【14】
ある日僕の友人は病に侵された。
衝撃だった。
あの元気だった白磁が…。
そんな友人の見舞いを幾度となく繰り返しているうちに言われた言葉があった。
「それで、こういう占いの本を信じてるんだ。
だから運気の悪い日には見舞いに行けそうもないんだ。ごめんね。」
「そっか。でも、それって明日がある来月がある来年がある未来があるそう信じられる生き方だよね。
僕は明日をなかなか信じられなくて…。
今、生きるのだけで精一杯でさ…。」
「贅沢な人生の使い方だね。
僕には出来なくて羨ましいや。」
それを聞いた僕は心を“ぐぽり”と抉られた様な衝撃を受けた。
そんな青褪めた顔を見て…。
「あぁごめん。ひどい言い方だったね。」
僕にも絶望はある。
それが例え他者から見て軽いものだったとしても。
だから少し苛立ちを感じた。
僕には僕の絶望がある。
でも、同時に感謝もした。
僕にも絶望があった事に気づかせてくれて。
モヤモヤが晴れた気がする。
そんな絶望した僕はいい運気があるという理想、幻想を生み出した事も…。
今が辛い…でもきっと頑張ればいつかは良くなるんだと信じたくて…。
「未来はさ、今の積み重ねでしょ?
だったら今しないと未来には何もないんじゃないかなぁ?
例え、それが失敗だったとしてもさ。
失敗ってすごく貴重なんだ。
例えば起こる確率の低い事で失敗出来たものから得られるものってすごく貴重なんだ。
例えば、戦争で得られた失敗とか。
確かに未来が不安なのは分かる。
縛られてしまうのも分かる。
それってとても幸運なこと。
可能性の輪を無限大に持っているってことだから。」
占いを信じたのはいつからだったか?
人生に絶望した時だったのかもしれない…。
家庭が貧困で旅行にも遊園地にも行けない。
ゲームも持っていない。
そんな僕は学校という場に否定されている様に感じられてならなかった。
そんな抽象的な否定がある日、具体的な否定を突きつけられた。
部活動で現実を見たのだ。
口では綺麗事を言っていたが本当はそんな事どうでも良くて強ければいいという事を。
弱いやつには難癖つけてチーム内順位を下げる。
強いやつは使われる。
僕は家庭と学校という二つの場所で存在を否定されてしまった。
多感な時期の幼い心を折るには充分すぎた。
「でも、さっきも言ったけど、今の積み重ねが未来なんだ。
だから今やりたい事にもっと素直になってみてもいいと思う。
良いことも、悪いことも、今しなければ何も分からないし始まりもしないと思う。
以上、今を信じる事しか出来ない者からの餞別でした。」
そうだ。自分は魔剣士になりたかったんだ!
思い出した!
皆んな立派な動機ばかりメディアで報じられるから尻込みしていたけど、カッコいい!楽しそうだから!
それが理由だっていいじゃないか!
その日また新たな魔剣士が一人誕生した。