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12.あの盗賊たち馬鹿じゃないの?

 ユーリとルカで盗賊の死体を街道の脇に運んだ後、僕はふたりに〈クレンリネス〉をかけた。

 ユーリは戦利品として盗賊の頭目が持っていたブロードソードだけを持っていくことにしたらしい。

 他に目ぼしい所持品などはなかったそうだ。

 冒険者ってたくましいね。


 片付け終えた後は街道を進むだけだ。

 ちょっと時間を食ったけど、途中の村には日暮れまでには到着するだろう。




 村には宿などといったものはない。

 野営のための準備はしてきているので、広場を使わせてもらう。

 食事についてはお金を支払えば新鮮な肉や野菜、焼き立てのパンなどを購入できるので、それだけで十分だ。


 僕らが村長に野営についての許可を取ってから準備をしていると、数名の護衛を連れた黒い馬車が村に入ってきた。

 そのまま村長のところへと入っていく。


「ありゃどこかの貴族だな」


「そうね。馬車の横に紋章があったから多分、間違いないでしょうね」


「そうなんだ?」


 馬車の横に紋章が描かれているのは貴族の馬車なのだとユーリとルカから教わった。

 ただふたりも紋章の見分けまではできないので、どのくらい偉い貴族かは予想はできない。

 まあ貴族だと分かっていれば、平民である僕たちは無礼をはたらかないように気をつけるだけだ。


 貴族とその護衛たちは村長の家に泊まるらしい。

 もちろん貴族が野営をするとは思えないし、村長としても貴族を邪険にあしらうことなどできはしないだろうから当然だけど。

 食事の準備ができた頃、護衛のひとりが僕たちのもとへとやって来た。


「食事の最中に失礼する。私はイーヴァルディ家に仕える騎士だ。道中の盗賊たちの死体は君たちかな?」


「騎士様でしたか。その通り、盗賊は俺たちが討ち取りました」


「ふむ、――その剣は? もしや盗賊の持ち物では?」


「え、ああはい。この剣は物が良かったので失敬したのですが」


「見せてもらってもよろしいかな?」


「……どうぞ」


 ユーリは盗賊の頭目から奪ったブロードソードを騎士に渡した。

 すると騎士は剣を抜かずに、柄の部分をマジマジと検分して、ユーリに差し出した。


「見せてもらって、ありがとう。君たちたった3人であの数を処理したのか。腕の立つ冒険者なのだね」


「いえ。この子は俺たちの護衛対象でして。実質ほとんどふたりで仕留めました」


「それはますます凄いな。ウチにも君たちのような手練れが欲しいものだ。では食事中に失礼したね」


 騎士は村長の家の方へと歩き去った。

 その姿が見えなくなってから、ユーリとルカはブロードソードを観察し始める。


「……ここのところ、何か装飾を削った跡があるな」


「……もしかしなくても騎士剣? だとしたらあの盗賊たち、実は馬車を狙っていたのかも」


 ふたりは納得がいったのか、食事の準備を始めた。

 会話でだいたい分かるけど、どうやら盗賊たちは本当は馬車を狙う手はずだったらしい。

 そこへたった3人で旅する僕らが現れて、ついでと言わんばかりに狩ろうとしたところ、反対に全滅の憂き目を見たというわけだ。


「え、あの盗賊たち馬鹿じゃないの?」


「マシュー、その通りだが。多分、頭目だけが黒幕で、盗賊たちは普通の盗賊だったんだろうよ」


「どういうこと?」


「つまりたった3人の獲物を部下が見過ごせなかったんだろ。本命は馬車の予定ではあったが、たった3人ならと言い出す部下を抑えられなかったんじゃないか?」


「ああ、なるほどね」


 何にせよ馬車が襲われるのを事前に防いだわけだけども、特にお礼などはもらえないらしい。

 とばっちりだったのだけど、勝手にしたことだからそんなものだとユーリとルカには言われた。


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