決意
感想まってます
「んぁ。」
おれは顔に当たる日の光で目を覚ました。
うぅ、身体中が痛い。特に左肩。左手もロクに動かないし辛すぎる。
水龍のレーザーに貫かれた左肩の傷は血で固まっていた。
しかも、顔がカピカピする。
おれは手で顔を拭ってみると血が付着していた。
今のおれの姿、色々と悲惨だな。全身血だらけ。
でも、今はそんなことよりも………。
「お腹空いたなぁ。」
昨日は木の実一つしか食べてない。そういえば、おれのリュックはどこだ?
歩くのが辛い。
おれは離れた場所に転がっているリュックサックを発見し、中に入っている木の実を皮ごと食べた。
甘くて美味しいなぁ。こころなしか身体中の痛みが引いていくみたいだ。
あれ?勘違いとかじゃなくて、本当に痛くない。
おれはその場で靴と服を脱ぎ捨てて全裸になる。
肩の傷とか色々あったはずなのに、全て消えている。もしかすると、この木の実には傷を治す力があるのかもしれない。いや、きっとそうだ。
おれは全裸のまま、木の実を食べ続ける。
「ふぅ。ごちそうさまでした。」
満腹。満腹。さっきまで身体に力が入らなかったのに、今は力で溢れている。どこも痛くない!!木の実万歳!!木の実最高!!木の実しか勝たん!!
この素晴らしい木の実に名前を付けなければ。
う~ん、そうだなぁ。薄い緑と黄色のような配色で神のごとき木の実だから、黄緑神実と名付けよう。
食欲という目先の欲が満たされたおれは冷静になって状況を確認した。
この身体、めちゃスタイルいい。ちょっと汚れてるけど、綺麗な身体だなぁ。自分をおかずに自家発電したくなる。しかし、今のおれにあるのは棒ではなく、キレイな縦スジ。えっちだ。
おれは本当に女の子になってしまったらしい。しかもエルフ。
水浴びでもするかぁ~。
おれは汚れを落とすために湖へとダイブした。
ここの水は綺麗だなぁ。ひんやり冷たくて、気持ちがいい。
元は水龍がいたんだよな。この湖を半ばアイツからぶん取ってしまったが、悪いことをした。ここを離れてどこにいってしまったのやら。
さて、もう少し奥の方へと泳いでみようかな。
それにしてもこの湖はかなり広い。
魚もちらほらいる。陸に生き物はいないのに水の中にはいるんだなぁ。
水が透き通ってるから、湖の底の方までよく見える。
おや、湖の最も深い所に鋭い針のようなものがあるぞ。それも結構大きい。
そろそろ陸に上がろう。身体が冷えてきた。
おれは泳いで陸に上がる。
身体もキレイになったな。この黄金の髪も輝いてるぜ。
おれは魔法で風を起こし、身体を乾かす。そして、魔法でタオルをつくり、残っている水分を吸い取った。
その後、新しい服と靴をつくって、着替える。清潔感を取り戻せたようだ。
おれは改めて、ログハウスを魔法でつくる。
やっぱり、まだ疲れが残っているな。腹も満たされて、おれもキレイになったし二度寝しよう。
水龍との戦闘が終わった後、すぐに寝てしまったが、あれはどちらかと言えば気絶だったのでは……。
おれは新しいログハウスに入って、ハンモックに寝転がる。
窓から射し込む日が身体に当たって気持ちいい。
泳いだ疲れもあってか、すぐにまぶたが重くなる。
これでゆっくりと眠れそうだ………。ぐぅ。
グゥ~~
おれは自分の腹の音で目を覚ました。
「ふぁぁぁ~。」
よく寝た。どこもダルくない。
窓の外から眺めると、日はちょうど真上にある。お昼時のようだ。
おれは壊れたリュックの中から黄緑神実を手に取り、食べる。
頭がスッキリした。
二つほど食べ終えたおれは、玄関で靴を履いてログハウスの外に出る。
「んんんんんーー!!」
盛大に伸びをする。風が当たって気持ちいい。
よし、新しい黄緑神実でも探しに行くか。もうあんまり残ってないし。
おれは新しいリュックをつくり、森へ向かって歩き出した。
相変わらず森は静かだ。生き物の気配がしない。聴こえるのは風が通り過ぎる音だけ。
おれは黄緑神実探索を開始した。
探索した結果、おれは黄緑神実を数十個手に入れた。
これで暫くは大丈夫だろう。
今度はきちんとログハウスの方向を覚えているから、飛行魔法を使わなくてもよさそうだ。
そういえば、水龍はこの魔法のことを力理外法とか呼んでたけど、今のおれにはよくわからん。使えるものは使うだけだな。
そうだ!!まだ日もあるし、この前空を飛んでいる時に見つけた遺跡にでも行ってみようかな。
