箱庭 White Day
女神の箱庭I =カサナルセカイ=(http://ncode.syosetu.com/n2414bk/)
の短編になります
ホワイト×ハート -Hidden Story-16- After:-18-08-
隊としての戦法の調整など地味に慌ただしい時期も終え、通常業務という名の空き時間を隊員相手の訓練で潰す。
今日の訓練方法はカナデが『花一匁』と名付けたゲーム。
内容は2チームに分かれ、指名された代表同士が戦闘を行い、勝利した方のチームが敗者を仲間にしていくというものだが、本日はカナデとシオンが同じチームになるという事故が起きたため一方的なゲームとなった。
「やっぱり、シオンさんを最初に狙ったのがダメだったか……」
「最後に一人残ったからってカナデさんに挑戦するとかよくやるよ」
最後の一人こと、タツヤに声をかけるカイト。
「今日はこれで終わる?」
「あ、カナデさん、待ってください」
そういうと全員が集まってくる。
代表としてナナミが前に出てカナデにラッピングされた箱を手渡す。
「私たちからホワイトデーです」
「あ、え、ありがと……」
箱を受け取る。
「あけてもいい?」
「はい!もちろんです」
箱を開けると中から出てきたのは深い赤のチョーカーだった。
銀の装飾が少し入っている以外はシンプルなデザインでカナデでの好みにもあっている。
「あ、かわいい。好きかも」
「シオンさんとニコルさんにつくってもらいました」
「ということは、ニコルさんの作か……高かったでしょ」
「これだけの人数いるんで一人当たりの負担は大したことないですよ」
カナデの問い掛けにカイトが弁解する。
「ありがと、みんな。それとシオンも」
「いえ。あ、私からのお返しは別で用意してますので楽しみにしててください」
「え?うん。楽しみにしておくよ。じゃあ私は先に戻るね」
街へと戻ったカナデに背後から声がかかる。
「おーい」
「あれ、エイダイどうしたの?」
「これ、受け取れ」
ひょいっと軽い感じで投げ渡されたが、かなり高そうな外装。
「何これ」
「懐中時計?まあメニュー画面で時間は見れるんだけど、デザイン良かったからいいかなって」
「ありがと。使うかどうか微妙だけど……」
「あ、それと組合一同から生産素材詰め合わせを部室においておくって」
「また大層なものを……エイダイもだけど何倍返しなの?これ」
「3倍?」
「絶対それより高いでしょこれ……」
思ったより細かい細工の施された懐中時計を見ながらカナデが言う。
「まあ、気にすんな。あと、カケル!」
エイダイがカケルを呼ぶと門の奥からカケルが現れる。
「ああ、カナデさん。ちょっと待ってくださいね」
メニューを操作し、可愛くラッピングされたそれを取り出す。
「すみません、大したもの考えつかなかったんでマシュマロです」
「別にお返し欲しくてチョコレート配ったわけじゃないですから気にしないでください」
「いえ、貰った以上は何か返したと思うものですから」
そういうとカケルは持ち場に戻っていく。
「……あいつ超緊張してたな」
「それは言わないであげて」
カケルをからかいに行くエイダイと別れて部屋に戻ろうとするとシェリーに捕まりリボンの結ばれた白金貨を貰った。
「これはさすがに……」
「どうかしましたか?」
声をかけてきたのはスズネだった。
「いや、シェリーからホワイトデーにって白金貨をもらったんですけど……」
「現金ですか」
「なんか微妙ですよね」
「そうですね……。まあそれはおいておいて、私とハルトさんからはこれを」
「スキルクリスタルですか」
「はい。でもこれがなんのスキルかはわかりません」
「また厄介なものを……」
「ハルトさんが何かのクエストで手に入れたそうですけど、レアリティすらわからないので使うに使えなかったそうです」
「そんなものを戴いても……」
七色に変色を続けるクリスタルを見て微妙な表情になるカナデ。
「たぶんいいものです……さすがに私もどうかと思いますが」
「ですよねー……」
スズネに一度謝られ、とりあえず歩く。
とりあえず動いたせいで軽く汗もかいているので部屋でシャワーでも浴びようかと思っていると、部屋の扉の前にシオンが立っているのを見つけた。
「カナデさん、先に戻りませんでした?」
「なんかいろいろ声を掛けられて……シオンはどうしたの?」
「お返しをしに」
メニューを開きいくつか操作した後にシオンの服が変わる。
「えっと……」
どこからどう見てもメイド服。
「…………何を?」
「これから24時間、メイドとしてカナデさんに仕えます」
「は?ちょ、まって待って!どうしてそうなったの!?」
「レイさんに相談したらこれを押し付けられまして」
メイド服のスカートの裾を持ち上げながらシオンが言う。
「なるほど、それは相談する人を間違えたね……」
「その後、スズネさんに相談したら……」
「あー……それも間違いだったね……まあとりあえず部屋はいろっか」
カナデがドアを開ける。
部屋に入りソファに腰掛ける。
「それで、結局何するの……」
「身の回りのお世話を」
「……自分で言うのはなんだけど、普段と変わらなくない?」
「あ」
シオンがハッと顔を上げる。
「……とりあえず、夕食を作らせてもらってそれをお返しという事で」
「うん、それでいいと思うよ。じゃあ、私、汗流してくる」
「それじゃあ、お背中流します」
「はえ?」
首をかしげるカナデ。
そのカナデの背を押しバスルームに向かうシオン。
「さあ、行きましょう」
「ちょっと、待って。え!?」
断る隙もなくあっという間に脱衣所に連れて行かれ、恐ろしい手際で服を剥かれ、既に髪を洗われている。
「……どうしてこうなった」
「カナデさん髪綺麗ですよね」
「そう?……って、これ私の髪と言えるのかな」
「元の世界でも綺麗でしたよ?」
カナデの髪を洗い流しながらシオンが微笑む。
「というかなんで自然に私を洗ってるの……?」
「今はカナデさんのメイドですから」
勿論、メイド服は脱いでタオル一枚のシオンであるが。
「……なんか違くない?え?メイドの仕事って何?」
「いえ、これも仕事のうちだって聞きましたよ?」
「……誰によ」
ボディジェルを手に取り泡立てはじめるシオン。
「いや、どうする気?」
「気にしないでください」
「気にするよ!?」
背中に泡を塗りたくる。
「……なんで素手?」
「気にしないでください」
「さすがに無理」
「嫌ですか?」
「女同士だから別にいいけどさ……」
「ですよね」
シオンの手が前にまわる。
「ぅぇ!?ひゃっ!?……ま、前はダメ、だって」
「気にしないでください」
「もう無理!これ以上は無理!というかそれで私が納得すると思ってるの?」
「えー……」
「なんで残念そうなのよ……」
自分で泡を洗い流し、シオンの手をすり抜け浴槽に浸かる。
自分の体をいつの間にか洗い終えていたシオンもそれを追う。
「それは、ちょっと口に出して言えないですけど……」
「何する気だったの……って、まったく」
背中にぴったり張り付いたシオンを怒るのを諦め、ため息をつく。
「のぼせそうです」
「……まだ1分もたってないよ?」
湯気の中に水音が響く。
閑章までたどり着いたらそちらに移動します。