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命の水の満つる夜に  作者: 中川聖茗
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第八章

 信恵は、李から、医学部進学を決めた時の、そんなエピソードを聞かされて、ひどく驚愕したのを覚えている。

「全く私とは違う人生」同じ東京で、同じ時代を過ごしていたのに、全く別次元の空間を生きてきた人がいた…。信恵は自分の人生に思いをはせた。ーしかし記憶にあるのは、ひたすら受験であった。この社会の矛盾、民族差別、貧困、そんな事とは全く無関係な人生だった。

 彼女はお嬢さんとして育った。母親は代々の開業医で、父親は国家公務員だった。お金には不自由はなかった。

 しかし、物心がついたころにはすでに受験競争の嵐の中にいた。父親は有名私学出身ではあったが、東京大学出身者が多くを占める、国家公務員の世界でひどく肩身の狭い思いをしていた。

「娘は東京大学へ行かせる」これが彼の信念だった。母も医者とは言え、私学出身で、医師会の付き合いなどでは、国立大学出身の医師からは何となく距離を取られている自分を感じることが多く、父親のそんな教育方針に異議は唱えなかった。

 小学校入学前から塾通いだった。親の期待に応えて、信恵はよく勉強した。とても従順な子だったのである。加えて成績も優秀であった。

 高校2年のころには、東京大学理科三類(医学部)進学が彼女の目指す進路になっていた。


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