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命の水の満つる夜に  作者: 中川聖茗
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第十四章

 信恵は、李との別れのあと、卒業後の進路をどうするか悩んだ。李との思い出の多い京都に残ることは精神的にもたないと思った。

 かと言って、東京へ帰るつもりもなかった。両親は、彼女が一度は親子関係が疎遠になったと言っても、最後は親元へ帰ると思い込んでいたが、彼女は両親から離れて暮らす、今の自由を手放したくはなかったのである。

 結局、彼女は北海道大学を研修先にして、内科医としての道を歩み始めた。

 2年の研修を順調に終えると、彼女は勤務先として、札幌市内の病院を選んだ。

 李との別れで傷ついた心はまだ癒えてはいなかった。

 そんな時、そこで彼女はある私学出身の男性医師と出会う。仕事熱心で、患者からの評判もよく、勉強熱心で、それでいてお金持ちの家庭の御曹司であったから、看護師ら女子のあこがれの的でもあった。

 そんな彼と、信恵は、交際を始めた。どちらかというのでもなく、何となく馬が合ったのである。

 2年の交際ののち、二人は結婚した。

 結婚式には東京から両親も駆け付けた。もっとも父親は、彼が私大の出身であることに不満足であったが、娘との和解のチャンスでもあり、この婚姻を最後には承認した。

 夢のような新婚生活。彼は優しかった。信恵は李との別れの傷も、これでようやく癒えるのか、と第二の人生のスタートにひどく心を踊らしていた。

 そして、男子誕生…。

 幸せな家族生活…。

 これがいつまでも続くように…。

 しかし、信恵のこの願いは叶わなかったのである。


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