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TSエルフになったので、弟子にその力を見せつけたい  作者: Yu
おれはこいつに見せつける
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耳ピコピコ



ここかな?


おれは教えてもらった宿に着いた。


なんか和風っぽい宿だな。リラックス出来そう。


おれは宿の扉を開けて中に入る。


「いらっしゃいませぇ~。」


カウンターには気の抜けた声を出したエルフがいた。


「宿に止めてほしいんですが。」


「はい、は~い………って、ええ!!」


なんだか凄く驚かれた。商人のおじさんと一緒にいた女のエルフにも驚かれたな。


おれは取り敢えず商人のおじさんにもらった白いカードを見せた。


「おお!!これはかなりのお得意様カードですね。半額でいいですよ。」


かなり得をした……のかな?やっぱりあのおじさんを成り行きとはいえ、助けてよかったっぽい。



────────────────────────



おれはアテリーと森を歩いていた。


銀髪の少年─アテリーはおれと手を繋ぎたいと言ってきたので、おれはアテリーの手を握って歩いている。


森に木の実が成ってないか探しているのだ。


おれのアイテムボックスの指輪には湖の森─フェイル神龍湖で採った万能木の実─黄緑神実がたくさん入っている。食べれば怪我とかが治る優れ物だ。こればっかりに頼ってるとあっという間になくなりそう。


おれは森をブラブラしながら食べ物を探した。




………なかった。遂に森を出てしまった。空を飛んで、上から探そうかな……



「ブモォォォォォ!!」


あ、牛肉みっけ。


おれは風の刃を飛ばして牛の首をはねる。


こいつ前にも見たことあるけど、なんで牛が二足歩行して斧持ってんの?どこで拾ったんだよ、その斧。


おれは牛肉を回収しに向かう。今日は肉だな。アテリーに焼いてもらお。


声を出して驚いているアテリーは火魔法を覚えたのだ。



「あんた達は………。」


おや、牛肉の近くに人がいたみたいだ。肉しか見てなかった。


男の人がいた。結構傷だらけだ。


頭から血を流して気絶してる女の人を抱き締めていた。


あ。この女の人、エルフだ。耳が長い。




「だ、大丈夫か?」


近くの馬車から小太りのおじさんが出てきた。


「あの化け物を倒したのか!!」


「いや、偶然通りかかったこの人達が倒してくれたよ。」


女のエルフを抱き締めている男が答えた。


「こんな子供達が………。一体どうやって?」


おじさんは年食ってるから、おれも子供に見えるのね。このエルフの身体は16歳くらいだと思うんだけど。


「わからない。殺られると思ったら、アイツの首が飛んでいた。」


「なるほど……魔法か………。」


小太りのおじさんがおれに向き合った。そして、僅かに目を見開く。


「本当にありがとう。きちんと礼をしたいが先にクローネの手当てをさせてくれ。」


クローネというのは頭から血を流しているエルフのようだ。白い髪が赤く染まっている。


後で起きたら木の実でも上げようかな。万能木の実─黄緑神実。


小太りのおじさんは懐から緑の液体が入ったビンを取り出すと白髪のエルフ─クローネに振りかけた。


「よし、クローネを馬車へ。」


クローネを抱えて男の人が馬車へと向かう。かなり大きい馬車だな。高そうだ。


それにしても、さっきの液体はなんだろう?



