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第4話 夜のお散歩

わたしはジャックに照らしてもらって街道を進んだ。港町ベルナトスまではまだまだ遠い。兄を生き返らせる条件の中に”聖なるモノ”わたしを愛する異性・・・。ちょっとメフィストフェレス

<<なんでしょう、リズ様>>

そんな異性、どうやって見つけるのよ。

<<それはリズ様次第かと>>

ああ、そうね。あなたに相談したわたしが悪かったわ。

「ジャック、今何時かしら?」

<14時です>と、かわいい声が脳裏に響く。

あーいやされるわ。それよりも傘が欲しいわ。黒い傘。ねえ、メフィストフェレス。下位契約者は何をしているの?全然来ないじゃない?

<<そうですねぇ。ベルナンドを出てから2時間も経過していますものねぇ。どこかで休んでいるんじゃないですか?今は停滞しています>>

あらそう。その停滞しているところへ案内して

<<それはジャックオーランタンがすでにしております>>

「ジャック、ありがと」

<<命じたのは私です、リズ様>>

甘いのよ、魔王のくせに。そうね、感謝はしているわ、メフィストフェレス。

それじゃあ、今度は腕?それとも両目?どれだけ必要なの?

<<だいぶ慣れたようですね。両腕と両目をいただければ、上等の黒い傘をお造りいたします。もちろん、下位契約者はちゃんとフェンリルが食べますので>>

「そう。いいわよ・・・それとジャックが飛んでいるようにわたしも飛べないかしら・・・歩き疲れたの。」と、わたしはメフィストフェレスに聞いてみる。相変わらず姿が無いのでわたしの独り言のように周囲には見えるかもしれない。そもそも夜なのでよっぽどの者でなければ見ることも無理かしら。

<<それは黒いヒールに命じるだけでよいかと>>

「あらそう。じゃあ、足も食べてもいいわ。黒いヒールよ、わたしを運んで」と、わたしは命令する。

わたしの身体は浮きあがり、そのままジャックの後ろをついていく。

真っ暗になる。両目が無くなり、また視界が元に戻る。フェンリルが大口を開けて、片腕ずつ食べて行く。袖の部分が軽くなる。蜘蛛たちが腕の形をしたかと思えば腕になっていた。だんだんと戻る速度が早くなっている気がするのは気のせいかしら。<<いいえ、使用すればするだけ早くなります。リズ様はもう人間には戻れません>>

「そうね」フェンリルの大きな口が太ももからわたしの足を奪う。黒いヒールの飛ぶ効果が消えるかと思ったが、消えることは無く、わたしは浮いたままで、蜘蛛たちが黒いヒールとの間をつなぎ、元の足に戻る。

ジャックが地上を離れ、空高く登って行く。わたしもそれについていく。ついていくと、意識するだけでわたしの身体もジャックの後を追って空高く登りだした。眼下には白っぽい布のテントがたくさん見える。

鎧を着た兵士のような人間たちが叫びあっている。何を叫んでいるのかしら。

<<聞きたいですか?リズ様>>

ええ、そうね。聞けるの?

<<はい、近づいていけば聞けます>>

あーもしかしてあの中に下位契約者がいるのね

<<ええ、停滞していたようです。今は動いておりますよ>>

そうでしょうね。じゃあ、近づくわ

「ジャック、わたしの前方を照らして」

ジャックは方向転換したわたしの前へランタンをかかげながらゆっくりと移動する。

それを待ってからわたしも移動を開始した。

「魔王メフィストフェレスだ。魔王が来たぞー」と、兵士の叫びが聞こえてきた。

わたしとジャックは兵士の後ろ姿を見ている。

大きな黒い狼、フェンリルはゆっくりと口を開き、閉じた。

わたしの目の前にいた兵士たちがこぞって消えた。これほど大きな黒い狼が兵士たちには見えていないようで兵士たちは大きな口の中へ自ら進んで走って行く。

フェンリルはまた口を閉じた。

騒ぎと絶叫が聞こえて来る。馬の鳴き声も。

馬がわたしに近づいてくる。よく見ると馬の上には黒いマントを羽織った指揮官らしき男性がまたがっているように見える。

指揮官らしき男性は手綱を引いて、わたしの前で馬を止めた。


「お美しいお嬢様・・・あなたの名前を聞きたい。私はボルヘルゲ・マーテス。この臨時徴収された軍の指揮官だ。訳あって今は混乱中だが、お嬢様はどこからおいでになられたので」と、マーテスと名乗る指揮官はわたしに挨拶をする。


