第13章:蒸気機関車「盆山1号」発進 —— 移動時間は、最高のサービスタイムです
第13章:蒸気機関車「盆山1号」発進 —— 移動時間は、最高のサービスタイムです
「盆山商事・魔界支社」が設立され、勇者一行がインターンとして側溝掃除に励む中、盆ちゃんはある重大な「経営課題」に直面していた。
「……ミナさん、不合理だと思いませんか? 隣国への表敬訪問に馬車で一週間。往復で半月。これでは生産性が著しく低下します。出張の移動時間は、本来もっとクリエイティブであるべきです」
盆ちゃんは世界地図を広げ、真っ赤なマジックで大陸を横断する「直線」を引いた。
「よし、線路を敷きましょう。インフラ整備こそ、地域貢献の極みですから」
(主よ。線路ってなんだ。……いや、聞くだけ無駄だな。お前が『引いた』その直線、山脈を貫通して魔王領のど真ん中を突っ切っているぞ)
【建設:アダマンタイトの弾丸鉄道】
盆ちゃんは翌朝、王都の門の前に立っていた。手には「工事用ヘルメット(神の加護)」と、巨大な「杭打ち機(次元固定杭)」。
「ポチ、私は路盤を固めます。アレス君たちはレールを運んでください。……あ、レールは自宅の庭で精錬した『高純度アダマンタイト』ですので、少々重いですが腰を入れれば大丈夫ですよ」
「は、はい! ……って、重っ!? これ一本で城壁より硬いんですけど!?」
アレスが悲鳴を上げながらレールを運ぶ後ろで、盆ちゃんが作業を開始した。
『システム・オプティマイザー:大陸インフラの再定義を開始』
『地脈を「超電導・安定化」へ変換。摩擦係数を0.0001%に固定』
盆ちゃんが杭を一回打つたびに、ドォォォンという轟音と共に大地が平伏し、鏡のように平らな道が数キロ先まで一瞬で伸びていく。
数時間後。王都から隣国へと続く、白銀に輝く「永久不滅の線路」が完成した。
【車両:蒸気機関車「盆山1号」爆誕】
終点に現れたのは、重厚な黒鉄のボディに金の装飾が施された巨大な機関車だった。
動力源は、四天王ベルゼルスの「重力魔法」と、盆ちゃんが神の庭で採取した「永久沸騰水」。
「さあ、車内販売のエース、カーミラさん。準備はいいですか?」
魔界の四天王の一人、吸血鬼のカーミラが、なぜか完璧な客室乗務員の制服に身を包み、ワゴンを押して現れた。
「ええ……。私の魅了魔法は、いまや『特製イチゴオレ』を完売させるためだけにあるわ。……でも不思議ね。お客様の笑顔を見るのが、村を滅ぼすより快感だなんて」
「それが『やりがい』というものですよ、カーミラさん」
【初走行:時速500kmの浄化ツアー】
「出発進行(ご安全に)」
盆ちゃんが合図を送ると、盆山1号は音もなく加速を始めた。
時速500km。景色が流星のように後ろへ飛び去る。しかし車内は、盆ちゃんの「最適化」により、揺れ一つなく、静かなジャズが流れる高級ラウンジのようだった。
「おや、窓の外を見てください。空気が綺麗になっていきますよ」
機関車が煙突から吐き出しているのは、黒煙ではない。それは「高純度マナの芳香成分」と、周囲の汚染を中和する「浄化粒子」だった。
盆山1号が駆け抜けた沿線では、枯れていた森が瞬時に蘇り、凶暴な魔物たちが列車の美しさに感動して「鉄オタ」へと転向。線路沿いで仲良く手を振るという奇跡が起きていた。
「……盆栽さん。隣国の王都まで、わずか2時間で着いちゃいました。……これ、世界の力関係が完全に終わりましたね」
ミナは、車窓から見える「浄化された大陸」を眺め、もはや驚くのをやめてイチゴオレを啜った。
【結果:物流の神域化】
王都に到着した「盆山1号」から降りてきたのは、移動の疲れを一切感じさせない、むしろ入浴帰りかと思うほどツヤツヤした顔の乗客たちだった。
「移動しながら健康になり、到着時にはマナーが身についている……。これが盆山流・次世代モビリティです」
こうして、大陸中の「馬車ギルド」が「盆山鉄道・保線区」へと転職を希望。世界はかつてないスピードで、盆ちゃんの「丁寧な支配」の下に一つになろうとしていた。
報告:第13章の「規格外な変貌」
1. 「盆山アクアライン」の構想へ:
大陸横断に成功した盆ちゃんは、早くも「海路の非効率性」に目を向け始める。
2. 四天王のセカンドキャリア:
カーミラが車内販売で「伝説のカリスマ店員」として雑誌(という名の予言書)に掲載され、魔界の女の子たちの憧れの的になる。




