【19】
「え?何?もう一回言って欲しいんだけど。
テストの順位が何位だって?」
聞こえてはいたし理解もしていた。
ただ、娘を追い詰めるためだけに、娘にこれがどれ程のことなのか理解させるために繰り返させた。
「32位…。」
「へぇ、そうなんだぁ。」
スパァン
頬をおもいっきり平手打ちする。
驚きはなかった。
あるのは恐怖だけだった。
何度も。何度も。往復ビンタする。
「このクズ!私が何時間も付きっきりで教えてあげたのになんて様なの?これ以上私に恥をかかせないで!」
あなたは教えてくれてなんかいなかったでしょ?
ただ監視してただけじゃない。
そんな反発心はこれからやってくる恐怖の時間の前に霞と消えた。
次第に押し倒され馬乗りになって平手打ちする。
肉体から私を否定する時間が始まった。
身動きのとれない私はすぐに恐怖に蹂躙される。
怖い…怖い…。
今日はいつまで続くの?
今日はどこまでエスカレートするの?
痛みにはもう慣れた。
だからそれは怖くない。
いつどんな形でどんな風に襲われるのかが恐怖なのだ。
あぁ、私、暴力の受け皿として生まれてきたんだなぁ。
だからきっと暴力を振るわれるのは当たり前なんだ。
そう思うと涙が止まらなかった。
「泣きたいのはこっちよ!」
その日の夕食。
私は勉強から解放される束の間の食事が大好きだった。
この日までは………
なぜならそれ以外の時間はギチギチに管理されて遊ぶのもダメ寝るのも制限されるのだから。
私は夕食の時間になりリビングへと向かう。
無論、夕食の時間も決まっているし限られている。
リビングへ着くと。
「あれ?私の分は?」
「あぁトップ10に入れなかったお前はただの猿だ。
猿と同じ動物だよ、ど、う、ぶ、つ。
分かる?動物に食器なんていらないでしょ?」
「ほら」そう言って食器から食材を床に落とし足で踏んづける。
「動物みたいに這いつくばって食べなよ。
お前みたいな無能は犬みたいに食べるのがお似合いよ。」
食べないとどうなるか分かってんでしょうね?
そう鋭く光る双眸が訴えている様に感じてならないほど、骨の髄まで暴力によってしゃぶりつくされた私は泣きながらグチャグチャのご飯を食べた。
「うわ、うわぁ…ひっくご、ごちそうだぁハァハンハァン、ハァハンハン」
犬マネの様にご飯を舌を出し舐め取る様に口へと運ぶ。
私の心に在るのは母の哄笑だけだった。
そんなご飯でもありつけないと勉強の時間に耐えられない。
もう自分でも何で泣いているのか分からなかった。
ここから私なんて人間じゃないんだ。
だから、暴力も当たり前なんだ。
そう強力な自己暗示が脳内で反芻した。
そんな母は当然の様に進路先も決め、私は魔剣士学校への入学が決まった。
そう、入学出来てしまった。
ここで失敗していれば未来はまた変わっていたのかもしれない…。




