表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能扱いされた領主ですが、部下が優秀すぎて最強領地になりました ~切り捨てない統治は、才能だけを残す~  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/17

第17話 遅すぎた判断

 待つという判断は、

 いつも正しいとは限らない。



 異変は、小さな違和感から始まった。


「……最近、顔色が悪いな」


 配給所の前で、誰かが呟いた。


 対象は、治癒魔法師だった。


 第2章に入ってから流れ着いた人物。

 事故の後始末を淡々と引き受け、

 誰にも感謝されず、

 それでも黙って働いていた。



 彼女は、無理をしていた。


 自覚は、なかった。


 傷を癒す。

 疲労を取る。

 それを繰り返す。


 「まだ大丈夫」


 その言葉を、何度も使った。



 参謀は、異変に気づいていた。


「……治癒魔法師の件ですが」

「何だ」


「仕事量が、多すぎます」

「本人は、何と言っている」

「問題ない、と」


 領主は、少し考えた。


「なら、様子を見る」

「……はい」


 それは、これまで通りの判断だった。



 翌日。


 治癒魔法師は、工房で倒れた。


 大事には至らなかった。

 命も、失われていない。


 だが――


「……もう、魔法は使えません」


 医師の言葉は、静かだった。


 魔力の枯渇。

 回復不能。



 城の一室。


 治癒魔法師は、窓の外を見ていた。


「……ごめんなさい」

「謝る理由はない」


 領主の声は、淡々としていた。


「私が、勝手にやったことです」

「そうだな」


 否定しなかった。


 だからこそ、重い。



 参謀は、歯を食いしばった。


「止めるべきでした」

「俺が止めなかった」


 領主は、視線を逸らさなかった。


「待つという判断は、

 正しかったかもしれない」


 一拍置く。


「だが、早くはなかった」



 数日後。


 治癒魔法師は、町を出た。


 魔法が使えなくなった以上、

 ここにいる理由はない。


「……引き止めませんか」


 従者が、小さく尋ねる。


「できない」


 それが、答えだった。



 門の前。


 彼女は、最後に振り返った。


「ここは、嫌いじゃありませんでした」

「そうか」


「……でも、優しすぎます」

「そうかもしれない」


 それだけだった。



 彼女が去った後、

 城は、少しだけ静かになった。


 いや――

 元に戻っただけだ。



 夜。


 領主は、一人、帳簿を閉じた。


 そこには、何も書かれていない。


 失われた魔法も、

 失われた可能性も、

 数字にはならない。


(救わなかった)


 救えなかった、ではない。


 判断を待った結果、

 誰かの未来を削った。


 無能と呼ばれる理由は、

 この日、また一つ増えた。



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