表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能扱いされた領主ですが、部下が優秀すぎて最強領地になりました ~切り捨てない統治は、才能だけを残す~  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/18

第7話 悪評という速度

 噂が広がるのに、理由はいらない。


 必要なのは、分かりやすい形と、少しの悪意だけだ。



 王都の一室で、数人の貴族が円卓を囲んでいた。


「聞いたか」

「例の辺境だろう」


 誰かが、わざとらしく肩をすくめる。


「魔法実験で火事。小屋が一つ焼けたそうだ」

「死者は?」

「いない。だが、それが逆に都合がいい」


 笑い声が、静かに広がった。


「無能だと評価して正解だったな」

「事故が起きた、という事実だけで十分だ」


 机の上に、視察団の報告書が置かれる。


 ――指導力不足。

 ――危機管理能力に疑問。


 そこに、新しい一文が追記された。


 ――実害発生。


 文字は短い。

 だが、その重さは、数字よりも雄弁だった。



 別の部屋では、若い官僚が書類をめくっていた。


「……これ、再編案件に回りますか?」

「回す」


 即答だった。


「事故が起きた以上、猶予は与えられない」

「ですが、被害は軽微で……」

「軽微かどうかは、結果論だ」


 官僚は、黙って頷いた。


 ここでは、過程は評価されない。



 同じ頃、別の領地。


 商人たちが集まる応接室で、噂話が飛び交っていた。


「辺境で火事があったらしい」

「やっぱり、無能領主か」

「うちの取引先、大丈夫か?」


 誰かが、慎重に言う。


「実際に住んでる連中は、どう思ってるんだ?」

「知らん。だが、事故が起きた時点で信用は落ちる」


 それが、現実だった。



 一方、当の領地。


 町は、平静を装っていた。


 市場は開かれ、配給も滞りなく行われている。

 焼けた小屋は、すでに撤去されていた。


 だが、人々の会話は、少しだけ変わった。


「……最近、何か多いよな」

「前は、何も起きなかったのに」


 “何も起きない”ことが、

 この町の唯一の誇りだった。


 それが失われた今、

 不安は、形を持ち始める。



 城では、参謀が報告を受けていた。


「王都で、噂が回っています」

「内容は」

「無能領主が、事故を起こした、と」


 参謀は、目を閉じた。


「……早いな」

「誰かが、意図的に流しています」

「だろうな」


 参謀は、執務室の扉を見た。


 中では、領主が一人、書類を処理しているはずだ。


「知らせるか?」

「知らせる」


 扉を叩こうとして、参謀は手を止めた。


 ――知らせたところで、何が変わる?


 あの領主は、

 状況を知っても、同じ判断をする。


「……いや、いい」


 参謀は、踵を返した。


 この悪評は、

 避けられない流れの一部だ。



 夜。


 酒場の隅で、誰かが言った。


「そろそろ、潮時かもな」

「……そうかもしれん」


 それは、最初の兆しだった。


 去る者が出る前の、

 静かな前触れ。


 無能と呼ばれる領主の城は、

 今、世界から試されている。



ここまでご覧いただきありがとうございます。


次の投稿からは、1日1回の更新になります。


ブックマークをして、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