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真桃太郎演義  作者: さばさば


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3/12

第3話

それから、桃太郎は山へ通うようになった。


誰に言われたわけでもない。

朝になると体が勝手に山を向く。


熊は、いつも同じ場所にいた。


まるで――

最初から待っていたかのように。


『来たか』


それだけ言って、

すぐに修行が始まる。



最初に教えられたのは、構えだった。


剣はない。

拳も、蹴りも使わせない。


『立て』


『息を整えろ』


『地面を踏め』


それだけ。


何時間も、

同じ姿勢で立たされる。


足が震え、

汗が滝のように流れ、

何度も倒れた。


「……もう、むり」


弱音を吐いた瞬間。


ドンッ


熊の一撃で、

地面に叩きつけられる。


『足は崩れても、心は崩すな』


その言葉だけが、

胸に残った。



次は、投げ。


熊は容赦しない。


掴まれたと思った瞬間、

宙を舞い、

背中から落ちる。


息が詰まり、

視界が白くなる。


「……っ!」


『立て』


『また来い』


それの繰り返し。


だが、不思議なことに、

熊は決して致命的なことはしなかった。


限界の、一歩手前。


そこを、何度も踏ませる。



夜。


焚き火の前で、

桃太郎は倒れ込む。


「……ねえ」


「なんで、ぼくこんなことしなければいけないの?」


熊は、火を見つめたまま答える。


『考えるな』


『生きるために、強くなれ』


それだけだった。


でもその背中は、

どこか焦っているように見えた。



日々は、静かに過ぎていく。


・丸太を担いで山を登る

・滝に打たれて立ち続ける

・目を閉じて、気配だけで熊を探す


失敗すれば、叩き伏せられる。


それでも、

桃太郎は泣かなかった。


逃げなかった。


熊は、何も褒めない。

だが、手を抜くこともない。


それが、

何よりの答えだった。

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