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無能扱いされた領主ですが、部下が優秀すぎて最強領地になりました ~切り捨てない統治は、才能だけを残す~  作者: 山奥たける


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第15話 抜ける人間

 彼は、無駄が嫌いだった。


 時間も、感情も、そして――曖昧さも。



 男は、王都で組織改革に関わっていた。


 手順を整え、役割を分け、

 成果を数値で示す。


 正しさは、いつも彼の側にあった。


 だからこそ、ここに来た。


 ――切られない場所。

 ――事故が起きても、人を捨てない領地。


 だが、数日で気づいた。


 ここは、“正しさ”を急がない場所だ。



 朝。


 簡易会議室で、男は参謀に言った。


「人の流入が続いています」

「そうだな」

「管理が必要です」


 参謀は、即答しなかった。


「何を、管理する?」

「役割です。責任です。評価です」


 理路整然とした言葉。


「秩序がなければ、必ず崩れます」

「……それは、正しい」


 参謀は、そう前置きした。


「だが、ここでは急がない」



 昼前。


 男は、領主の執務室を訪れた。


「提案があります」

「聞こう」


「人材を整理し、役割を明確化すべきです」

「理由は」

「効率が悪い」


 領主は、少しだけ考えた。


「今は、しない」

「……なぜです」


「急ぐと、残る人間が変わる」

「変えた方が、良いのでは」


 領主は、首を振った。


「それは、俺の領地ではない」


 男は、言葉を失った。



 夕方。


 男は、城下町を歩いた。


 職人たちは、各々のペースで作業をしている。

 成果は、見えにくい。


(遅い)


 それが、彼の正直な感想だった。



 夜。


 男は、荷をまとめた。


 決断は、冷静だった。


(ここでは、成果が遅すぎる)


 間違ってはいない。

 ただ、合わない。



 翌朝。


 門番が声をかける。


「もう行くのか」

「ああ」


「理由は」

「合理的ではない」


 それだけだった。



 城では、参謀が報告する。


「例の男が、去りました」

「そうか」


 領主は、顔を上げなかった。


「止めなくて、よろしいのですか」

「正しい人間は、別の場所で輝く」


 参謀は、少しだけ笑った。



 城下町の外。


 男は、一度も振り返らなかった。


 彼は正しい。

 そして、この領地も、間違ってはいない。


 ただ――


 同じ速度で、歩けなかっただけだ。


 無能と呼ばれる領主の城は、

 また一人、

 “正しい人間”を手放した。



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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