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長寿

 「じゃあ読むよ」と僕。


 「ここは地球ではないらしい。

 ここを俺は仮に『異世界』と呼ぶ。

 ここは気候や四季などが地球と酷似している。

 だが、違う部分も探せば沢山ある。

 地球では恐竜の仲間はほぼ絶滅しているが、この異世界では竜の仲間が沢山残っており、馬のような移動手段になっている。

 文明レベルは地球レベルで見れば低い。

 東大陸という、この異世界では最大の大陸でも、中世ヨーロッパ並みの文明レベルだ。

 でもこの『ザナルカンド』の街より栄えている街は少なくとも東大陸にはない。

 産業革命は起きていない。

 蒸気も石炭も石油も動力として利用されてはいない。

 電気もまだ発明されていない。

 ガラスは発展し始めている。

 窓ガラスは富裕層を中心に広がり始めているようだが、まだ飲料水の容器にガラスは使われていない。

 ガラスの透明度は低く、色付きのガラスはまだ開発されていない。

 鉄器は作られている・・・が合金鉄の技術はないのか、あっても低いのか。

 そこは専門ではない俺には良くわからない。

 俺はこの異世界の神になる気はないし、なりたいとも思わない。

 俺は異世界に来てストレスに感じている事を『口を出しちゃいけない、この世界はこの世界のスピードで発展していくべきだ』という信念を曲げて『3つ』手をつけてしまった。

 一つは『活版印刷』

 とにかく異世界では書物が高い。

 ネットもテレビもない世界で、知識を得る手段は本しかなかったが、その本が法外に高かったのだ。

 本当は良くないと思いつつ、俺は印刷所を作った。

 俺は知識を得ると同時に、安定した所得も得た。

 一つは『下水道』

 『ザナルカンド』か海沿いの街であれば海の魚を食べるんだろうが、『ザナルカンド』では川魚を食べる。

 それは良いのだが『汚水を川に流して平気で川に住んでいる魚を食べる』というのが本当に耐えられなかった。

 後で『海の魚も内臓を処理する時、凄い臭いがする』と知ったが、『魚といえばスーパーで切り身が売っていた』という立場としては内臓の臭いと汚水の臭いとを勘違いしてしまったのだ。

 俺は印刷所で得た莫大な利益を『ザナルカンド』の街に下水道を張り巡らすのに使った。

 印刷所と下水道工事は畑違いだ。

 他業種協力が必要になってくるし、それを組織立てなくてはならなかった。

 それが3つ目『商工会』転じて『ギルド』だ。

 『ギルド』がただの相互協力組織のうちは問題なかった。

 例えば・・・

一人の男が商業ギルドに登録する。

 土木ギルドがその男の店の土台を作る。

 建築ギルドがその男の魚屋を作る。

 漁業ギルドがその男の店の商品となる魚を卸す。

 男はその店の利益の一部を手数料として商業ギルドに収める。

 商業ギルドは各ギルドへその利益を分配する。

 こうして『商工会』『ギルド』が成り立っていった。

 問題は『問題が無さすぎる』事だった。

 他業種が動けば摩擦がおこる。

 どちらかの業種が得をすれば、どちらかの業種が損をする・・・というシチュエーションが必ず起こっていた。

 その揉め事を収めるのが国の仕事だった。

 そして、互いの業種は『自分たちが損をしないように』役人に賄賂を渡していた。

 それなのに『商工会』が出来て、役人を全く通さなくなったのだ。

 そしてかかる費用は段違いに少なく、得られる利益は段違いに多くなった。

 しかも他業種と一切禍根を残さない・・・それどころか『次もよろしく頼むよ』と固く握手する間柄になった。ギルドでなく、役人に間に入ってもらうのは『百害あって一利なし』

 それは自分たちにとっては・・・だ。

 役人達は『関わらなければ甘い汁は吸えない』のだ。

 役人達は裏稼業のやくざ者達を雇い『ギルド』に対する嫌がらせを始めた。

 役人は商人達から『見かじめ料』を取ろうとしたのだ。

 今思えば、あそこで役人に折れておけば良かった。

 『ペンは剣より強し』

 俺は役人達が行っている不正を瓦版で徹底的に糾弾した。

 そしてヤツらは屈しない連中相手に暴力的な手段に打って出ようとした。

 それに対する警備団体『自警団』が後の『冒険者ギルド』の始まりだ。

 俺は『自警団』のメンバーに自衛以外の暴力の一切を禁じた。

 彼らは自分を鍛えるためにダンジョンに潜るようになった。

 名目上、創設者である俺は『自警団』のトップに据えられた。

 お飾りのトップだ。

 何せ剣を持った事すらない。

 ただ『自警団』は図体がでかくなりすぎた。

 なので『何が出来るか?』『どれだけ強いか?』によって階級分けを俺は行った。

 それによって『階級の高いヤツにしか受けれない警備』『階級が低くても出来る仕事』が分けられ、棲み分けが行われた。

 功績によりA~Fランクに『自警団』は分けられ、強さによりレベル分けされた。

 つまり『レベル8、Cランクの自警団員』というように自警団内で順位がつけられた。

 ここまでは問題にはならない。

 ここで俺は決定的なミスをした。

 『自警団』内で『出来る事』『出来ない事』を明確にするために『出来る事』をギルドカードのスキル欄に書き込んだ。

 それが後の悲劇を産むとも知らずに・・・。」

 これ以上は読めない。

 ・・・というか、破れていて続きがない。


 「これで薬の代金、本当にタダにしてくれるの?」僕は何やら考えている様子の女性に声をかけた。


 「え?あぁ、もちろん!」女性は請け負った。

 「で、この話、君はどう思った?。」女性は僕に聞いてきた。

 「別に?」僕はすでに上の空、『何を買い食いして帰ろうか?』ということで頭が一杯だった。

 「『別に』って何か思ったでしょ?。」女性が食い下がる。

 何か言わないと解放してもらえない。

 買い食いの時間もなくなってしまう。

 「えーっと『自警団長』ってお爺ちゃんが話してた『マスター』かなって。」と僕。

 「『マスター』?」

 「うん『マスター』。

 『昔、同じ所にいた。』ってお爺ちゃんが言ってたよ。

 お爺ちゃんと同じ文字使ってるなら、そうなのかな?って思っただけ。

 お爺ちゃんに確かめてみないとわからないけどね。」と僕。

 「何で『古書』にお爺さんの知り合いが登場するのよ?。」

 「お爺ちゃんが200年前まだ若かった頃、マスターは700歳くらいだったってお爺ちゃん言ってたよ?。

 マスターの別名『妖怪ジジイ』だったって言ってたし。」

 「お爺さんも大概化け物じみたご長寿老人よ!?。

 そんな事はどうでも良いわ。

 古書を書いたのが、マスターかどうか確かめられるの!?」

 「?当たり前じゃない。

 離島に行けばお爺ちゃんに色々聞けるよ。」

 「お祖父様、ご存命なの!?。」

 

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