明日は町に出掛けよう
あれから3日が過ぎた。
朝食を食べたら、庭で銀髪の少年─アテリーの魔法を見る。
それから、この屋敷の主である魔法部隊隊長─ナターシャと世間話でもしながら昼食を食べる。
その後は一人で文字の勉強だ。文字の勉強に付き合ってくれていた金髪よりの茶髪を持つ小動物メイド─セリアはあれ以来よそよそしくなり、おれには付き合ってくれなくなった。セクハラして泣かせたのがまずかったのだろう。
それが終わったら、庭で魔法の練習に励んでいるアテリーを回収して夕飯を食べる。
食べ終わったら、お風呂に入って寝るというサイクルだ。
おれは半年の間、朝日と共に起き、日が沈んだら眠るという生活をしてきたから夜更かしは出来ないのだ。
「いよいよ明後日は魔法部隊の入隊試験があるわ。」
夕飯を食べていると、黒よりの青い髪を持つ魔法部隊隊長のナターシャが話しかけてきた。
「明日から町の外で暮らしている人たちが町に入ってくるの。」
それはまた治安が悪くなりそうだな。
「そのためにも警備が普段より厳重になるわ。」
兵士の皆さんは大変そうだなぁ。そういえば、おれを詰所まで連行したひげ面おじさんは元気にしてるだろうか?
「ねぇ?リーフィリアさんは受けてくれる気になった?」
「私はいいよ。」
おれは神秘的なエルフモードで答えた。
「アテリーはどう?いっとく?」
おれは隣でスープを飲んでいるアテリーに聞いてみた。
「僕は……やってみたいです。」
「へぇ~。」
「今の自分の力でどこまで出来るのか知りたいんです。」
流されるまま森でさ迷っていた、アテリーがこんなにはっきりとやりたいことを伝えるなんて……。おれ男だけど、お姉さん感動します!!
「魔法部隊の試験、受験するにはどうしたらいいの?」
おれはアテリーを見ているナターシャに聞いた。
「明日、魔法部隊の施設で登録すれば受けられるようになるわ。私が登録しておいてあげましょうか?」
ナターシャがアテリーに問う。
「いや、いいよ。」
アテリーではなくおれが答えた。
「登録に行くついでに町を見て周りたいし。」
「そう。」
「アテリーもそれでいいよね?」
おれはアテリーを見つめて聞いてみる。
「僕は先生と一緒なら……。」
アテリーが顔を赤くしているが、賛成のようだ。
よし!!明日は町に出掛けよう。
いいお風呂だったぜ。やっぱ日本人は毎日風呂に入らないとな。
ドゴーン!!
うわっ!なんだ?敵襲?ついに夜のナターシャが姿を現したか?
どうやら庭の方で音がしたようだ。
行ってみよう。
庭の奥には、赤い膜に覆われたアテリーと………杖を持った小動物メイド─セリアがいた。
君たち……なにしてんの?
────────────────────────
一時間前……
夕飯を終えたアテリーは部屋に戻ろうとしていた。
「少しいいですか?」
後ろから声をかけられた。
アテリーは声の主の方を向く。
「なんですか?」
そこにいたのは金髪よりの茶髪を持つ小動物メイド─セリアだ。
アテリーは彼女のことがあまり得意ではなかった。
時折、冷たい目で見てくる。アテリーは村で奴隷のような扱いを受けていた過去があるため、そういうことには敏感だったのだ。
「話があります。ついてきてください。」
その有無を言わさぬ言い方にアテリーはしぶしぶとついていった。
アテリーは屋敷の裏庭につれていかれた。
ここは普段魔法の練習をしている場所よりもかなり屋敷から離れている。
「あなたは魔法部隊の入隊試験を受けるつもりですか?」
小動物メイド─セリアが聞いてきた。
やはり冷たく刺々しい嫌な感じだ。。
「うん……。」
「そうですか。では、今すぐ止めなさい。」
「え?」
いきなりの命令にアテリーは困惑した。
「魔法部隊はこの町を守る要。あなたの様な存在が受験するなんて許さないわ。」
「なんでそんなことを君に言われなくちゃいけないの?」
さすがのアテリーもムッとして言い返す。
「私はあなたがこの屋敷で暮らすことすら嫌なの!!」
「なんで……」
「私はリーフィリア様と一緒にいるあなたを見るだけで我慢ができなくなるわ。なんであんたみたいなヤツがあの人と一緒にいるのよ!!」
リーフィリアを引き合いに出されたアテリーは即座に言い返した。
「僕はあの人に……先生に救ってもらったんだ!!僕は絶対に先生から離れない!!」
「なんですって……」
小動物メイド─セリアの顔が怒りに染まる。
「それならこの町から出ていきなさい!!」
セリアが杖を取り出して、詠唱した。
高速で放たれた水の玉がアテリーに襲い掛かる。
ッ!!
アテリーは咄嗟に回避した。
リーフィリアとの修行の成果が活きてきたようだ。
それでも完全には避けきれず、腕に掠めてしまう。
水の玉がかすった程度、たいした傷には……
アテリーの右腕は紫に変色して、血が流れていた。
「いきなり何を……」
「あんたの魔法の成長速度は異常だわ。それにその忌々しい銀髪、あの男の仲間に違いない!!」
そう言うとセリアは空中に留めていた大量の水を一斉にアテリーへと放った。
こんな所で終わりなのか……僕を助けてくれて、名前をくれたあの人ともっと一緒に居たかった………。
変な言いがかりをつけられて、そのまま殺される。もう、先生にも会えなくなる……………そんなこと、認められるか!!!
ドゴーン!!
辺り一面の草が紫になっている。
ただの水魔法でこんなことは起こらない。これは彼女の特異魔法によるものだ。
「なっ!!」
セリアが驚いたような声を出した。
毒を含んだ水魔法で仕留められると思っていた。しかし………
「その……力は………。」
アテリーは赤い膜に守られていて無傷だった。
それを見たセリアが更に追撃を仕掛けようとするが……
「なにしてるの?」
森の妖精のような優しい声がその動きを止めた。
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