「わたしはリスティア・ウィズ・クライン。ベルナンドから来ました。港町ベルナトスに行くところですわ。マーテスさんもどうです?夜のお散歩を」と、わたしも挨拶をした。

となりのジャックは見えていないのだろうか。

「リスティア・ウィズ・クライン?私たちが討伐に行く女性と同じ名前?宵闇のカーテンを発動させた張本人?」と、マーテスは下を向いて考えている。

ねえ、ばれたっぽいわ。ところでメフィストフェレス、このマーテスが下位契約者なの?

<<違います、リズ様>>

「ひぃ、ひぃいいいいいいい」とマーテスは叫ぶ。

<<怯えています。リズ様>>

「もういいわ、食べて」

マーテスの首が消える。身体もフェンリルの大きな口へ飲み込まれて行く。

<<リズ様、下位契約者が森の中へ逃げました>>

「どうすれば追いつけるのかしら?それも今は夜よ」

<<転移すれば簡単です。リズ様。ルキフグスとの上位契約を結んでくださいませ>>

「ルキフグス?どうやって?」

<<全身を捧げてくださいませ>>

「え?全身・・・」

<<そうです、リズ様。簡単でしょ>>と、メフィストフェレスの低い声が脳裏に響く。

死んじゃわないかしら・・・ふふ。わたしはとなりにいるジャックを見つめた。カボチャ顔のお化けを。

兄さん、ごめんね。1人、煉獄に行かせてしまって。

そうね。兄さんがそばにいてくれる。それに失敗しても兄さんと同じ煉獄へ落ちるだけ。

「いいわ。やりなさい」

大きな黒い狼フェンリルがわたしの前へやって来て大きな口を開き、わたしをそのまま飲み込んだ。

わたしは食べられたのにジャックを見ている。目がいちばん最初に再生されたのかもしれない。

よく見るとわたしの身体はほぼ元通りに。衣服もわたしの裸を包むように再生されていった。

銀髪で両目をえぐった黒いローブを着た男がわたしの前に来て跪いた。

「名を名乗りなさいな」と、わたしは言う。

<<リズ様、ルキフグスも言葉を話すことができません。ルキフグスと話す時、使用する時は1度魔王の書を呼び出してくださいませ>>

「そう・・・なのね。魔王の書」と、わたしは右手に召喚する。

赤い表紙の本は右手に収まり、わたしは「開け」と、命じた。

白紙の魔王の書に赤い文字でルキフグスとの上位契約成立と書かれている。

使用するには指を1本いただきます。と、書かれている。

どうやらそれで転移はできるようだ。

「ルキフグス、指を上げるわ。」と、わたしは言う。

右手の親指が消えて、蜘蛛に変化する。すぐに親指に戻る。

わたしの足元に虹色の転移魔法陣が出現した。幾何学模様で描かれている。


焦って走って来る男が1人見える。周りは木々に囲まれている。

<<下位契約者です。リズ様>>

「そんなバカな」と、茶髪の走って来た男は左右をキョロキョロと見る。

「どこ、どこにメフィストフェレスはいる?」

「ここよ」と、わたしは言う。

「ひ、ひぃいいいい。お助け、お助け」と、走って来た男は膝を地面につけて顔を手で覆う。

「ごめんね、黒い傘が欲しいの」と、わたしが言うと男の首は消えた。倒れ行く身体もフェンリルの口の中へ。わたしは黒い傘をさして歩く。ジャックと一緒に港町ベルナトスへ

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