慟哭
銀髪の男
兵士部隊隊長─ギルム
魔法部隊隊長─ナターシャ
場は静寂に満ちていた。
「リーフィリアというエルフはどこにいる?」
男が静寂を破る。
「またそれか。」
ギルムが応えるように吐き捨てる。
「どういうこと?」
「奴は先程から再三同じ質問をしている。」
ギルムがナターシャに答えた。
「なんでリーフィリアさんを?」
「分からん。」
「そっちの女は知っている様だな。」
銀髪の男はナターシャと目線を合わせてくる。
「言え……どこにいる?」
「あなたに教えるつもりはないわ。」
ナターシャが力強く返す。
「リーフィリアという者はこの町にとって余所者だろう?何故そこまで庇う?」
男は呆れと苛立ちを混ぜ混んだ様に問い掛けた。
「確かにそうね………。」
「ならば……」
「でも、あなたには死んでも教えないわ。」
「そうか……。」
男の顔が月明かりの逆行で見えなくなる。
「ならば殺してでも教えてもらおうか!!」
男は目を赤く光らせながら、ギルムとナターシャの二人に疾走する。
「ギルムさん!!少しだけ時間を稼いで下さい。」
「分かった!!」
兵士部隊隊長のギルムが魔法部隊隊長─ナターシャを庇うように前に立った。
ギルムは魔力による身体強化と雷属性魔法による身体活性を用いて男へと迎え撃つ。
大鎌と剣、互いに撃ち合う。
男は大鎌の長いリーチを活かして、ギルムの剣の間合いの外からその命を刈り取ろうとする。
ギルムは剣の負担にならない様、大鎌の威力を受け流して時間を稼ぐ。
「なかなかやるな。」
ズゴォォ!!
男は血の大鎌から赤い斬撃を飛ばしてくる。
これは受け流せない!!
しかし、回避してしまえば後ろのナターシャに直撃する。
ギルムは覚悟を決めた。
身体強化と身体活性を最大限に発揮する。ギルムの身体から青い稲妻が迸った。
「はぁぁぁぁ!!」
ザンッッッ!!
ギルムは赤い斬撃を切り裂いた。
切り裂かれた斬撃の残骸はナターシャには当たらず、後ろの民家へとぶつかる。
しかし、その代償は大きく。
剣は半ばから折れ、
無理な身体強化による出血、
斬撃を切った際に受けた切り傷、
そして……
地面に落ちた右腕。
「ぐぅ……。」
ギルムが痛みに顔を歪める。
「終わりだな。」
目の前に一瞬で移動していた男はギルムに強烈な蹴りを食らわせる。
ギルムは吹き飛び民家に激突。瓦礫の下敷きとなった。
「ありがとう。ギルムさん。」
よく響いたナターシャの声。
男の足元が底無し沼へと変わる。
「これは……。」
「まだよ!!」
四方八方から現れる濁流が男を呑み込んだ。
巨大な土の柱も流れ落ちていく男を抑え込むように次々と現れては男へと向かっていく。
「終わりだぁ!!」
満身創痍のギルムが青く光っている折れた剣を男が落ちた沼へと投げ込んだ。
全魔力を込めた雷の剣。
ドコォォォ!!
雷による爆発が沼を覆う。
ナターシャは濁流と土の柱を操り、爆発の威力でさえも沼に押し込んだ。
力を使い果たしたギルムはその場で気絶する。
「はぁ、はぁ。」
ナターシャも肩で息をしていた。
「ギ、ギルムさん……?」
ナターシャは覚束ない足取りでギルムの安否を確認しにいく。
「大丈………」
ドスッ!
「………夫?」
コプ……。
ナターシャの口から血が出る。
ナターシャの腹部から手が生えていた。
「え?」
「悪くはなかったが、私には通じない。」
男の右腕がナターシャを貫いていた。
「リーフィリアというエルフはどこにいる?」
「屋敷を出たっきり………戻ってないわ。」
ナターシャは目を虚ろにして従順に答える。
「町を……探したのだ………けれど、見つけ……られ………なかった……わ。」
ナターシャは口から血が出ることも厭わずに答え続ける。
「この町には?」
「もう………いないと……思うわ。」
「………そうか。」
男はもう用はない、とばかりにナターシャから手を引き抜いた。
ナターシャは地面に崩れ落ちる。
「…………え?」
その光景を金髪よりの茶髪を持つ小さなメイドが目を見開いて目撃していた。
「ナターシャ……さん。」
地面に倒れているナターシャからおびただしい量の血が流れている。
その惨状を引き起こした当人の男は町から去ろうとしている。
「待て。」
小さなメイド─セリアは男の背に水魔法を放った。ただの水魔法ではない。五大属性魔法から外れた特異魔法の力を込めている。すなわち、その水は薬、毒、未知の成分が含まれているのだ。
セリアが放った水魔法は男に当たる事はなかった。当たる直前に空中で停止し、地面に落ちる。
セリアの水魔法がこぼれ落ちた地面はドロドロに溶解した。
「お前は!!私からまた奪うというのか!!」
セリアは当たらない事など気にせず、男へ攻撃し続ける。
しかし、男にはかすりもしない。
代わりに民家や歩道、町が溶ける。
「そうか………お前が……。」
男はそこで初めてセリアを見た。
「鬱陶しいな。」
男がそう言うと、セリアは吹き飛ばされて壁にぶつかった。
「私に遊んでいる暇はないんでね。」
男は背中から赤い羽を出すと、闇夜に消えて行った。
「殺してやる!!」
地面に倒れながら男が消えた方向にセリアが叫ぶ。
「地の果てまで追いかけてでも、絶対に殺してやる!!」
少女の慟哭が夜に響く。
その夜は赤い月だけが浮かんでいた。
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「私です。」
一人の女が通信石に語りかける。
『なんだ?お前か……。』
通信石からある男の声が響いた。
「ラムルスの町にヴァンパイアが出現しました。相当強力な個体です。」
『なんだと!!』
通信石の向こうにいる男は考え込んでいるのか、音がなくなる。
『くくく、俺の方でも調べてみるとしよう。よもや、器に足る存在をこんな形で知ることになるとはな………。』
「はい。」
『くくく、お前は本当にいい拾い物だったようだな。■■■。』
「全てはエムヴァリアス様の為に………」
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