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奮戦

 松田は爆破孔に伏せていた。彼の隣には戦友たる田中がいる。銃声が間断なく響いている。周囲には累々たる死骸があった。

 「くそ、これじゃ埒があかん」真柄が吐き捨てた。至るところで黒煙が上がっている。

 松田は真柄に駆け寄る。「私が敵陣の後ろに回り込みますので援護を」彼はコンクリートに覆われた陣を指差し叫んだ。

 「私も行きます」と名乗り出たのは田中である。その他にも多くの兵が志願したが、真柄は奇襲作戦に於いて人数が多いのは却って都合が悪いと制した。彼は赤くなった眼で二人の顔を繁々と見ている。

 前方に横たわる長い機関銃陣地を破壊することは至難である。それには死角がないように思われた。よしんば撃破出来たとしてもまず命はないだろう。しかし他に山頂への突破口を空ける方法はなかった。

 「死ぬなよ」真柄の消え入るような声でそう言った。

 二人は背中を丸くし進む。彼らは小さな窪地に飛び込んだ。泥が飛び散った。

 松田がふと隣に目を遣る。彼は戦友が息も絶え絶えであることを知った。

 田中しっかりしろ彼は絶叫した。この美男子は流れ弾を受けていた。腹から鮮血が流れている。

 「早く行け」田中は怒鳴る。彼は目に力を込め松田を見つめていた。

 松田は漸く気がついた。今死の淵にある男は彼に取って親友であったが、その友が為に今立ち止まることは許されないということに。

 彼は窪地を飛び出る。田中は上手くやれよと一人ごち、絶命した。

 松田は駈ける。彼は敵陣に近づくことが出来たが、運悪く数人の敵斥候に見つかった。

 彼は地に伏せ、慌ただしくダイナマイトに火をつけた。松田は俄に立ち上がり陣に向け前進する。

 いくつもの銃口が向けられている。パンパンと音が鳴った。松田の脛は砕け顔は抉られた。彼は死に瀕していたが、残った力を振り絞り、爆弾を陣地に投擲した。弾薬が誘爆し大爆発を起こす。彼の意識はその音と共に失われた。

 

 

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