一緒にお風呂(願望)
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おれは今、食堂で夕飯を食べている。
目の前には魔法部隊隊長─ナターシャが座っており、その両隣には茶髪のお姉ちゃんメイド─サリアと金髪よりの茶髪を持つ小動物メイド─セリアが立っている。
おれは文字の勉強に小動物メイド─セリアの手を借りたのだが、本を読む姿がかわいかったのでついセクハラしてしまった。
小動物メイド─セリアの姉であるお姉ちゃんメイド─サリアにバレた時は、色々叱られるかもしれない……と思ったのだが、逆に感謝されてしまった。
今おれがいるこの国はフォレスティア森調王国という国で、森に住んでるエルフとは仲がいいから森調王国というらしい。
もしかすると、転生してガワはエルフとなったおれだが、エルフならばこの国で大抵の事をしても許されるのかもしれない。
だが、おれはやりたい放題やるつもりはない。それでさっき、文字を教えてくれた小動物メイド─セリアを泣かせてしまったのだ。
これからは相手の意思をきちんと確認しようと思う。合意の上でやりたい放題やるのだ。
「リーフィリアさん。」
黒よりの青い髪を持つナターシャから話し掛けられた。
「なに?」
おれは神秘的なエルフモードで答える。森の魔女として相応しい振る舞いをするのだ。
「あなたは普段魔法を使うときに詠唱はしてないの?」
詠唱か~。異世界に転生してからは『風よ』みたいな事を言ってたけど、だんだんだるくなってきたから言わなくなったんだよな。今じゃ、相当気合いが入らないと言わない。
「してない。」
「そうなの……。昼間、あなたの水魔法を見せてもらったけど、五大属性魔法で詠唱を省略出来る人を見たのは先生以来よ。」
昼間の魔法を見られていたのか。五大属性魔法……火・水・風・雷・土の5つだったな。でも、おれの水魔法は手のひらから直接出ないから厳密には何か違う気がする。アテリーがやっていた水魔法が正確な水魔法なんだろう。
銀髪の少年─アテリーはその存在を知ってから、かなりのスピードで水魔法を習得している。アテリーも詠唱とかしてなかったな。
「先生?」
おれは気になって聞いてみる。
「そう。私の先生だった人。金髪に綺麗な碧眼を持っていて、あなたにとてもよく似たエルフだったわ。」
「その人はどこにいるの?」
「……亡くなったわ。」
「そう……。」
安易に聞いてしまったな。なんだか部屋の空気も暗い。
「気に病む必要はないわ。もう何年も前の話だから。」
暗い空気を払拭するようにナターシャが言う。
「ところで、昼間あなたの魔法を見たけど、凄い威力ね。ねぇ?やっぱり魔法部隊に入らない?」
う~ん。
「今は入るつもりないかな。」
「そう……。でも気が変わったらいつでも言ってね。」
「わかった。」
おれは食後、小動物メイド─セリアを追いかけた。
「まって!」
セリアがおれの方を振り返る。
「さっきはいきなり抱き付いたりしてごめんなさい。」
おれは文字勉強のときのセクハラを謝った。
「いいえ。こちらこそ申し訳ありませんでした。取り乱してしまって。」
セリアはうつむきながら言った。
「それでは姉さんの仕事を手伝ってくるので……。」
そう言うと、小動物のようなかわいらしいメイドはどこかに行ってしまった。
あーあ。あわよくば一緒にお風呂とか入りたかったけど……残念。
おれは自分の部屋に戻る前、隣部屋であるアテリーの部屋の様子を見た。
まだ寝てる。今日は目を覚まさないかも。文字の復習をして、風呂に入ったらおれも寝よう。
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森の中を一人の女が駆ける。
ラムルスの町で得た情報を持ち帰る為、目的地に向けて疾走していた。
紫色の髪が月明かりに照らされて怪しく光る。
夜の森と言えども、二つの月に照らされた森はそれなりに明るい。
女はただ走る。一刻も早く情報届けることもそうだが、魔物がうろつく森に長居したいとは思わないだろう。
目の前に人影。
「何者?」
女は足を止めて影を見つめる。
影の中から一人の男が出てきた。月明かりに照らされて、その男の風貌が明らかになる。
銀髪に赤い瞳。
「貴方もしかしてヴァンパイアかしら?」
女はその男の特徴に心当たりがあった。数年前に各地を騒がせたヴァンパイア。その特徴に酷似していたのだ。
「その通りだ。」
男はそう言うと、鋭いキバをあらわにする。
「……一体何が目的かしら?」
女は警戒を強めて聞いた。その男が件のヴァンパイアなら尚更気を抜くわけにはいかない。
「聞きたいことがあってな……。」
「何かしら?」
女は男の言葉を待つ。
「リーフィリアというエルフを知っているか?」
リーフィリア……その名前にはひどく心当たりがある。しかし、素直に答えるべきか……。刹那の思考の末、導いた答えは………。
「ええ……知っているわ。」
素直に答えることにした。目の前の男は立ち振舞いから見ても明らかな強者。嘘をついたところですぐにばれるだろうと考えた。
「ほぅ。どこにいるのだ?」
男は血のように赤い瞳を輝かせて聞いてくる。
「……ラムルスの町よ。」
「方角は?」
「私が走って来た方。」
「なるほどな。」
男は満足そうに頷いた。
「ところで私はもう行ってもいいのかしら?」
女は満足気な男に聞いた。
「あぁ。」
「それじゃあ私はこれで失礼するわね。」
女は男を避けて走ろうとする………。
「待て。」
男から声が掛かった。
「…何かしら?」
一刻も早くこの場から去りたい女は内心で苦虫を噛み潰したような顔をする。
「リーフィリアというエルフの情報を流す気か?」
ここは嘘をつくべきか?いや……。
「ええ。私はそのために町に潜入していたんですもの。」
素直に答えた。
「どこに流す?」
「……グランディア聖盾騎士帝国。」
「あの国か……。」
女は再び男を注視する。
「あの人の平穏を脅かすのならば、ここで消えてもらう他ないな。」
ッッ!!
女は長年に渡って培ってきた自身の勘に従い、身体を伏せる。
長い紫の髪が切れる。
後ろの木が切り倒されたようだ。
女は独自の歩法で男の視線を掻い潜るように走る。
しかし……。
「甘いな。」
瞬時に赤い糸が女の行く末を阻む。
「こ、これは……。」
「終わりだ。」
女に巨大な火球が降り注ぐ。
バゴーーーン!!
森が赤く染まった。
大地が大きく抉れて、土が燃えている。
「あの人に早く会いたい。」
銀髪の男はそう言い残すと、女の生死を確認することもなくラムルスの町へ向け、走り去っていった。
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