ごめん
二人目の感想をいただきました。
うれしかったです
感想まってます
おれのバリアは結構硬いと思う。
さっきも青い球体状のバリアで水龍の全方位攻撃を防ぎきったばかりだ。それを前方に圧縮したんだから、その強度は計り知れないはず……。
結果としておれの一点集中バリアは破られてしまった。破られたといってもほんの数mmくらいだったんだろう。
しかし、とてつもなく圧縮されレーザーとなったその水は、数mmの隙間からバリアを貫通し、超極細のレーザーとなっておれに襲いかかった。
水龍の水レーザーはおれの一点集中バリアにより極細になったとはいえ、その威力は健在。
おれの肩を貫き遥か彼方の雲を切り裂くに至った。
「ぐぅっ」
おれはうめき声を上げて落下する。
青いバリアは消滅し、おれの真上を水龍のレーザーが通過した。
おれはきりもみ回転しながら落ちていき、地面に激突する。
飛行魔法を駆使して落下の威力を少なくできたと思うけど、全身がかなり痛い。
おれは自分の左手が上がらないことに違和感を覚えて、自分の左半身を見てみる。
左肩からは血がとめどなく流れて、緑の服を赤く染めていた。
おれはここで初めてレーザーに貫かれた傷を認識する。
「ぐぁぁ……」
すげぇ痛い。地面に落下した痛みが消えるくらい痛い。
今まで生きてきて、こんな傷負ったことなんて…………いや、あったな。俺は見てないけど、きっとこの傷よりも大きかったはず。
『@#%^&@/@/,`*?/_,』
水龍のヤツがなにか、しゃべっている。肩の痛みで何言ってるか、わからない。
水龍はこちらが虫の息だと思ったのか、最初に飛ばしてきた水の玉を一つおれに向かって飛ばしてきた。
水の玉がやけにゆっくりと見える。あの水の玉は中の水を乱回転させて威力を上げているのか。それに、おれが落ちたこの場所は魔法でログハウスをつくった跡地のようだ。おれの食糧探索の成果である、木の実を入れたリュックは肩をレーザーで貫かれたときに外れたのか、すぐ側に落ちている。
そういや、おれにはハマっていたゲームがあった。
スマホのアプリゲーム。
おれは学校の休み時間、誰ともしゃべらずにそのゲームを一人でプレイしていた。
その日もいつも通り、次の授業の準備を終えたら開始の時間まで、そのゲームで時間を潰す。そのはずだったんだけど………。
「私も、そのゲームやってるよ。」
その日は隣から声が掛かってきた。
おれは自分の時間を邪魔されたことに少しイラつきながら、声の主を見る。
女の子だった。名前なんて知らない。おれは他人に対して無頓着だったから、名前なんて知らないし知ろうとも思わなかった。クラスの連中も同様。
その日は適当に相槌を返すだけでろくな反応をしなかった。
でも、その女の子はその日から毎日話し掛けて来るもんだから、次第にそのゲームの話で盛り上がったりもした。一緒に通信したこともあったな。
日常に段々と色が付き始めて、学校に行くのが少しだけ楽しくなってきた。
こんな日々がずっと続けばいいなぁ。
翌日、その女の子は自殺した。
いじめだったようだ。
おれとゲームで遊んでいるその裏で、その女の子はいじめられていた。
担任からどんないじめに合っていたのかが公表された。
トイレや虫は日常茶飯事。画ビョウを手や足に押し付けられたこともあったらしい。
全く知らなかった。気づかなかった。
自殺するほど追い込まれていたなんて……。
せめておれだけは気づいてやるべきだったんじゃないだろうか……。
あの女の子を死なせてしまったのは、おれの他人に対する無頓着のせい。
そう認識したら足元が覚束なくなり、平衡感覚がなくなった。
担任が何て言っているのか、さえわからない。椅子に座っているのか立っているのか、すらもわからなくなる。
おれは壁に刺さっていた画ビョウを手に取った。
あの女の子がどんな苦痛を味わったのか知っておく必要があると思ったからだ。
おれは画ビョウの針を自分の腕に押し立て、そのまま力を込める。
あぁ、これは………痛いな。
あの女の子はこの苦痛を全身で受けていたのだろう。
あぁ、反吐がでる。何も知らなかった自分に。あの女の子と裏でどんなことがあるとも気付かず、笑っていた自分に。
おれはあの女の子に何をしてやれただろうか?
おれはあの女の子のお陰で、自分の人生にほんの少しだけ価値を見出だせたというのに……。
おれがあの女の子のいじめに気付いて、何かを変えてやるだけの力があったならば……。
結局最後まであの女の子の名前はしらなかったなぁ。
「痛っ!」
なぜ、おれは今、あんな事を思い出す?これが走馬灯か?
おれは自分の体を見た。
おれの手足にはログハウスの残骸である木の破片がいくつも刺さっている。
おれはログハウスの破壊跡であるトゲの草原に座り込んでいたらしい。
おれには自分に刺さった木の破片が画ビョウに見えた。
あの女の子はこんな苦痛を毎日受けていたのかな?
