召喚
第三者視点から主人公視点に移ります。
ご注意ください。
どうやら俺は気絶していたようだ。
体に力が入らないし、瞼も開けられない。
空中にいるような感覚がする。
体感で五分ほど経ったがまだ地面の感触がないあたりここは遥か上空だったりするのだろうか。
だとすると俺はすごい速度で落下しているのだろうが、そんな感覚はないし、むしろ緩やかなままの気がする。
暫くすると、また意識を失った。
・・・い
(なんだ?)
・・・おい
(静かにしてくれ・・・)
おい!
そこで目が覚めた。
俺は仰向けになっているらしく、見渡す限りの青が目に飛び込んで来た。
「お、やっと目が覚めたんだな?よかったよかった」
何やらガタイのいい親父が俺に話しかけて来た。多分、さっきの呼びかけもこの親父のものだったのだろう。
「・・・あんたは?」
「喋れるくらいには意識ははっきりしてるらしいな。俺はブルグという。お前さんの名前も聞いていいかね?」
名前と風景から察するに、ここはおそらく現代日本ではない。名乗られた時点で少なくとも苗字か名前かのどちらかは無いのだろうと察し、とりあえず
「マモルという・・・ます」
と言った。
喋っている最中に思ったことだが、もし相手がヤクザだったりしたら大変なので敬語を使い機嫌を損ねないようにしなくては。
「無理に敬語は使わんでもいいさ、マモル」
体に力が入ることを確認し、起き上がる。どうやら俺は花畑に倒れていたようだ。そして周りを見渡すと城のようなものが目に入った。
「あの城が気になるかね?あれは、いわゆる魔法を教える場だ。まあ教えていることは魔法に限ってはいないがね」
なるほど。やはりここは現代日本どころか地球ですら無いようだ。本格的に異世界に来たのかとワクワクしてきた。そして足元を見ると、細長い柄の先に少し大きめの平たい刃が付いた、俗に言うグレイブというものが目に入った。
「なんだこれ?あんたのか?」
親父、いやブルグに問う。
「いや、それは多分お前さんのアーティファクトだろう。」
「アーティファクト?」
「ああ、アーティファクトってのはお前さん達みたいな異世界から呼び出される時にまた別のところからやってくる武器や防具、道具なんかのことだ。神器、とも呼ばれとる」
この親父、俺が異世界から来たことを知っているらしい。何か知っているのだろうか。
「ん?何で知っとるんだという顔をしとるな、答えは単純だ。我々が君を呼んだから、だ」
「呼んだ?あの魔法陣でか?」
「うむ。あの魔法陣は異世界への強い好奇心と、行きたいという意思を持って触れると作動するようになっていてな、誰かがこっちの世界に来る時は大体分かるようになってる。そして、俺は君を迎えに来たんだ。あそこからな。」
そう言って城を指差す。
「とりあえず、一緒に来てはくれんかね」