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真桃太郎演義  作者: さばさば


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8/9

第8話

山の中は、昼でも薄暗かった。


木々が空を覆い、

足元には湿った落ち葉が積もっている。


桃太郎は、剣を握りながら歩いていた。

あの日、炎を纏わせた剣の感触が、

まだ手に残っている。


「……使える。確かに使える」


そう言い聞かせるように呟く。


だが、胸の奥には

小さな不安がくすぶっていた。



そのとき。


――ガサッ。


茂みが揺れる。


桃太郎は立ち止まり、

ゆっくりと剣を構えた。


「……誰だ。」


現れたのは、鬼だった。


酒呑童子の配下。

人の形をしながら、

明らかに“人ではない”目。


「……子どもか」


鬼が、嘲るように笑う。


その瞬間、

桃太郎の心臓が跳ねた。



怖い。


逃げたい。


足が、言うことを聞かない。


「……でも」


村の女たちの顔が浮かぶ。

泣いていた人たち。

連れ去られる背中。


「……行け」


桃太郎は剣を振る。


炎を呼び起こそうと、

強く念じる。


――だが。


ゴウッ、と音はした。


しかし炎は、

剣ではなく、地面に噴き出した。


「……っ!」


炎は広がり、

枯葉に燃え移る。


制御できない。


鬼は一歩引き、笑った。


「ははっ、なんだそれは」


「違う……!」


焦りが、

さらに炎を荒らす。


木々が軋み、

煙が立ち込める。



桃太郎の呼吸は乱れ、

頭が真っ白になる。


「止まれ……止まれ……!」


だが、炎は止まらない。


剣を落とし、

その場に膝をつく。


「……俺は」


怖かった。


鬼よりも、

自分の力が。


その隙を、鬼は見逃さなかった。


大きな影が迫る。


「終わりだ」



――ドンッ。


衝撃。


だが、痛みは来なかった。


桃太郎が顔を上げると、

そこには倒れた木があった。


鬼は、その向こうで舌打ちしている。


「……今日は運がいいな」


そう言い残し、

鬼は森の奥へ消えた。



炎は、いつの間にか消えていた。


残ったのは、

焦げた地面と、

震える自分。


桃太郎は、剣を拾う。


手が、まだ震えている。


「……ダメだ」


「俺は……この力を使いこなせていない」


そう呟き、

空を見上げる。


木々の隙間から見える空は、

遠く、狭かった。



そのとき。


遠くで、

低く、重い鳴き声が響いた。


――ガウゥ……。


人ではない。

鬼でもない。


だが、

ただならぬ存在の気配。


桃太郎は、そちらを見る。


「……なんだ」


知らないはずなのに、

なぜか胸がざわつく。

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