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真桃太郎演義  作者: さばさば


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2/8

第2話

桃太郎が六歳になったころ、

老夫婦は不思議に思っていた。


この子は、山を怖がらない。


獣の声がしても怯えず、

深い森の中でも、なぜか迷わない。


まるで――

何かを探しているようだった。



その日、桃太郎は一人で山へ入った。


風が止み、

木々がざわめく。


背後から、重く、確かな足音。


振り向いた瞬間、

そこにいたのは――巨大な熊。


普通なら、逃げ出す。

だが桃太郎は、足が動かなかった。


熊も、すぐには動かなかった。


じっと、

信じられないものを見るように、

桃太郎を見つめている。


そして――


『……いた』


低く、かすれた声。


『……間違いない。』


その声には、

驚きと、安堵と、

長い時間の重さが混じっていた。


「……え?」


桃太郎は、不思議とその声が聞こえた。


「ぼくのこと……知ってるの?」


熊は答えない。

ただ一歩、近づき、また止まる。


『……大きくなったな』


まるで、

探し続けていたものを

ようやく見つけたかのように。


熊は、ゆっくり背を向ける。


『ついてこい』


理由は分からない。

でも、逆らえなかった。



山奥の広場。


踏み固められた地面。

長い間、誰かが立ち続けていた場所。


熊が立ち上がる。


――相撲の構え。


「……なに、これ?」


戸惑いながらも、

桃太郎の体が自然と構えを取る。


ドンッ!


一瞬で吹き飛ばされる。


痛い。

でも、なぜか――怖くない。


「……もう一回」


熊は、わずかに目を細めた。


何度も、何度も。


倒され、立ち上がり、

転び、それでも前に出る。


熊は手加減をしない。

だが、殺す気もない。


まるで――

確かめているようだった。



夕暮れ。


二人は、並んで座る。


「ねえ……」


桃太郎が聞く。


「どうして、ぼくにこれ教えるの?」


熊は、しばらく空を見ていた。


『……理由はある』


「なに?」


熊は、答えなかった。


『今は、いい』


立ち上がり、森へ向かう。


だが、歩き出す前に、

一度だけ振り返る。


『……生きていろ』


『それだけで、いい』


熊は、森の中へ消えた。



その夜。


桃太郎は夢を見る。


暗い山の中を、

誰かが必死に探し回っている夢。


「……やっと、見つけた」


その声で、目が覚めた。


胸の奥が、

なぜか、ぎゅっと締めつけられていた。


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