


「では城に戻りましょう」


 私たちは再び〈ディメンションゲート〉をくぐって玉座の間に戻った。


 ダベルカが抱えているマシューハルトの顔をひと目でも見ようと、この場に残っていた者たちが近づいてくる。

 城の侍従長を務めるバルダトリオ・サンブリア、宰相クラツフォ・バッソ、そしてこの国の筆頭魔術師アリアネッタ・ミュルグレスの3人だ。


 クラツフォが喜色を浮かべながら「このお方がマシューハルト王子ですか。なるほど女王陛下の面影があります」と言った。


「当然でしょう、私の息子なのだから」


 やや憮然としながら私は応えた。


「さあさあマシューハルトから離れなさい。彼は激しい戦いで疲弊しているから治療が必要なの。ルミナート、先程の通りにして。それからダベルカは念の為にマシューハルトについて。護衛兼監視役としてね」


「護衛は分かります。監視ですか?」


 ダベルカが首を傾げて問うてきた。


「ええ。きっと初めはこの国から逃げようとするだろうから。あなたが抑止力になりなさい」


「確かマシューハルト王子は優れた魔術師でしたね。〈ギアス〉で魔術を封じてしまえば良いのでは?」


「……それは悪手ね。マシューハルトは闇属性の精神魔術に対する防壁を構築済みだから〈ギアス〉をかけるのは難しいわ。それに彼は希少なスキルを持っていて、拘束具の類は無効化できてしまうから、無理やり軟禁するのも大変なの」


「ではいかがするのです? せっかくの王子をむざむざオルスト王国に帰すわけにはいかないでしょう」


「ええ。だから私の言う通りにして。マシューハルトにはこの国を好きになってもらうのが一番よ。だからダベルカを付けるし、そうね世話役にルミナートも付けましょうか。とにかく厚遇してあげるつもりなの」


「……何かお考えがあるのですね。女王陛下の仰る通りにいたします」


 マシューハルトを抱えたダベルカとルミナートが玉座の間を離れる。


 しかし長かった。

 この未来に至るまで、マシューハルトが生まれる以前より十数年もの月日を賭けたのだ。

 でも待った甲斐はあっただろう。

 なにせ私の息子マシューハルトこそが、『バランサー』を討ち取り大陸の覇王となるのだから。


 私は来る未来に胸を踊らせながら、執務に取り掛かることにした。


 ……彼が目覚めるときには、目の前にいてあげたいものね。


 思わず笑みが浮かぶ。

 さあマシューハルト、あなたは私の描いた未来を受け入れてくれるかしら?


『小説家になろう』でのブックマークが伸びないので、今後の更新は『カクヨム』一本になります。

重複で投稿するのが単純に面倒という身も蓋もない理由が一番大きいですが、今の『小説家になろう』は読者層が女性に偏っているという話も聞きますので今後、伸びることもないだろうなという諦観も含まれております。

『小説家になろう』で読まれている方にはお手数ですが続きは『カクヨム』にてお待ち下さい。


▼カクヨムの当該作品のURL

https://kakuyomu.jp/works/16818093083439394360


また拙作の『異世界デバッガのベリーイージー冒険譚』の完結後の続きを『カクヨム』にて連載していました。

これは『小説家になろう』には投稿していません。

ちょうど完結後の追加エピソードが今日で投稿完了しまして、もし読みたいという方がいた場合は以下もご確認いただけると作者冥利に尽きます。


▼カクヨムの異世界デバッガのベリーイージー冒険譚のURL

https://kakuyomu.jp/works/16818093085680065578


正直な話、続きを読む際のブックマーク機能は慣れ親しんだ『小説家になろう』の方が好みですし、まだまだ面白い作品が続いているので読者としては『小説家になろう』を利用していきます。

処女作の投稿からお世話になった『小説家になろう』から距離を置く寂しさもありますが、女性向けの作品を書く気も書ける気もしないため、今後の作者としての活動は『カクヨム』中心にする予定です。


ブックマークや評価をいただいた読者の方々には感謝しかありません。

それでは『カクヨム』でお会いできることをお祈りしまして、当作品の『小説家になろう』での更新はここまでとさせてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