1. 6月の転校生
私たちは出会いは6月
-いつも一緒だったのに・・・。-
『どうして・・・?』
その言葉だけが私の頭の中を
ぐるぐると回っている・・・
雨は嫌い・・・
服が濡れるし、じめじめするし、空は曇っててつまんない・・・
雨を見ていると悲しくなる・・・
-もう一度、アイツに会いたい-
それは、高校1年生の6月。
突然現れたアイツ。
先生
「北海道から転校して来た、日向 翼君だ。
皆、仲良くなっ!」
翼
「よろしくー!」
クラスの女子(棗以外)
「キャー カッコイィー」
クラスの男子
「よろしくー」
クラス中が騒がしかった。
私は転校生なんてどーでもよかった。
この時期に転校して来る生徒は珍しくクラス中がお祭り状態。
うるさいのにもほどがある。
私は静かに昼寝がしたかったのに・・・。
先生
「じゃあ、日向は安藤の隣の席に座ってくれるかい?」
『はっ?』 その言葉が頭の中を駆け巡った。
『今なんと?』 あんな騒がしそうなヤツが私の隣??
『ありえない』 ってか私の隣はこの壁だけで、机なんか置いてな・・い・・。
私はそう思いながら、右隣へ目をやった。
そこには、-真新しい机があった。-
『え?』 机がある・・・。
『なんで?』 いつの間に。
翼
「はーいっ!」
げっ! こっち来るなーっ!
翼
「これからよろしくなっ! 安藤 棗っ!」
棗
「・・・よ、よろしく。」
はぁー。 変なヤツが来ちゃったな・・・。
ってかなんで私の名前知ってんの?!
はぁ。 そんなこともうどーでもいいや。
とにかく昼寝しよぉっと・・・。
翼
「安藤 安藤っ!」
んー。 誰か呼んでる・・・。
翼
「棗っ!」
あーっ! うるさいっ!
-ガタンッ-
棗
「もうっ! なによっ! うるさいなー!!」
翼
「あっ!」
私は、つい勢いで立ってしまった。
翼は、何かに見つかったときのような表情だった。
そのまま翼は、前に指を指した。
その指の方向に目をやると・・・。
先生
「いい度胸だな安藤。」
げぇっっ! 今、英語だったんだ・・・。
この先生ウザイんだよな・・・。
先生
「じゃあ、安藤。 この問題解いてみろ。」
はあ?! こんな問題見たことないしっ!
こんなん分かるわけないじゃんっ!
ちゃんと高1で習うんでしょーねっ!?
先生
「さすがの安藤も降参か<ニヤッ>」
-イラッ-
棗
「こんなん簡単ですよっ!」
先生
「ほーう。 じゃあ前に出て書いてもらおーか。」
とは言ったものの・・・。
わかんない・・・。
えーと。
先生
「早く書けよー。 チャイム鳴るぞー<ニヤッ>」
マジであの先生ウザイっ!
でもなんか書かないと・・・。
私が考えていると、背後から手が伸びてきた。
その手は、サラサラと答えを書いていった。
黒板にはちょっと雑に英語が書いてあった。
いったい誰が・・・。
後ろを振り向こうとしたら。
先生
「お、おいっ! 日向っ! お前が書いてどーする?!
俺は安藤と言ったんだぞっ!」
翼?!
翼
「すいません、あまりにも簡単すぎる問題なので
勝手に左手が動いてしまいました。
ところで、なんで高2の問題を今ここで出すんですか?」
先生
「うぅ。」
クラスの皆(棗以外)
「日向君、カッコイイー!」
「翼っ! カッケーっ!」
私は呆然と立っていた。
『なんで高2の問題だって分かったの?』
頭の中にはこの言葉以外出てこなかった。
聞きたいけど、聞いてはいけないような気がした。
もし聞いてしまったら、翼を深く傷つけてしまうんじゃないかと、
そう考えるたびに、少し怖くなった。
とにかく[今は、翼から話してくれるまで何も聞かないことにしよう]
と、私は強く思った。