【1】
物心ついたころからよく死にたいと思う様になった。
そんな生き方をしてきてたので特段なにかに熱中したりすることは残念ながら?なかった。
勉強で目を見張るものはなかったし、恋愛も「多輝君優しいから他にもっと素敵な人と巡りあえるよ。」そんな風に遠回しにやんわりと断られるそんなちっぽけな存在だった。
でも運動に関しては少しだけ出来る方だった。
小さなころから喘息だったため心肺機能を鍛えるために水泳をやらされていた。
途中から友達が出来て自分から楽しくやっていたがしばらくすると疎遠になった。
そんな少しだけできる運動も受験前の勉強に集中によって段々と体力が失われつつあった。
そんな時ふと思いだした。
小さなころテレビで見たあの憧れの舞台を。
そしてそこからその舞台を目指す事を心に決めこの学校に入学したのだ。
◇◇◇◇◇
俺は何故生きているのか?
そんな事に目が向く様になってしまった自分にとっての人生のターニングポイントである、とある事件。
そこから人生はガラっと変わり果ててしまった。
今まで憧れてきた正義の存在とはなんだったのか?
それは血に塗れた存在以外の何ものでもなかった。
それが今なお自分の脳裏を蝕んでいく。
{脳内}
「お前がころしたんだろッ!」
「違う。」
「いいやお前が殺したんだッ!
お前がッ!お前が殺したんだよ!」
「違う。」
「じゃあ誰がやったって言うんだよ。
言ってみろよ!」
「違う、俺じゃない。」
「お前以外誰がいるんだ!」
「違う。違うんだ俺じゃないんだッ!」
「お前が殺したんだッッッッッ!」
脳内で繰り返す。繰り返す。繰り返す。
地獄は治らない。
地獄に魘され、現実が改変されて身体が思う様に動かずエラーを繰り返す。
「違う!俺じゃないんだ………」
そう力なく発生する。
このままでは思考の袋小路だそう思い逆を行ってみる事にしてみた。
{脳内}
「お前が!お前が殺したんだろ!」
「そうだ何か問題でもあるのか?」
「やっぱりな。ほら自分で認めたじゃないか。
この人殺しめッ!お前は人を殺したんだ。」
そのYESとNOを繰り返すうちにYESの方がNOより幾分かましであると気づき自分の心が砕け散らないようにその時から黒也は虚勢を張る様になったのは。
自分からそう望んでなった訳ではない。
心が今までの自分をよしとしなかったのだ。
◇◇◇◇◇
「何故こんな簡単な事も出来ない!
お父さんがお前と同じころはもっと上手くやった。だからお前に出来ないはずはないんだ
それなのに何故やらない?
何故出来ないんだお前は!」
昇進してからの父は変わった。
今まで優しかった顔の面影は消え、目が険しくなって怒りぽくなった。
母にも教育方針でよく当たる様になった。
家庭の雰囲気はどんどん悪くなる一方だった。
そんな時私に魔剣士としての才能がある事が分かった。
父は喜びに沸き母は心配した。
「お前もそこで成果を挙げてこい。」
「でも、あなた私は心配だわ。
最近でこそ軍民両用や経済に活路が見出されたけれどもやっぱり軍事的側面、暴力であることは否めないし。
何より事故が心配よ。
もっとよくこの子に判断材料を与えてじっくり考えさせるべきよ。」
「お前の方こそ分かっていない。
この階級社会でそれを挽回出来るチャンスなんだぞこれは。」
「でも………」
「やれるよな蓮華?」
「うん、私頑張る!だから、ね?ね?喧嘩はもうしないで…」
「喧嘩じゃないさ。議論さ。少し解決策を出すのに力み過ぎただけさ。お前が心配する様な事じゃない。」
「うん。わかった…。」
この日、蓮華は誓った家庭の平和のために頑張る事を。
そしたらまたあの笑顔溢れる家族写真に再び光が差し込むと信じて。