ボランティアをしてみよう!(4)
後藤達が春分祭を潰すべくこちらに進軍してきている時間、博己と優子はビラ配りという職務を全うし休憩に入っていた。
休憩時間は基本自由であり、この間にボランティア達は遊びに出かける。
しかし休憩中にも問題というのは起こるものであり、基本クラスの出し物とかに出張っているボランティアの代わりに休憩中の者がその場に急行する羽目になる。
今、博己は泣きじゃくる小さな女の子を連れて母親を探している途中だった。
せっかく二人きりなれると思った優子は内心不貞腐れるが、博己の優しい一面が見れて満足というのも本音だ。
「この子のお母さんを探していまーす」
「うえええ!ママー!」
「分かった分かった」
博己が女の子の頭を撫でると、まだ泣いてはいるが大声を出さなくなってきた。
博己は内心ホッとする、あのままでは精神健康に支障をきたす所であった。
全国の子供に苦労しているお母さんに心の中で敬礼する。
「ねえ、お母さんの特徴を教えてくれるかな?」
優子が女の子の目線に腰を下げ、ニッコリと微笑む。
女でも顔を赤らめる微笑みを直に受けた女の子はみるみるうちに笑顔になっていった。
「えっとね、えっとね」
女の子は拙いながらも自分の母親の特徴を一つ一つ優子に教えていく。
凄いなあ優子は…と博己は感心する。
まあ確かに、性格には問題があっても優子は普段は優しい女の子だ。
この子が俺を好きでいてくれるんだ…光栄だな。
博己は心の中で優子に対する認識をまた一つ改めた。
距離感というのも改めても良いとさえ思う。
しかし優子は…
「あら?博己くんさっき私のこと考えてました?」
優子はグリンと首を動かし、博己に向かってニタァと笑う。
目の前の女の子は何が起きているのかが分からず首をかしげる。
絶対にこの顔だけはその子に見させないと博己は心に刻む。
「まあそんな茶番は置いといて、行きましょうかほちゃん」
「うんー!」
すっかり泣き止んだ女の子の名はかほというらしい、博己はいつのまにか名前を聞いたんだと思う。
「ふふ、精神掌握の一種ですよ」
「そんな恐ろしい感じに言うんじゃねぇよ」
なんちゅう恐ろしい技を身につけてんだと身震いする。
底が知れない優子に博己はついて行き、ついにかほちゃんのお母さんを見つけ出した。
「ママー!」
「かほ!」
お母さんは博己達にありがとうございます!と凄い勢いで頭を下げる。
「いえ当然の事をしただけです」
「もう迷子にならないでね」
「うんー!」
「本当にありがとうございました!」
かほちゃんとお母さんは頭を深く下げ、その場から離れた。
博己と優子には静かな達成感が心に残る。
これで優子も人との温かみに触れてその症状を緩和していこう、そう博己は思った。
「よっし、一緒に屋台でも回るか!」
「はい!」
二人は肩を並べて歩き出す。
側から見れば、もうカップルに間違われてもおかしくはない。
それはカップルと間違える奴がいるとの事で。
「おい、稲垣だな」
「ちょっと顔貸せよ」
二人の目の前にいきなり現れた二人組、それは貴樹と同じ三年のクラスの人間たち。
しかも、サッカー部部長と野球部部長のイケメン二人組だった。
博己の初めての春分祭は問題だらけで進んで行くことに若干の疲れが出てきたのであった。
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一話更新するとブクマが一つ増える…これは10話一気に投稿したら20ポイント貰えると言うことか!?(無理)