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TSエルフになったので、弟子にその力を見せつけたい  作者: Yu
おれはこいつに見せつける
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湖の森─フェイル神龍湖に位置するグランディア聖盾騎士帝国軍本部の仮設テントでは、指揮官であるアルバードが一人の老人に詰め寄っていた。


「博士!!一体貴方は何をしたのですか!?」


その老人─トバイコブ博士は不気味に笑いながら答える。


「ひょっひょっひょ。苗床に種を送ったまでよ。」


「『ディアボロスコア』と仰っていましたね。そのボタンでラムルスへ転送したのですか?」


アルバードはトバイコブ博士の手に持つ黒いボタンを指しながら尋ねた。


「その通りじゃよ。」


「『ディアボロスコア』とは……」

「「うがぁぁぁぁぁ!!」」

「「ぎゃぁぁぁぁ!!」」



突如、アルバードの手に持つ連絡石からけたたましい悲鳴が鳴り響く。その連絡石のチャンネルはラムルスの町へ先行した魔導生体戦車に搭乗する兵士達が持つ連絡石に繋いでいた。


「どうした!?」



「やはりそうなったようじゃのぉ。」


連絡石へ問い掛けるアルバードにトバイコブ博士が答える。


「先程転送した『ディアボロスコア』、あれは人の血肉を養分として発芽する。」


「ディアボロス?」


「古の魔神じゃよ。『ディアボロスコア』はそのレプリカを生み出す核と言った所かのぉ。そうして生まれたアレは魔導生体戦車に乗る兵士を核として新たな魔神を生み出すのじゃ。いずれソレすらも取り込み、かつての古の魔神に近づいていくじゃろうのぉ。魔導生体戦車はそのために存在するんじゃ。」


博士は白ひげを触りながら、魔神となった魔導生体戦車を映す立体モニターを杖で示した。



「では、魔神の核となった兵士達はどうなる?」


アルバードは博士を険しい表情で問い詰める。



「知れたこと。魔神の一部に消えるわい。」


「指揮官は俺だ!!今すぐ魔神を停止させろ!!」


博士の言葉を聞いたアルバードは声を荒げて博士に詰め寄るが、博士は子供を諭すように言った。



「戦争で人が死ぬのは道理じゃろぉ?戦死した兵には二階級特進を与えればよい。」


「あの兵器を利用することにしたのは、それが一番犠牲が少なくなると思ったからだ。」


アルバードは真っ直ぐに自分の意思を伝える。


「犠牲を必要とする魔神に頼らずとも、この戦争には勝てる。俺はそんな犠牲前提の方法は取らない。」



それを聞いた博士はため息をついて近くの椅子に腰かけた。


「本当に何も知らないんじゃな。」


「なに?」


「グランディア聖盾騎士帝国にとって、フォレスティア森調王国のような辺境の国が必要だと思うか?」


「必要だから俺たちはここに来たんだろう。フェイル神龍湖は未知の資源の宝庫だ。」


「確かにそうじゃな。じゃがそれはグランディア聖盾騎士帝国の支配に抵抗する『あの大国』を攻撃する兵力を割いてまでやることかのぉ?」


「そ、それは……。」


「分からんのなら教えてやろう。この進軍の本当の目的は魔神を我が国の戦力にする為の実験じゃよ。こんな辺境の国なら、『奴ら』の目を掻い潜るという意味でもうってつけじゃった。」