「では改めて。私は王都セレモニアで商売をしているハルマンと言う者です。あなた方が助けてくれなければ私は危うくあの二人を失う所でした。誠にありがとうございます。」


「通りすがりの森の魔女。リーフィリアよ。」


おれは神秘的なエルフモードで自己紹介する。


「僕はアテリーです。」


アテリーもおれに続く。


「魔女……ですかな。なるほど……道理で………。」


商人のおじさん─ハルマンは一人で何か納得した。


「ところで、あの魔物の死体はどうするおつもりですかな?」


「今日のご飯にする。」


おれは素直に答えた。


「そ、そうですか。よろしければ私どもで食事をご用意しましょうか?」


「ご飯くれるの?」


「ええ。助けてもらった手前、お代はいただきません。それで、よろしければあの魔物の死体を私にお売り下さいませんか?勿論、色は付けさせていただきます。」


「いいですよ。ご飯くれるなら。」


そもそもあの牛があった所で、調理するのめんどくさいし。


「ありがとうございます。それでは、傷んでしまいますので、先に収納させていただきます。」


そう言うと商人のおじさん─ハルマンはカバンに大きな牛の魔物を入れた。


「それって……。」


「収納魔法がかけられているカバンなんですよ。」


おじさんのはカバン型なんだ。


「それでは、私の馬車へ案内いたしましょう。」





馬車の中には沢山の荷物があった。あとは、部屋がいくつもある。


おれとアテリーは一つの部屋に案内された。



「それでは、こちらがマスカルミノタウロスの代金となります。」


商人のおじさん─ハルマンは大量の金貨が詰まったデカイ袋を渡してきた。


おれは取り敢えずリュックに入れておく。


「ところで、リーフィリア殿とアテリー殿はこれからどこへ向かう予定なのですかな?」


「特に決まってない。」


「でしたら、一緒に王都まで行きませんか?」


王都か~。どんなところだろう。


「はい。よろしくお願いします。」


王都行ってみよ。


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


そう言うとハルマンは懐から白いカードを取り出した。


「王都に滞在するのでしたら、こちらをお持ち下さい。私の商会はそれなりに大きいので、色んな方面に顔が利くのですよ。」


ほっほっほ、と言いながらカードを渡してくる。


金属のような白いカードに匠な模様が描かれている。なになに………ライダース商会と大きく彫ってある。おれは文字の勉強によって、少しずつ読めるようになってきたのだ。


「それでは、リーフィリア殿に泊まっていただく部屋へご案内致します。」


ハルマンは立ち上がって部屋を出ようとする。



「さっきのエルフの人、大丈夫かな……。」


アテリーが溢した言葉に部屋が静かになる。


確かに、おれも気になってた。


「リテュエル液を使ったので大丈夫だと思いますよ。」


ハルマンがアテリーに答えた。


「リテュエル液?」


「ええ。希少なリテュエル草からつくられた回復薬です。」


おれの質問にハルマンが答えてくれた。商人って言ってたし、色々と知ってそうだ。


「先に様子を見に行きませんか?」


おれは提案した。


「そうですね。ありがとうございます。」


ハルマンは微笑んだ。





おれ達は一つの部屋の前に来た。


コンコン


商人のおじさん─ハルマンが部屋の扉をノックする。


「私だ。入るよ。」


おれ達が部屋に入ると、白髪のエルフ─クローネはベッドから起き上がっていた。クローネを抱えていた男はベッドの隣の椅子に座っている。


「ハルマンさん……。」


「クローネ、怪我はどうだい?」


「大丈夫です。もうなんともありません。私のために希少なリテュエル液を使わせてしまって………。」


「気にしなくていいんだ。クローネが無事なら、なんともないよ。」


クローネがおれの方を見た。


「えっ?!」


そして驚く。


「ご、ごめんなさい……。助けてくれてありがとうございます。」


これが現地エルフと初対面。


「通りすがりだっただけだから、気にしなくていい。」


おれはずっと前から決めていたエルフの挨拶をすることにした。



ピコピコ、ピコピコ


長い耳をピコピコ動かす。



「っ!!」


白髪のエルフ─クローネは顔を赤くして俯いてしまった。


あれれ?なんか思ってたのと違うな。向こうも耳をピコピコして、返してくれると思ったのに……。


おれは少し悲しくなった。


「リーフィリア殿、エルフ同士の交流で目を合わせながら耳を動かすというのは………」

「俺達を助けてくれてありがとうございました!!」


商人のおじさん─ハルマンが何か言いかけたが、それを遮るようにして、クローネの側にいた男の人が声を出した。


「あぁ……うん。間に合ってよかったよ。」


おれは野郎の礼は耳に入らなかった。耳ピコピコの挨拶が通じなかったことの方が悲しい。




おれ達は王都へ向けて出発した。


その後は何事もなく王都セレモニアに到着。




そして、やる気のなさそうな接客から一変して、騒がしくなった宿屋のエルフに会ったのだ。



────────────────────────



「いやぁ、中々楽しかったね。」


「ああ。この遺跡には未知の技術が取り入れられているようだ。解析すれば更に我が軍の力は増す。壁画や石像もとても興味深かった。」


「だがよ、目ぼしいものはそのメダルくらいだったな。」


フェイル神龍湖にある古代遺跡から三人の男が出てきた。


グランディア聖盾騎士帝国軍指揮官─アルバード。


グランディア聖盾騎士帝国軍指揮官補佐─ギーゼル。


そして、グランディア聖盾騎士帝国軍の物資輸送を担う男だ。






「遅い!!!」


三人が指揮官本部の仮説テントに入った瞬間大きな声が鳴り響いた。


「いつまで僕にこんな役目を押し付ける気だよ!!それで古代遺跡に遊びにいくとか信じられない!!」


指揮官の椅子に座っている少女がわめきたてる。


「悪かったって。それに遊んでた訳じゃない。調査だよ。」


アルバードが悪びれて謝る。


「なんで僕がこんなことやらなくちゃいけないのさ。アンタの仕事だろ!!」


この緑髪の小柄な少女はグランディア聖盾騎士帝国軍指揮官─アルバードとグランディア聖盾騎士帝国軍指揮官補佐─ギーゼルが古代遺跡へ行くため、指揮官代理に立てられたのだ。



「僕も行きたかったのにぃ。」


拗ねる緑髪の少女。


「お前はこの軍の要だし、連れていくわけにはいかなかったんだ。遺跡の話でもしてやるから拗ねるなよ。」


「ぶーー。」


アルバードが宥める。


「それじゃあ、早速で悪いけど、魔術解析技術班を呼んでくれるかな?調べさせたい物があるんだ。」


「なに?」


緑髪の少女が尋ねる。


「これさ。」




アルバードの手には不思議な模様が描かれているメダルがあった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。あんまり感想投げると先の展開を歪めたりしそうな気がするので最近は黙ってますがちゃんと見てます。 [気になる点] 現地エルフに耳ピコジェスチャーの文化あるんだね 意味はただの挨拶…
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