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無能扱いされた領主ですが、部下が優秀すぎて最強領地になりました ~切り捨てない統治は、才能だけを残す~  作者: 山奥たける


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最終話 無能なまま

 王都からの通達は、簡素だった。


 昇進なし。

 表彰なし。

 追加予算なし。


 そして――再編対象外。


 理由は、明記されていない。



「結局、何だったんでしょうね」


 参謀が、書類を畳みながら言った。


「功績もない」

「失敗もない」

「評価しようがない」


 領主は、机から顔を上げなかった。


「無能だからな」

「……そうですね」


 否定しないところが、腹立たしい。



 領地は、拡大しなかった。


 だが、縮小もしなかった。


 人の数は、少ないまま。

 成果は、目立たない。


 それでも、崩れてはいない。



 城下町では、今日も仕事が進んでいた。


 号令はない。

 掲げられる理想もない。


 だが、壊れないように、

 皆が勝手に気を配っている。



 かつての魔道具職人の工房は、

 今も使われている。


 名前は残らない。

 だが、仕組みは残った。


 役に立たなさそうな男は、

 今日も同じ場所に立っている。


 誰も評価しない。

 だが、誰も困らない。



 夕方。


 城門の前に、一人の旅人が立っていた。


 痩せた体。

 疲れた目。


「用件は?」


 門番の問いに、旅人は答える。


「……仕事を探している」


 門番は、城を振り返った。


 豪華な城ではない。

 英雄の名もない。


 だが――切られない場所だ。


「入れ」



 執務室。


 領主は、書類を書いていた。


 配置表。

 備蓄記録。

 次の冬の準備。


 新しい名前が、一つ増える。


 それだけだ。



 参謀が、窓の外を見て言った。


「……ここは、最強ではありませんね」

「そうだな」


「むしろ、不器用だ」

「無能だ」


 領主は、淡々と答える。



 英雄にならなかった領主。

 改革者にもならなかった男。


 歴史書には、名前すら残らないだろう。


 だが、消耗しない場所だけが、

 静かに、ここに残った。


 無能と呼ばれた領主の城は、

 今日も変わらず、

 才能をすり潰さないまま、

 存在していた。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


この物語は、

「無能とは何か」という、とても曖昧で、とても便利な言葉から書き始めました。


結果を出さない者は無能。

目立たない者は無能。

声の大きくない者は無能。


けれど現実では、

“壊れないこと”や

“誰かを切り捨てないこと”は、

評価の対象になりにくいものです。


この物語の領主は、最後まで無能のままでした。

出世もしませんし、称えられもしません。

歴史書に名が残ることもないでしょう。


それでも彼の城には、

才能がすり減らない場所が残りました。


それが正しいかどうかは、

作者である私にも分かりません。

読んでくださった皆さん一人ひとりが、

それぞれの答えを持ってくだされば、それで十分だと思っています。


派手な展開や爽快な逆転を期待していた方には、

少し物足りなかったかもしれません。

それでも最後まで付き合ってくださったことに、

心から感謝します。


もしこの物語が、

「評価されないこと」や

「遅いこと」や

「何者にもなれなかった時間」を、

少しだけ肯定するきっかけになったなら、

これ以上の喜びはありません。


またどこかで、

違う形の物語を書けたらと思います。


本当に、ありがとうございました。

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