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無能扱いされた領主ですが、部下が優秀すぎて最強領地になりました ~切り捨てない統治は、才能だけを残す~  作者: 山奥たける


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第13話 残る理由

 男は、残った。


 理由は、特別なものではない。



 彼は、元魔道具職人だった。


 王都の工房にいた頃、成果はすべて上に持っていかれた。

 名前は残らず、責任だけが積み上がる。


 ある日、失敗作の責任を一人で被せられた。


 それで、終わった。



 この領地に来たのは、偶然だ。


 噂を信じたわけでもない。

 期待もしていなかった。


 ただ、切られないと聞いた。


 それだけだった。



 工房は、小さかった。


 設備は古い。

 資材も限られている。


 だが、誰も口を出さない。


(……誰も、成果を聞かない)


 それが、最初は不安だった。



 三日目。


 男は、自分から執務室を訪れた。


「領主様」

「何だ」


「工房の魔力配線ですが、非効率です」

「そうか」


「直しても、よろしいですか」

「必要なら」


 許可は、それだけだった。



 男は、配線を引き直した。


 劇的な変化はない。

 だが、事故の確率は下がる。


 誰も褒めない。

 誰も驚かない。


 それでも――


(……奪われない)


 それが、何よりだった。



 夕方、参謀が声をかける。


「進捗は」

「問題ありません」


「成果は」

「数値上は、微増です」


 参謀は、頷いた。


「記録しておく」

「……それだけですか」

「それだけだ」


 男は、小さく笑った。


 それでいい。



 夜。


 男は、工房に一人残っていた。


 灯りの下で、工具を整える。


 誰も見ていない。

 だが、誰も奪わない。


(……ここなら)


 名前はいらない。

 称賛もいらない。


 ただ、壊れないものを作れる。



 翌朝。


 門番が、男に声をかけた。


「まだ、いるのか」

「ああ」


「いつまで」

「……必要とされるまで」


 門番は、少し驚いた顔をした。



 執務室。


 従者が報告する。


「例の職人ですが」

「どうした」

「残るそうです」


 領主は、頷いた。


「そうか」


 それだけだった。



 城下町の灯りは、増えていない。


 だが、消えもしなかった。


 無能と呼ばれる領主の城には、

 評価を捨てた者が、静かに根を下ろし始めていた。



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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