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命の水の満つる夜に  作者: 中川聖茗
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第二十三章

 こうして過去の感傷に浸っていた李であったが、信恵の言葉に、現実に戻された。

「李君、私ね、考えてみるとあなたと出会って、あなたの輝きに照らされ勇気づけられ、本当の自分を取り戻すことが出来た。それは、確かに別れは辛かったけど、あなたに悪気があったわけじゃない。そのことはよく分かっているわ。時代がそういう時代だったのよね。私だって、せっかく取り戻した自分を見失ってしまって、無様な結果をもたらした。ーー思うんだけど、私はやっぱり、あなたがいないと駄目、あなたに照らされていないと駄目なんだわ。だから、お願い、また光り輝いて!元気を出して!そして、また私を照らしてちょうだい、私を勇気づけて、私も光り輝かせて!そのためなら私は必死であなたを看病するから、遠慮は決してしないで」

 信恵はそこまで話すと、感極まって泣き始めた。

 李は信恵の言葉にただただ圧倒されていたが、彼女が話し終えると、こちらも知らず、涙ぐんでいた。正直、彼女の愛情のこもった言葉をうれしく思った。

 しかしその反面…。

 心のどこかでは、「今の俺には、そんな愛情を受ける権利はないんだ」と、悲痛な叫びを上げてもいるのである。

 二人はいつしか、共にすすり泣きを始めていた。

 病室に響くモニターの電子音と、彼らのすすり泣きの声は、お互いに絡み合いながら、一つの物悲しい旋律となって、病室の外まで漏れ聞こえるのであった。

 しかし信恵は思いもよらなかったであろう。彼女の思いとは裏腹に、李がこの瞬間、自らの死を決意したのであるということには…。


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