このネタは通じない
感想まってます
おれは魔法部隊隊長─ナターシャや、この屋敷のメイド─サリアとセリアに見つからない様に屋敷を探索していた。
今日の朝、昨日睡眠薬を盛られた部屋に来てくれ、とナターシャから言われたがおれは正直行きたくない。
行けば今度こそ『奴隷の首輪』をはめられて、ナターシャが連れたキモデブおじさんによる、おれわからせ、が遂行されてしまうかもしれない。
おれは今まで平和ボケした日本人の思考で動いていたと思う。だが、ここは日本ではなく異世界だったのだ。もうこれからは信用出来ない人の出す、食べ物や飲み物に手を出さない事としよう。
今、おれは森から助けてここまで連れてきた銀髪の少年─アテリーを探している。
この屋敷の住人に出会ったら面倒だから、隠密行動を心掛けている。
てか、アテリーどこだよぉ。
一度助けた以上、アテリーの生活基盤が整えられるまで手を貸すつもりだった。それが終わったら気ままにブラブラ一人旅でもしよう。
屋敷を探索している間にとうとう昨日睡眠薬を盛られた部屋の前に来てしまった。
行くしかないのかなぁ?いやだなぁ。
「はぁ。」
おれは意を決して扉を叩く。いざとなった時の備えとして、いつでも魔法を使えるように準備しておこう。
「リーフィリアよ。」
おれは夢の中で呆気なく崩れてしまった神秘的なエルフモードで名を名乗る。
「入ってちょうだい。」
部屋の中からナターシャの声がした。
ナターシャか………。キモデブおじさん連れて来てんじゃないだろうな?
おれは部屋の扉を開いた。
ナターシャは昨日と同じソファーに座っている。茶髪のお姉ちゃんメイド─サリアと金髪よりの茶髪の小動物メイド─セリアも昨日と同じ様にナターシャの後ろに立っている。
アテリーは既に昨日と同じ位置に座っていた。
なぁ?お前、もう少しくらい警戒したらどうだ?睡眠薬盛られたんだぞ。
おれは夢のナターシャの発言により睡眠薬を盛られたことを知ったが、こいつはまだ気付いてないのかもしれない。呑気なヤツだ。
結果として、キモデブおじさんはいなかった。
しかし、その代わりにナターシャの隣には筋骨隆々のおじさんがいた。
「そのおじさん誰?」
おれは間髪入れずに尋ねた。
おれにおじさんと言われた筋骨隆々の男は苦笑した。
「リーフィリアさん。この人は………」
ナターシャが答えようとするが、その筋肉おじさんは手で制した。
「いや、いいんだ。俺の方から話すのが筋だろうからな。」
そう言うと、筋肉おじさんは自己紹介してきた。
「おれはこの町の領主、フロン・ダーゼルムだ。」
………。
「へー」
「か、軽いな。昨日の件で話がしたいのだ。席に座ってくれないだろうか?」
昨日と同じ席か。
答えはもちろん………
「アテリーこっちにおいで。ここから出ていくよ。」
No!!ナターシャはキモデブおじさんの代わりにあの筋肉おじさんを使うことにしたらしい。キモデブおじさんよりはましだが、男に迫られること自体ノーセンキューなのだ。
アテリーはおれの言葉に従い、席を立とうとする。
「まってくれないか?本当に話だけでも応じてほしい。」
この町領主である筋肉おじさん─フロンは慌てた様に身を乗り出してくる。
「飲み物に睡眠薬を入れるような人たちと話すことは何もありません。」
おれはハッキリ言う。
アテリーはやはり今まで気付かなかったのか、驚いた表情をしている。
「そこを何とか頼む!!この通りだ!!」
フロンは机に頭をついて懇願してくる。
「アテリー早くおいで。」
アテリーがおれの側に寄ってきた。
「リーフィリア殿!!客人に無礼な振る舞いをしたこと誠に申し訳ない!!詫びとして何でも望みを叶えるから、話に応じてはくれないだろうか?」
ん?………今、何でもするって言った?
「なら、大金を今すぐ持ってきなさい。」
おれは無一文だから、これからの旅を豊かにするためにも金を要求した。
「わ、わかった。すぐに用意させよう。そちらの少年はどうする?」
フロンはアテリーにも望みを聞いた。
「えっと……僕は………特にないので、リーフィリアさんに使ってほしいです。」
アテリーは特にないようだ。ならばおれが使ってやろう。
「どこの町にも入れる身分証を二人分持ってきて。」
おれは更に畳み掛ける。
「了解した。」
そう言うとフロンはお姉ちゃんメイド─サリアに用意するよう指示を出す。
サリアが部屋から出ていった。
「用意する間だけでも話をさせてくれないだろうか?」
このおじさんはどうしても話がしたいようだ。
「三分間だけ話をしてあげる。ただし、席には座らないわ。」
「感謝する……。」
ここ異世界だから、このネタ通じなかったわ。
「フォレスティア森調王国の現状を存じているだろうか?」
フロンは早速話し始めた。
「ええ、そこのナターシャから昨日聞いたわ。」
キモデブおじさん、けしかけるヤツなんて呼び捨てで十分だ。
「そうか。グランディア聖盾騎士帝国と戦争になる可能性があることも既に知っているのか?」
「ええ。」
「そのグランディア聖盾騎士帝国はこれからの戦争を見据えて、この国に間者を忍ばせているという情報があるのだ。」
「それで?」
「間者の可能性がある高度な魔法技術を有する者を野放しにしておく訳にはいかなかった。」
「だから睡眠薬を盛ったと?」
「本当に申し訳ない。」
フロンが再び頭を下げる。
そっちの事情で睡眠薬を盛られて堪るか!!話も終わったようだし、貰うもの貰って、さっさと出よう。
おれが目を細めて頭を下げるフロンを見ていると………
「ごめんなさい!!フロン様は何も悪くないんです!!」
小動物メイド─セリアがおれの方を見ながら叫んだ。
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