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無能扱いされた領主ですが、部下が優秀すぎて最強領地になりました ~切り捨てない統治は、才能だけを残す~  作者: 山奥たける


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第10話 それでも変わらない

 朝は、変わらず訪れた。


 鐘が鳴り、門が開き、

 城下町に人の気配が戻る。


 数は、少ない。

 だが、ゼロではない。



 執務室で、領主はいつも通り席に着いた。


 書類の山は、以前より低い。

 だが、内容は重い。


「本日の報告です」


 従者が、静かに差し出す。


「人口、さらに減少」

「どの程度だ」

「……想定の範囲内です」


 領主は、頷いた。


「なら、続ける」


 その一言で、話は終わった。



 参謀が、昼前に訪れる。


「王都の動きが、早まっている」

「再編か」

「ほぼ、確定だ」


 参謀は、試すように続けた。


「やり方を変えれば、止められるかもしれない」

「例えば?」

「派手な成果を見せる」

「……無理だな」


 即答だった。


「今から演出しても、事故の後だ」

「では、なぜ変えない」


 領主は、少し考えてから答えた。


「変えたら、残っている者を裏切る」


 参謀は、何も言えなかった。



 午後、城下町。


 人通りは減ったが、

 残った者たちは、黙々と働いている。


 声高に不満を言う者はいない。

 期待もしない。


 ただ、ここにいる。



 魔法研究者が、報告に来る。


「次の実験は、監督を置きます」

「そうしろ」


「……それでも、続けていいのですか」

「必要だからな」


 研究者は、深く頭を下げた。


 この領地では、

 失敗しても、役割を奪われない。


 それが、残る理由だった。



 夕暮れ。


 領主は、城壁の上に立っていた。


 灯りの数は、確かに減った。

 だが、その一つ一つが、はっきり見える。


(守る数は、減った)


 それは、事実だ。


 だが同時に、


(守る意味は、濃くなった)


 そうも感じていた。



 夜。


 執務室で、領主は最後の書類に目を通す。


 王都からの通達案。

 まだ、正式ではない。


 だが、時間の問題だ。


 彼は、それを脇に置き、ペンを取った。


 新しい書類を書く。


 住民名簿。

 配置計画。

 次の冬の備え。


 再編されるかもしれない領地の、

 未来の準備だ。


 無意味だと、誰かは言うだろう。


 だが――


「……それでも、やる」


 誰に聞かせるでもなく、呟く。


 無能と呼ばれる領主は、

 やり方を変えなかった。


 評価が下がっても。

 人が減っても。

 終わりが近づいても。


 なぜなら、この場所は――


 才能が、消耗されない数少ない場所だったからだ。



 城の外。


 一人の旅人が、門をくぐる。


 痩せた体。

 鋭い目。


 どこにも、行き場がなさそうな顔。


 門番が声をかける。


「用件は?」

「……仕事を探している」


 門番は、城を振り返った。


 無能と呼ばれる領主の城は、

 今日も、静かに人を迎え入れていた。



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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