BLT
「ただいまー!」
「ただいま」
勢い良く玄関のドアが開き、2人の高校生が入ってきた。一方は真っ先に台所へ向かい、もう一方は家で待つもう一人の住人に出迎えられていた。
「お帰り、よーちゃん」
「ただいま」
ここはシェアハウスとは少し違う。かと言って居候というわけでもない。はたまた、兄弟というわけでもない。
よーちゃんと呼ばれた高校生の葉汰は、出迎えたもう一人の住人、琿の頬に軽くキスをする。
琿は少し照れたのだが、もともと無愛想なため表情では分かりにくい。
葉汰はリビングのソファーに座りテレビを付けた。しかし、結局読みかけのマンガが気になり、テーブルの上の本に手を伸ばす。
が、やめた。
「どうしたの? 琿、何かあった?」
背もたれと葉汰の背中の間に入り込んだ琿は、後ろから葉汰を抱え込む形で座った。
「よーちゃん、あったかい」
そんな彼らを発見したもう片方の高校生、実は頬張っていたドーナツを口に押し込み、牛乳で一気に流し込んだ。そして、
「葉汰はいつも琿ばっかり! 僕も入れてよ!」
片頬を膨らませて拗ねた実は、まるで小学生の様に幼く見える。
「じゃ、実はどこに入る?」
「琿と葉汰の間」
即答だった。
それに対し、
「ここは俺の場所」
琿は葉汰のお腹に回していた腕に少しだけ力を込め、ギュッと抱きついた。
「みのりんは別の所にして」
当の葉汰は、そんなやりとりが面白くて笑っている。
「んじゃ、実。こっちおいで」
葉汰は自分の膝を軽く叩いて実を呼ぶ。
「ん」
実はぶすくれたまま軽く頷き、向かい合わせで葉汰の膝の上に座った。
『家でも僕に構ってくれる』
その気持ちは誰にも言わない。
『家では俺だけに構ってほしい』
そう思ってしまった琿もまた、その気持ちは誰にも言わないのだった。
コンビニで買い物してた時に、
「BLTサンドって何かエロいよね……」
と言う冬真との会話からできた短編です。