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TSエルフになったので、弟子にその力を見せつけたい  作者: Yu
おれはこいつに見せつける
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禍々しい産声



「魔導生体戦車を凍らせたじゃと!?」


グランディア聖盾騎士帝国軍本部仮設テントの立体モニターには氷の結晶に閉じ込められて活動を停止した魔導生体戦車が映し出されていた。


水魔法の派生に氷魔法という物が存在する。


「五大属性魔法による攻撃はほとんど効かなかったような……。」


誰かが呟いたように、最初ラムルスから受けた魔法による攻撃はほとんど意味がなく煙を巻き上げただけで、魔導生体戦車の歩みを止めることは出来なかったのだ。



しかし今、魔導生体戦車はピクリとも動かない。これは五大属性魔法から外れた魔法……


「特異魔法じゃと?」


腰の曲がった博士がモニターを食い入るように見つめる。


「しかし、ただの特異魔法にあれほどの力があるとは考えずらいのぉ。」


博士は白い髭を撫でながら、懐からボタンを取り出した。



「トバイコブ博士。」


白い髭の老人─トバイコブ博士が取り出したボタンを見た、グランディア聖盾騎士帝国軍指揮官─アルバードは博士を呼ぶ。


「そのボタンはなんですか?もうこれ以上町を攻撃する必要はありません。魔導生体戦車を操縦している兵には待機命令を出します。後は被害を少なくするためにも我々が出ますので、博士は何もしなくて大丈夫ですよ。」



魔法の雨

大爆発による紫煙

紫炎の渦


アルバードはこれ以上の虐殺を防ぐため、トバイコブ博士を止めた。



「よし!!それじゃあ俺達も行こうか!!」


アルバードは本部テントにいる他の面々に声を掛けるが………




「いや、それには及ばんよ。」


トバイコブ博士はニヤリと笑ってボタンを押した。


「ディアボロスコア、転送じゃあ!!!」




▲▽▲▽▲▽▲▽



「生存者の救助を急げ!!」


ラムルスの町では、城壁の上にいたお蔭で生き残った兵士、町の外で迎撃していたため地中からの攻撃に巻き込まれなかった騎士達による救助活動が行われていた。



「これは……酷いな。」


魔法の雨により、身体の自由を奪われた状態で燃えている住民。


魔導生体戦車による地中からの爆発で黒焦げになりながらも呻き声を上げている住民。


紫炎の渦に飲み込まれて行方不明になった住民。


紫煙を吸い込みもがき苦しんでいる住民。


そして、住民同士の押し合いによって死んだ住民。



生き残った住民で、騎士・兵士に暴言を吐く者もいた。


お前らがしっかりしないから。


なんで家の子を見殺しにしたんだ。


なんでお前らは無傷なんだ。



現状、住民を苦しめる要因である魔法の雨や紫炎、紫煙は『氷憂』─ジルグヴェルト・ロスト・メラコリヌの魔法により停止している。


しかし、助ける方にとっても、助けられる方にとってもここはまだ地獄だった。



そう、まだ地獄の序章なのだ。




バリバリバリバリ!!


ラムルスの町の上空で雷が鳴る。



「こ、これは!?」


紫炎の渦の結晶の上で町を見下ろしていたジルグヴェルトが空を驚愕の表情で見上げた。


そして、その雷は紫雷となってジルグヴェルトに襲い掛かる。



バガーーン!!


ジルグヴェルトの立っている場所である紫炎の渦の結晶の頂点に天から降り注ぐ紫雷が激突した。



バキバキバキバキバキバキバキバキ!!


紫炎の渦を閉じ込めていた氷の結晶は紫雷によってひび割れた。さらに、その紫雷を吸い取る様に吸収した紫炎の渦は氷の結晶から解き放たれる。



「なんだと!?」


フォレスティア森調騎士団長─アムルトス・パールピアが再び活動を始めた紫炎の渦を驚愕の表情で見た。


『氷憂』─ジルグヴェルト・ロスト・メラコリヌ。フォレスティア森調王国における最強の騎士。


騎士団長であるアムルトスは今までジルグヴェルトの氷の結晶を自力で振り切った存在を見たことがない。例え、外から如何なる攻撃を加えようとも決して壊れることがなかったのだ。



しかし、今破られた。


そして、紫雷が落ちた位置にはジルグヴェルトが立っていた。


あの落雷でジルグヴェルトが死んだことにより、紫炎の渦が復活してしまったのだろうか……アムルトスの頭にはそんな想像が過る。


まずい、あれを止められる者がいない。



しかし、紫炎の渦は町を襲うことなく、その存在を保っていた。




「あれは……?」


紫炎の渦の中心には先程までなかった、漆黒の宝玉が蠢いている。そして、紫炎の渦は徐々にではあるがその漆黒の宝玉に収束しているようだ。



カッ!!


漆黒の宝玉が暗く輝くと紫炎の渦が全て飲み込まれて人形ひとがたを形成する。


鋭い4本の角。


漆黒に輝く3つ目。


鋭利な爪を持つ4本の腕。


背中から伸びる2対の翼。


そして、その胸には漆黒の宝玉が禍々しい紫の光を放っていた。


その風貌に誰しもが『悪魔』という言葉を思い浮かべた時………



「ガァァァァァァァァ!!」


悪魔が吠える。


その咆哮は大地を揺らし、雲を吹き飛ばした。一瞬、太陽が顔を見せるがすぐさま暗雲が立ち込める。


さらに、その暗雲からいくつもの紫雷が氷に閉じ込められている魔導生体戦車へ降り注いだ。



バリバリバリバリ!!


全ての魔導生体戦車が帯電して紫雷を放つ。一瞬にして氷の結晶から解き放たれた魔導生体戦車はその車体を歪に歪ませていった。


そして、禍々しい光の中から姿を変えた魔導生体戦車が現れる。その姿は………『悪魔』。紫炎の渦から現れた存在よりも小さく、角や腕は2本で翼は1対しかないが、それは紛れもなく『悪魔』だった。



「「「「「グォォォォォ!!」」」」」


紫炎の渦から生まれた悪魔の親玉は、魔導生体戦車の姿を変えて生み出した悪魔の軍勢を率い、ラムルスの町で禍々しい産声を上げた。



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