【1】
ザー
雨が叩きつける音。水飛沫の音。
雨雲に太陽が遮られて視界も聴覚も明瞭ではないそんな日。
無人のコンビニで弁当を幾つか選びレジへ。
商品をスキャンし会計を済ませる。
そうすると減った在庫のデータが工場へ送られまた、その弁当が作製される。
コンビニと食料集積所に食べ物が備蓄されているが故になせるものだ。
そうしてコンビニでの買い物を済ませ帰路に着いたその道すがら。
バシャバシャバシャ小気味好い水の跳ねる音。
誰かがこちらへ向けて駆けて来ていた。
僕は避けようとしたが、その人物はどうやらこちらへやってくる様で……
真っ直ぐ僕の前まで来ると……
僕の服、腹の辺りの布を掴むと。
「助けてくれ!もう嫌なんだ!!」
そんな言葉を投げかけ懇願してきた。
懇願するのと同時服をつかみ上げた時とは違い顔を上げ瞳を真っ直ぐと見つめて懇願してきた。
僕はその勢いと悲痛な叫び声に呆気に取られ押し黙っていた。
僕は助けてくれという言葉をこんなに間近で言われた事はなかったので、どうしていいのか返答に迷い発声に窮した。
辺りを泣き声、嗚咽が支配する。
それからしばらくして白衣をきた40代ぐらいの女性が駆けて来た。
傘や雨合羽は使用しておらず、ずぶ濡れだ。
相当焦っていたのだろうことが窺える。
彼女は彼が見つかった事に安堵し「ご迷惑おかけしました。」と言い頭を下げさらに少年にも下げるよう促し謝罪した。
そしてその少年とその場を後にした。
僕は何も言えず、その姿を見つめる事しか出来ず、完全に姿を見失った後で帰路についた。
母親が帰って来るまでに色々とすませた。
そして母親が帰って来て僕は助けを求められた事を話そうと思ったが口がパクパクするだけで何ら発声を伴わなかった。
就寝時刻が訪れベッドに入り眼を瞑り僕はあの時の事を思い出していた。
雨が降っていて涙が出ているのかまでの確認は出来なかったが、きっと泣いていたんだと思う。
助けられる力を持っていた訳ではないので無力感に駆られる事はなかったが、その時の事を思い出しながらなんともいえない気持ちになりながら眠りについた。
__朝そんな事を思い出しながら身支度を整えた。