プロローグ
「あ〜よっこいせ、疲れるねぇまったく」
薄暗い体育倉庫の中で一人愚痴を漏らすのは、宮内衛。市立の中学校に通う少し中二チックで筋肉質な中学三年生の少年である。
身長は170cmと中三にしては少し高めで、体重は70kg弱といったところだ。
髪色は茶で髪型は髪を逆立てただけで至ってシンプル。なぜ逆立てているのかと言えばわざとではなく、親からの遺伝のせいか髪質が硬いために勝手に逆立ってしまう。
気に入っていないわけでもなく、むしろかっこいいと思えた衛は髪をあまりいじらないでいる。
彼は体育委員なので体育倉庫の掃除をするのは仕事のうちなのだが、実は不運にも彼以外の掃除担当の体育委員が家族の急病などの色々な用事で来ることが出来なかったのだ。
「なんの罰ゲームだよめんどくせえ、マット一人で片すの結構大変なんだぞ・・・っと」
そう言いつつも、それなりの手際でマットを片付けて行く衛。ちなみに独り言が多いのは癖のような物で、本人は気味が悪いと思われるのも嫌なので直したがっている。
本来マットは片付けなくてもよい、と言うよりはマットを片付ける作業は発生しないのだが、衛は大きな体に似合わず几帳面な性格をしている。そのため、ずれて重なったマットが許せなかった。多分時間も余るだろう、と考え軽くマットの下の床掃除をするためにわざわざ別のところにどかしておいたのだ。
そして、何やら光るものを、見つけた。
見つけてしまった。
「なんだこれ?光るペンかなんかで落書きした馬鹿でもいやがるのか?」
しかし近くで見て見るとどうにも違うようで、インク特有の安っぽさがなく、発光量も段違いに高かった。そして、箒で軽く表面を払うと、さらに光が強くなった。埃などが入り込んでいたようで、光を遮っていたらしい。
「魔法陣・・・魔法陣、ねぇ」
近くに誰もいないことを確認し、念のために扉を閉める。
「暗黒の邪竜よ、我が身を糧とし現界せよ!」
当然、何も起こらない。
衛が何か特別な知識を持っていたとかそんなことはなく、ただ単に遊んで見たかっただけである。いわゆる、ごっこ遊びで。
「これ一人でやってもつまんねえな・・・」
我に返った衛はそう呟くと、魔法陣に触ってみる。思春期の少年は剣や魔法だけでなく、異世界も大好きである。勿論、全ての少年がそう言うわけではない。衛は大好きだったが。
「異世界に行くためのゲートだったりしねえかな?しねえか」
半分冗談といった感じに魔法陣を撫でる。すると、魔法陣の光が一層強くなる。そして、さらに強さを増してゆく。光が衛を包み込むと、衛の意識は途絶え、そこから先は何もわからない。
次回は召喚先の世界で話が始まります。
更新頻度リアル事情にもよるのであまり安定はしないと思いますが、そこまで遅くはならないと思います。
何卒、よろしくお願いします。