こっちの方がレーザーに貫かれた肩の痛みよりずっと痛い。
気付いてやれなくてごめん。
ここで死ぬんだろうな~って、ゆっくりと近づいてくる水の玉を見ながら思っていたけど、ここで死ぬのは間違ってる気がする。
おれはこんなところでは死ねない。こんな簡単に諦めてしまったら、あの女の子に顔向けできない。
おれはなんとしてでもアイツを殺して生き延びてやる!!
「オラァァァァァァ!!」
おれはログハウスの残骸の中で唯一残っていた柱を魔法で掴み、飛んでくる水の玉目掛けて投げた。
先が折れた槍のような柱は青い光を放って回転し、水の玉とぶつかる。
バァァァァーーン
青い柱の槍は水龍が放った水の玉を突破し、水龍へと迫る。
『そんな物には当たらぬわ!』
水龍は湖の水を操り、水の壁をつくった。
投げた柱はその水の壁を突破することなく、水中で止まる。
今だ!!ヤツに仕掛ける!!
水龍は水の壁をつくったため、こちらの動きはあまりみえないはず。
おれはできるだけ水龍の死角となる場所へ走る。
ほんの少しでもヤツの意識がおれから離れれば!
おれは走りながら考える。
さっきみたいに、風の刃を大量に生み出しても意味がない。ヤツの青い鱗に全て弾かれる。そもそもヤツを仕留めるのに無意味な斬撃を大量に並べたところで意味がない。ヤツを殺すには………
水の壁が崩れて、壁を構成していた水は湖へと還っていく。
大量の斬新なんていらない。首をはねれば事足りる。
「はぁ!!」
イメージを明確にするため、右手を身体の目の前で右に振った。
風を鋭く、速く、薄く!!
風の刃は青い光を纏って、横一文字となり水龍の首へ迫る。
『ッッ!!』
水龍は空中で体勢を無理やり崩し、風の刃を回避した。しかし完全には避け切れずに、水龍の右翼が半分ほど切断される。
避けられたか。だがヤツは翼が切られたことで動揺している。体勢を立て直す前に行動を封じてやる。
『貴様――』
『竜巻よ!!』
水龍が何か言いかけたが、無視してヤツを竜巻の中に閉じ込めた。
直後
ズギュュュューン
竜巻の中から水のレーザーが放たれる。
レーザーは竜巻を切り、森を穿ち、山を切り裂いた。
しかし、竜巻は即座に修復され再び水龍を閉じ込める。
よし、竜巻の風を利用して今度はこっちが全方位攻撃をかましてやる!!
さっきの青い風の横一文字を全方位から喰らいやがれ!!
「オラァ!!」
竜巻の中が青い光で満たされた。
凄まじい暴風と共に竜巻が消えてゆく……。
ツーー
鼻血が出てきた。無理をしたツケってやつか。
水龍はどうなった?
風が晴れてくると、その中からヤツが現れる。
水龍は全身に水の鎧を纏っており、首は切断されていない。だが、身体中傷だらけで血が出ており、水の鎧を赤く染めていた。
首こそ切れなかったが、あの赤い水の鎧で、おれの青い風の刃を完全に無力化することはできなかったようだ。
『よもや、この我にここまでの傷を負わせるとは。しかし、これで終わりだ!』
水龍は赤い水の鎧を纏ったまま、おれに向かって豪速で突っ込んでくる。
くそっ!身体が思うように動かない!!
風じゃ決定打にならない。ここまでなのか………。
いや、まだだ!ヤツが自分の身体を使った、体当たりを仕掛けてくるのなら、おれはヤツの身体に直接魔法を掛けてやろう。
『潰れろぉぉぉ』
おれは右手を前に突き出して、握り潰す動作をする。
直後、水龍は急停止し、身体が団子の様に丸くなり始めた。
その水龍団子は徐々に小さくなっている。
オラァァァァァァ!!このままこの世から消滅させてやらぁぁぁぁ!!
プッ
目と鼻から血が吹き出して視界が赤くなった。
「ぐぁっ!」
いきなり、とてつもない風が発生して、おれは後ろの方へ吹き飛ばされてしまう。
「今のを振り切ったのか……。」
なんと、水龍は今の消滅魔法を振り切り、上空へ退避していた。
しかし、手足や翼、尻尾や角はあらぬ方向へ曲がり、息も絶え絶えだ。水の鎧も、もうない。
『よもや今代の力理外法の使い手にここまでの力があるとは……。』
力理外法だと?なんだそりゃ?魔法じゃないのか?
『今回は退くが、次に合い間見えたとき、こうはいかんぞ。いずれ必ず取り返す、それまでは貴様にこの湖を預けておこう。』
そう言い放つと、水龍はどこにそんな力が残っているのか、かなりの速度で森を通過し、山を越えて見えなくなっていった。
勝ったのか……?
おれは生き残った……。
「はぁ……。」
おれはその場で仰向けになって、意識を落とした。
感想おねがいします(土下座)