おれは今、万能木の実─黄緑神実の採取を終えて、リュックを背負ったまま飛行魔法で空を飛んでいた。
初めて飛行魔法を使ったときに見つけた遺跡へ向かうためだ。
水龍はおれが魔法で発生させた竜巻を切るときに、水のレーザーをぶっぱなしていた。
遺跡に当たっていなければいいが……。なんだか、レーザーで森を穿った溝の先に遺跡はあった気がする。
「う~わ」
遺跡にレーザー直撃しとるやんけ。
遺跡に到着したおれは自分の嫌な予感が当たっていたことを知る。
遺跡は丸いドームのような形をしており、その周りに石の柱がいくつも並んでいる。
東京ドームよりは小さそうだ。
遺跡は水龍のレーザーを浴びて真っ二つになっていた。
溝が深そう。落ちたら怖いな。
レーザーが当たった付近の遺跡は崩れている所が多く、今にも破片が落下して来そうで危なっかしい。素直に入り口から入った方がよさそうだ。
水龍のやろうは今度、会ったらしばく。
水龍と戦っていたときのおれは何故か殺伐とし過ぎていた。エルフに転生したとはいえ、おれの中身は日本人だ。それなのに、いきなり生き物を殺すなんて覚悟ができてしまうとは……。
それがおれの本性なのか?それとも死にかけている中であんなことを思い出してしまったからだろうか?
少し怖いな。この魔法の力と自分自身が。
異世界に転生し、強力な力を授かる。
同じような境遇のやつらもこんな気持ちになったのだろうか……。
うじうじ悩んでいても仕方がない。怖いのは知らないからだ。魔法の力と自分自身を。
知っていこう。魔法の力と自分自身の事を。
異世界に転生し、今はなんの目的もない。時間はきっとたくさんある。
知って、知って、知り尽くして、いつかこの魔法の力と自分自身を完全に掌握しよう。
と、決意を固めたところで入り口に到着。
おれは遺跡の入り口の中を見た。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。そんな言葉もあったな。
遺跡もおれを見ているのだろうか。
今さら弱気になってどうする?さっき決意っぽいのは固めたはずだろ。おれは水龍と、ドンパチやって生き残ったんだぞ。今さら恐れることなど何もないはずだ。
おれは遺跡の中へと足を踏み出した。
遺跡の中は日の光は届かずに真っ暗となる………訳ではなかった。
遺跡の奥へ進むにつれて日の光は少なくなるが、遺跡の床や壁が淡い緑に発光している。
異世界物語で主人公がダンジョンに潜るとき、真っ暗で何も見えないのでは?っていつも思っていたが、どこのダンジョンもこんな感じなのだろうか?
おれは奥へと進んだ。
壁には様々な模様や絵が描いてある。
人がドラゴンと戦っている絵。
人々がなにかを崇めている絵。
人同士が争っている絵もある。なにかを奪い合っているのだろうか?
おや、この絵はエルフに見えるな。耳が長いし。おれとお揃いだな。
動物の耳が生えている人の絵もある。獣人ってやつだろうか?今さらだが、この異世界で日本語は通じるのだろうか?いつか会ってみたいが、言葉が通じないのは悲しいな。
先へ進もう。
目の前に分かれ道が現れた。3つに分かれている。
左と中央の道は少し明るいが、右は相変わらずの淡い緑だ。
少し明るい左の道を進んでみよう。
おれは分かれ道を左に曲がって、進んでいった。
道を進むにつれて壁や床の発光は小さくなり、少しずつ明るくなってくる。
おや、これは………行き止まりのようだ。
遺跡が崩れて、先に進めない。
水龍のレーザーのせいだろうか?それとも老朽化?
崩れた遺跡の合間から日の光が差している。
どうしようか?魔法で瓦礫を退かしてもいいけど、道はまだ他に2つもある。ここは引き返して、他の道を進もう。
おれは来た道を引き返して、さっきの分かれ道へと戻ってきた。
左の道が少し明るいのは日の光が入っていたからだったのか。ということは、中央の道も行き止まりなのだろう。
なんだか、行き止まりのような気がするなぁ。左と似たような感じだし。それなら、右へ進んでみますか!!
おれは分かれ道を右に曲がって進むことにした。
同じように床と壁が淡く発光しているが、絵や模様の内容はどれも違う。似てるのはちらほらあるけど。
遺跡鑑賞って結構楽しいな。歴史の先生たちが夢中になるのも分かる気がする。
おれは右の道を進んでいく………。
目の前に地下へと続く階段が現れた。
どんなことでもいいので感想もらえるとうれしいです