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二階堂校長の事件簿「生徒会長、危機一髪」

作者: 大山哲生

二階堂校長の事件簿 「生徒会長、危機一髪」   作 大山哲生

 

 私は二階堂晴久。花散里中学の校長である。

 本校では、一学期に体育祭を実施している。その準備のため、生徒会は毎日のように昼休みと放課後に会議をしている。


 ある日の午後五時すぎのことであった。

三井教諭が職員室に飛び込んできた。

「大変です、靴箱付近で生徒会長の岡田沙耶が殴られました」

 これを聞いて数名の職員が飛び出した。岡田は靴箱の前でうずくまっている。かなり血が出ているので、すぐに受診させた。頭部に傷はあったものの幸いたいしたことはなかった。

 本人に事情を聞いたところ、生徒会の会議がおわって靴箱付近に来たら後ろから殴られた、殴られてすぐにうずくまったため誰に殴られたかは見ていないということであった。

 

 翌日、私は岡田沙耶の担任の中川教諭を校長室に呼び話を聞いた。

「きのうなぐられた岡田と対立しているような生徒はいませんか」

「岡田は生徒会長に選ばれるほどでめんどうみもよくみんなから慕われています。岡田をなぐるほど憎んでいる生徒がいるとはちょっと考えにくいです」

「生徒会長の選挙で負けた月島裕太はどうですか」

「月島が岡田の会長就任を心よく思っていないのは事実ですね。でもあの選挙から半年たってますし、どうなんてしょう」

「先生のクラスでいじめはありますか」私は話題を変えた。

「いじめと言っていいかわかりませんが、男子の山谷俊夫がよくからかわれています。からかっているのは、清水祐太朗です。清水がしつこくからかっているのを見かけるたびに厳しく注意をしています」

「そのからかいは、その後どうなりましたか」私はさらに尋ねた。

「私のみているところではなくなったようですが、どうもトイレや渡り廊下付近でからかっているようです。家庭訪問で清水の保護者には話をしたのですが、なかなかうまくいきません」

「清水の執拗なからかいにたいして、誰か注意をしたりしましたか」

「そうそう、山谷が昼休みにからかわれていた時、一度岡田がとめに入ったことがあります。その日はたまたま昼の生徒会会議がなかったので岡田は別のところで山谷の話をかなり時間をかけて聞いてあげたらしいです」

「なるほど、そうすると清水祐太朗も岡田に対して心よく思っていないのかもしれませんね。わかりました。今後、生徒の動きをよく観察しておいてください」私は、中川教諭を職員室にかえした。


 体育祭が近づき、生徒会の会議はますます佳境を迎え、会長の岡田沙耶は大忙しなのであった。

 そういった最中、岡田が再びなにものかになぐられた。今回は強く殴られなかったために振り返って確認したところ、紺のズボンがちらっと見えたということであった。

 なぐったのは男子であることがこれではっきりした。会長選挙で負けた月島か、からかいを注意された清水かどちらかと思われたが、確たる証拠はつかめなかった。


 このところ山谷俊夫の欠席が目立ち始めた。不登校状態になったのかもしれなかった。

 ある日、山谷の保護者から電話があり、しばらくは家で勉強させたいので教室の机の中にある教科書やプリントを届けてほしいということであった。

 担任の中川教諭は、教室に行き大きな段ボール箱に山谷の机の中のものを詰め込んだ。

 職員室に戻り入り口の戸をあけたとき、別の職員とぶつかり段ボール箱の中のものがあたりに散乱した。

 なにごとかと集まってきた数人の職員がプリントなどを拾い始めた。

 そのとき、プリントを拾っていた中川教諭が、「えーっ」と素っ頓狂な声をあげた。

 漢字の書き取りのプリントの裏にはこう書かれていた。

『清水にからかわれていたとき、岡田さんが助けてくれてぼくの話を聞いてくれた。とてもうれしかった。でも、岡田さんはその後ぼくを助けには来てくれない。どうして来てくれないんだ。そうか、岡田さんはぼくを裏切ったんだ。ちくしょう、あんなやつ殺してやる』

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