第10話 死の天使降臨
わたしたちはよく分からない場所へ来ていた。
わたしはすぐさま、目をメフィストフェレスに捧げて結界を張って、ジャックとクジャンはわたしから離して置いた。
上を見上げるとごつごつとした岩の天井だ。ただどうしようもなく広い。
ここは広い場所のようだ。
目の前に広がる灼熱の炎の中に黒い影が浮かび上がる。
<<タナトスが来ます>>と、メフィストフェレスの声は告げる。
灼熱の炎の絨毯の上をまるで散歩するかのように歩く黒い影。
黒い仮面を被り、その下からは赤い目が覗いている。
身体に纏うは漆黒のローブだ。
背中には黒き翼を広げ、3メートル以上ある背丈。
その背丈をはるかに超える漆黒の大鎌を上段に振りかぶり、打ち下ろしてくる。
わたしは大鎌が、刺さるよりも先に腸をリヴァイアサンに捧げた。黒き蛇、赤い目をしたリヴァイアサンが大鎌を食べる。
脳をリリスに捧げて、蜘蛛たちがお腹と頭蓋骨の中で動き回っている。心地よい。
黒き輪が頭上に輝く。心臓をサタンに捧げて、蜘蛛が口からあふれる。これで声も。
肩甲骨を捧げる事でベルゼブブによって、黒き翼が4枚、背中から生える。
タナトスは大鎌を喰われて、そこから攻撃は何もして来ていない。
目をメフィストフェレスに捧げて、灼熱の炎の上を絨毯のようにわたしも歩く。
まるで歩ける事が当たり前のように。タナトスは動かなくなった。跪き、頭を下げる。
<<おかえりなさいませ・・・ニュクス様。いえ、我が母君>>
<<それがわたし?>>
<<死の天使にして、最後の神、王の中の王、闇の支配者。それが母君です>>と、タナトスは言う。
<<わたしは迷っているわ>>
<<兄上様の生き返らせる準備は整っています。材料も>>
<<クジャンはどうなるの?>>
<<生き返らせると消えるでしょう>>
<<・・・わたしはクジャンと生きたい・・・ジャック。兄さん、これからも一緒にいてほしい。ジャックの姿のままで。わたしは我がままを言っているのかな>>
「ははは、どっちも手に入れるなんて。さすがだね、リース」と、クジャンは笑う。
わたしは左腕をフェンリルに捧げる。左腕はすぐに生えて来る。
<<フェンリル、食べて>>
クジャンは黒い狼の大きな口に飲み込まれた。
2人目のジャックオーランタンが現れる。
<<行きましょう>>
わたしは口角を吊り上げて笑った。
完。