【5】
(魔剣決闘楽しみだなぁ)
彼には生きる意味が分からなくて何故自分が生きているのか分からなかった。
なのでよく辛く苦しいめにあったら死にたいと思ったし実際あまりの辛さに口に出す事すらあった。
母は心配し祖母は「何言ってんだ!」と叱咤した。
そんな彼にとって初めて見つけた生きる意味。
あの日テレビを見てわくわくした舞台に一歩近づいた。
とてもわくわくしていた。
これからの胸踊る日々に。
◇◇◇◇◇
(けっ…ぬりぃことぬかしやがって)
この力が何に使われるのか分かってんのかね?
彼の心は冷めていた。
酷く冷たく。
そんな彼が何故この学校に入学してきたのか?
それはひとえに魔剣士としての在り方しか知らなかったからである。
(こいつらがいつか絶望色に染まって使い物にならなくなる日が楽しみだ)
―― ―― ― ―
「うわぁ!これが魔剣士なんだねカッコいい!
僕にもなれるかな?
うわぁ!凄いな楽しそう!」
「ぐぁぁぁああああああああああ」
絶叫と共に男の右腕が宙をまい血飛沫をあげる
「俺の俺の腕がぁぁぁぁあああああああ」
男はその場で痛みに堪えかね気絶した。
少年の腕には血がべったりとついて血が滴っていた。
―― ―― ― ―
「ねぇ、部活何にする?」
「私バレー」
「そうなんだ私はバスケにしようかなー。
中学からやってたし」
「いやぁこの学校にせっかく入学したんだからやっぱ魔剣決闘部かファンタジー部だろ!」
ファンタジー部とは?
ARによるRPGゲームなどが行える。
この部は平等性に重きを置いており課金しても装備を変えられる程度で能力に変化はない。
お金は本来消費や投資に回されるものだが現実世界では他社との比較のものさしにされてしまっている。
そのくびきからの少しでもの間開放されようと入部する者が多い。
逆に魔剣決闘部は競争を重視している。
皆が思い思いに談笑にふけっている。
その中にはかなり親密そうな間柄が散見される。
おそらくSNSで以前からの交流があっただろう事が伺い知れる。
そんな早くも形成されつつあるコミュニティに取り残された者達も存在する。
いまやスマホを持っていない者の方がマイノリティで持っている方がマジョリティであるがそれでも持っていない生徒もいる。
早くも開きつつある学内ヒエラルキーに焦り、不安、羨望、嫉妬そんな思いを抱えている生徒がいることは他の生徒はつゆ知らずコミュニティが形成されていく。
そんな取り残された生徒に積極的に関わろうとする者も存在する。
教室の中でポツンと1人だけまるで周囲の喧騒が嘘のように取り残されている帰り支度をしている生徒に話しかける者がいた。
帰り支度とは机の上に置かれたこれからの高校生活に必要な教科書類だ。
教科書のほとんどは電子化されているがワークやドリルなどは未だに紙である。
「いやぁ、僕は千輝 多輝よろしくね?」
彼はスマホは持っている時点でマジョリティであったが最近手に入れたためコミュニティ構築という点ではマイノリティだった。
「ふんっ、優しくしてる自分かっけぇてか?
勝手に酔いしれてろよ」
そう言うと青年は教室を後にした。
すると、やり取りが聞こえていたのだろう――
――何あれ感じ悪
――ああいうやつとは関わり合いたくないな
――ねー
しかし話しかけた当の本人はといえば……
(僕が理解を諦めちゃいけないな彼には彼なりの内在的論理があってそうしなければならないそうせざるを得ない理由があったはずなんだ)
無論彼も人間だ傷つかないわけじゃない
それに年も若い
でも人間生きていれば間違いや失敗はある
誰かの何気ない言葉が傷つけることもあれば
誰かの何気ない言葉が誰かを救うこともある。
それが人生
そう信じて明日も話しかけようと
心に決めるのであった。




