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無能扱いされた領主ですが、部下が優秀すぎて最強領地になりました ~切り捨てない統治は、才能だけを残す~  作者: 山奥たける


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第19話 無能の価値

 王都では、報告書が積み上がっていた。


 成功例と、失敗例。

 改革と、破綻。


 そのどちらにも、共通点がある。


 ――速すぎた。



「こちらの領地は、三か月で税収を二割改善」

「こちらは、半年で兵站を再編」


 会議室で、若い官僚が誇らしげに説明する。


 だが、その後に続く資料は、重い。


「……暴動」

「……医療崩壊」

「……指導者、失脚」


 成果は早い。

 だが、耐えられなかった。



 年配の官僚が、一枚の書類を指で叩いた。


「では、これはどう説明する」


 そこに書かれていたのは、辺境領地の報告。


 成果:特になし。

 改革:なし。

 評価:低。


 だが、備考欄にだけ、短い一文がある。


 ――崩壊なし。



「……無能では?」

「無能だな」


 誰かが、即答した。


「だが、壊れていない」

「それは、評価に値するのか?」


 沈黙。


 誰も、はっきり答えられなかった。



 別の官僚が言う。


「事故もあったはずです」

「小規模だ。

 責任者は逃げなかった」


「人も減っています」

「それでも、最低限は維持している」


 それは、褒め言葉ではない。


 だが、否定しきれない事実だった。



「使い道がない」


 最終的に、そう結論づけられた。


「英雄にもならない」

「改革者にもならない」

「失敗しても、大きく崩れない」


「……厄介だな」

「だから、放置する」


 それが、王都の判断だった。



 同じ頃、別の領地。


 急進的な改革を進めていた領主が、民衆に囲まれていた。


「約束が違う!」

「生活が成り立たない!」


 改革は正しい。

 だが、人は置いていかれた。



 そして、辺境領地。


 朝は、いつも通り始まる。


 鐘が鳴り、

 門が開き、

 仕事が動く。


 派手な号令はない。


 だが、誰も逃げていない。



 参謀は、城壁の上で領地を見下ろしていた。


「……評価されない場所だな」

「そうだな」


 いつの間にか、領主が隣に立っていた。


「それでも、残る人間がいる」

「必要だから、残っている」


 参謀は、苦く笑った。


「無能の価値、というやつか」

「価値があるかは、俺が決めることじゃない」


 領主は、静かに言った。



 王都では、この領地の報告書は棚にしまわれた。


 英雄にならないものは、記憶されない。


 だが――


 崩れなかったという事実だけは、

 消されずに残った。



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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