「な!?」


「これは『聖盾会』の意思じゃ!!」


博士は懐から取り出した書状をアルバードに見せつける。それを見たアルバードは後ろによろけるが、トバイコブ博士は更に言葉を繋げた。


「『聖盾会』からの指示は二つ。一つはおぬしが知った通り、魔神の実験的活用じゃ。そしてもう一つは………アルバード・フィリック、おぬしの死じゃあ!!」


それを合図として、待機する兵士が一斉にアルバードを包囲した。



「アルバード!!」


グランディア聖盾騎士帝国軍指揮官補佐─ギーゼルが声を出すが、トバイコブ博士が杖で制す。


「『聖盾会』の命令はアルバード・フィリックの抹殺のみ。他の奴らは大人しくしておれ。………とはいえ、指揮官たるおぬしを実力でどうこう出来るとは思えん。」


「………博士。」


「じゃからこれを使うのよぉ。」

「!?」


博士がニヤリと笑うと、アルバードがいきなり地面に倒れ込んだ。


「対人魔力阻害結界。その結界の範囲内にいる限りこの腕輪を装着していない者は魔力を奪われ続ける。」


博士は自分の右腕に填めてある腕輪を地面に這いつくばるアルバードに見せつける。アルバードが動けなくなったのを確認した博士はアルバードを見下ろしながら言った。


「仮にも指揮官じゃったおぬしじゃ。死ぬ前にこの戦争の結末くらいは見届けさせてやろう。」


「くっ……。」


「連れてゆけ!!」


身体に力が入らないアルバードが複数の兵士に連行されていくのを横目にトバイコブ博士は他の面々に向かって言う。


「これは『聖盾会』からの指令であると心得よ。抵抗する者は反逆者として処罰せねばならんぞ。」



『聖盾会』その言葉を聞いた者で反抗する者はいなかった。



「アルバード……。」


仮設テントに誰かの声が虚しく響いた。




▽▲▽▲▽▲▽▲




ラムルスの町は無数の魔神に占拠されていた。空は暗雲に支配され、地上からは紫煙が立ち上る。


「クカカカカカカカカ。」


紫炎の渦を吸収し『ディアボロスコア』から生まれた魔神の笑い声が町中に響き渡った。そして、魔導生体戦車の成れの果てである小さな魔神は更なる贄を求めて動き出す。



『紫炎の魔神』は4本持っている腕の一つに紫炎の剣を作り出した。そして、その一振りがラムルスを壊滅させようと繰り出される。


しかし、その一振りがラムルスに振り下ろされることはなかった。



ザン!!


紫雷に直撃したはずの『氷憂』─ジルグヴェルト・ロスト・メラコリヌが『紫炎の魔神』を切り裂いた。無傷・・のジルグヴェルトは身体に蒼いオーラを纏っており、『紫炎の魔神』の剣を身体ごと切断する。


ジルグヴェルトの一振りは立ち込める暗雲を切り裂いて蒼空を見せた。


消し飛ばされた『紫炎の魔神』は紫の炎を伴いながら身体を修復する。



「やはり核を切る必要があるみたいだね。」


「グァァァァァ!!」


『紫炎の魔神』から紫炎の火球がジルグヴェルトに返答として送られた。4本の腕から生み出された紫炎の火球がジルグヴェルトに迫る。


ジルグヴェルトは手に持つ一振りの剣を蒼白く光らせて、紫炎の火球を切断した。その一振りを受けた紫炎の火球は空中で停止した直後に崩れ落ちる。


ジルグヴェルトは2つ3つと紫炎の火球を切り裂いていくが、1つの火球がジルグヴェルトから逸れてラムルスの町へと落下した。


それを見たジルグヴェルトは『紫炎の魔神』への攻撃を中断して紫炎の火球を追いかける。


紫炎の火球は切り裂かれて崩れ落ちるが、その光景を見ていた『紫炎の魔神』がニヤリと嗤った。


『紫炎の魔神』は次々と紫炎の火球を生み出してはジルグヴェルトではなく、ラムルスの町目掛けて攻撃する。


ジルグヴェルトは蒼い軌跡を残した高速移動による斬撃を繰り出し、全ての紫炎の火球を切り崩した。


しかし、『紫炎の魔神』を攻撃しようとすればラムルスへの被害は防げない。ジルグヴェルトは空に浮かぶ『紫炎の魔神』を睨み付けた。


今は攻撃の手が止んでいる。ここで核を切り裂く!!



その瞬間、地上から濁流と化した紫雷の波がジルグヴェルトに襲い掛かってきた。



それを為したのは魔導生体戦車の成れの果てである小さな魔神。小さいといっても『紫炎の魔神』に比べれば小さいだけで、人間からすれば見上げるほどの巨体だ。


紫雷の波を繰り出した小さな魔神─『紫雷の魔神』100体は親である『紫炎の魔神』から指示を受け、紫雷のブレスでジルグヴェルトを一斉攻撃したのだ。



しかし、当のジルグヴェルトは無傷のまま氷の足場の上で佇んでいた。



「グォォォォォ!!」


『紫炎の魔神』は『紫雷の魔神』に直接攻撃するよう指示を出す。


「「「「グァァァァァ!!」」」」


『紫雷の魔神』は空中のジルグヴェルトを取り囲み鋭い爪で攻撃を仕掛けてきた。


四方八方から爪や蹴りが飛んでくる。


ジルグヴェルトは紫雷を纏った爪や蹴りを捌きながらも、まだ余裕があった。


攻撃のタイミングはバラバラで連携が全く取れてない。そして、人間以上の図体故に攻撃の隙が大きく、『紫雷の魔神』の合間を掻い潜って回避することくらい造作もなかった。そして全ての攻撃が自分一人に集中するなら、町への被害は出さずに住民の避難を進めることができる。



一方、『紫炎の魔神』はかすりもしないジルグヴェルトに苛立ちを見せていた。


あの無能共は何をやっているんだ。使えないなら今ここで吸収してやろうか。だが、あの人間に吸収する隙を狙われても面倒だ。



『紫炎の魔神』は人間を取り込んで力を増すべく、ラムルスに向け紫炎を降り注ごうとした。




時間を稼ぐのも限界か。今なら一瞬で仕留められる。



その瞬間、ジルグヴェルトの姿が消えた。


『紫炎の魔神』と100体の『紫雷の魔神』は一斉にジルグヴェルトを見失う。


バカな!?全員で見逃すなどありえない。



困惑する『紫炎の魔神』の背後から声が掛かる。


「こっちだよ。」


急ぎ振り向いた所でもう遅い。そこには既に剣を振りかぶったジルグヴェルトが『紫炎の魔神』の核を切り裂こうとしていた。




しかし、ジルグヴェルトは切り裂くことができなかった。その蒼い剣は『紫炎の魔神』の核を切り裂く寸前で止められていた。



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