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4.どのくらいかかりますか?

 夕食は黒パンにサラダ、屑肉の入ったシチューだった。

 シチューに肉は複数種類が入っていたが、家畜ではなく魔物の肉だったらしい。

 故郷でも魔物の肉は食べられていたし普通のことだが、複数種類の細切れの肉たちは何の魔物だったのだろうか。

 ともあれシチューは非常に美味だった。

 屑肉ばかりとはいえしっかり煮込まれて味が溶け出たシチューはくたくたになった野菜とともに腹を満たしてくれる。


 その夜は初めての宿ということでやや緊張してなかなか眠れなかった。

 しかし10歳にも満たない子供の身体は素直に睡眠を欲していて、気がつくと朝になっていた。


 〈クレンリネス〉で身だしなみを整えてから朝食を頂く。

 朝のメニューはサンドイッチとミルクだった。

 お金を払えばお弁当にサンドイッチを購入できるらしく、数名の宿客がお弁当を購入していった。

 僕はとりあえず街で買い食いなどしてみたいから、お弁当は買わないでおく。


 朝食を食べ終えたらいよいよ身分証明証の発行をしてもらいに……って、どこへ行けばいいのだろう?

 通りがかったミアに聞いてみることにした。


「すみません、ミアさん。身分証明証の発行ってどこへ行けばやってくれるんでしょう?」


「マシューは身分証明証を持っていなかったのにゃ?」


「はい。昨日、故郷の村から出てきたものでして。領主様から発行してもらわなきゃならないんですよね?」


「そうだにゃ。王都まで行くならこの街に出入りするだけでなく別の街にも出入りするための身分証明証が必要だにゃ。身分証明証は市政役場で発行してもらえるのだけど……領主様の印が入ったものは発行に時間がかかるにゃ」


「どのくらいかかるんでしょう?」


「うーん。ウチもしらないにゃん。詳しくは役場の人に聞いてくれにゃ」


「分かりました、ありがとうございます」


「市政役場は通りを北に進んで、領主の館の手前の大きな建物だにゃん。近くまで行って分からなければ、その辺の人に尋ねるといいにゃ」


 ミアに改めてお礼を言って、僕は宿を出た。




 さて市政役場は割りと分かりやすいところにあった。

 昼間から人の出入りがあったし、市政役場という文字がデカデカと書かれた看板があったのだ。

 これで分からないとは思えない。

 もしかしたらミアは文字が読めないのだろうか?


 ともあれ市政役場に入ると、幾つかの受付カウンターがある。

 そのひとつに『身分証明証発行』とあったので、向かった。

 人間のお姉さんが座って書き物をしていたが、僕が前に立つと顔を上げて笑顔を向けてきた。

 僕はペコリと小さく頭を下げた。


「すみません、王都まで行きたいので身分証明証を発行してもらいたいのですが」


「はい、身分証明証はこちらで発行しております。王都までということは領主(いん)の入った身分証明証をお求めですか?」


「はい」


「分かりました。こちらの用紙に必要事項を書いてください」


 差し出された紙に必要事項を書いていく。

 埋められない部分もあったが、ひとまず書き上げた。


「これで大丈夫ですか?」


「……あら、まだ9歳なの? ええとマシューくん」


「はい」


「旅にはご両親が同行なされるのかしら?」


「いえ。家族はもう亡くなったので、父の友人を頼るために王都へひとりで向かうところです」


「あらまあ」


 受付のお姉さんは少し考えて、眉を下げた。


「分かったわ。開拓村出身ということなら領主印の入った身分証明証は発行されると思うけど、審査に時間がかかるの」


「どのくらいかかりますか?」


「そうねえ。1週間は見て欲しいかな」


「そんなに? ……分かりました」


「領主印の入ったものは悪用されると大変だから、発行が厳しいの。多分、開拓村まで官吏が向かってマシューくんの村の村長から話を聞かなければならなくなるから」


「そうなんですね」


「ええ。暇になっちゃうけど御免なさい。1週間後くらいにまた来てもらえるかしら?」


「分かりました。ではまた来ます」


 僕は市政役場を後にした。

 しかし1週間もかかると暇だな。

 街の外に出るわけにもいかないから、街中でなにかすることを考えないと。


 ひとまず用事が早く終わったので、街を見て回ることにした。


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