【11】
真の絶望とは希望を見出してしまったことかもしれない。
希望という期待が絶望をさらなる色濃くしていく。
では、希望は不必要なのだろうか?
だが、一度絶望を知ってしまえば辺りは希望に満ち溢れたものになる。
ただしその希望は絶望を乗り越え希望を掴もうとして初めて手に入る。
希望は人生を前に進めるために。
絶望は傷ついた分だけ周りに優しく出来て、
それが自分に還ってくるためにある。
そして今日もまた、絶望を抱いた天使が地上に舞い降りた。
『ハァッハァア!ぶち殺すぜ、オラァ!』
『助けてやった恩も忘れて、そんな目を向けやがって!テメェらは誰のおかげで生きてると思ってんだ?ぁぁああん?誰が築いてやった平和だよ。
俺らが築いたんだからそれをどうしようが俺らの勝手だよなぁ!』
そう言って自動小銃を辺り構わず撃ちまくる。
逃げ惑う人々。
何もない所で足がほつれて転ぶ。
あれってなんなんだろうね?
そうして逃げ惑っていた2人の親子の母親に弾丸の一発が命中した。
腹辺りの服が血で滲む。
「しゃがみなさい!」
小さな声でしかしハッキリと。
「ママ?」
「今、くふっ、お母さんの血を塗る。
そしたら遠くに逃げて疲れたら寝転ぶのよ!
わかった!?」
「イヤぁぁぁぁぁああああああああああお母さぁぁぁああん!!」
「大丈夫、大丈夫だからね?生きて?お願い。
あなただけでも。ね?ママは大丈夫だから。」
辛いとても辛い。
意識は朦朧とし像は歪む。
(でも、この子だけでも!この子だけでもなんとか。)
「お願い。ね?」
「早く行きなさい!!」
ス、パァーンと頬を張る。
「お母さぁぁぁぁぁああああん」
私は泣いた視界が歪むほどに。
でも走った。とにかくひた走った。
顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。手足は血まみれ。
頬にはビンタされた跡。
ただそのじんじんと痛む肌が前へ前へ遠くへ遠くへと先導していく。
引き返すなそう訴えているようで。
走る―走る―走り続ける。
今まで走った事などない距離を走る。
もう疲れた。
その気持ちが頬のジンジンとした痛みとバトンタッチして私は民家の間のゴミ捨て場に体を放った。
そこで事切れた。
―
目覚めた私は国防隊(前:自衛隊)に保護されていた。
急いで体を起こした。
近くで様子を見ていた人に話かける。
「お母さんは?」
「まだどのご遺体が誰なのか判別していません。
身元確認には1ヶ月を要します。」
「お母さんは?」
また、同じ質問。
だがニュアンスが異なっていた。
まだ、言語能力が充分ではない。
それに意識が錯乱していたため、そして早く会いたいがため同じ聞き方になってしまったが。
母は生きているその前提で再度質問した。
それを感じ取った衛生兵は。
「残念ながらあの場に生存者は一人も……。」
「そん…な…。」
「お母さん?」
涙がボロボロとこぼれ落ちる。
私はこの日母を亡くした。
その理不尽な現実を叩きつけられた。
怒りはなかった。
ただただやるせなかった。
悲壮感だけが残った。
私はこの日これ以上の絶望などないのではないのか?
そう思えてならなかった。
そして、私の希望を掴む物語が始まった。




