表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冒険者ギルドの憂鬱

 こんにちは。こちらは初めてですか?


 おや。最近こちらに転生してきて、周囲の奨めで冒険者に? なるほどです。では、身分を証明するものをご提示いただけますか。


 え? 身分証明書が必要なのかですって? 当たり前でしょう。確かに一昔前は、来る者拒まずですぐに冒険者証を発行しておりました。その結果、何が起こったと思います?


 各地で盗みや恐喝など、違法行為を働く者。依頼遂行の邪魔をして、当ギルドの評判を貶めようとしてくる者。異性の冒険者とねんごろになるためだけに振る舞い、場の空気を壊す者。当ギルドにスパイとして潜入する者。


 度重なる不届き者の出現により、当ギルドは一時期、各方面からの信頼を失墜しかけました。


 もうおわかりですね。そのようなことを繰り返さないために、身分証明書が必要となったわけです。ですので、ご提示を。


 はい。確かに。では、この申込書に記入をお願いいたします。ああ、住所欄は異世界でのものでよろしいですよ。はい、ありがとうございます。


 では、説明会は明日の午前10時、ブンデーラの街の会場までお越しください。


 え? これですぐに冒険者になれるんじゃないのか、と? そんなわけないでしょう。まず、ギルドに加入するための心得、任務中の約束事、他の冒険者たちとの接し方など、必要最低限なことをお教えする場ですから、参加していただかないと困ります。


 なんですって? 俺が知っているギルドと違う、と?


 貴方がどこで誰から、もしくは何で、ギルドのことを聞きかじったのかはわかりません。実際、あなたのように勘違いをなさっている冒険者志望の方は多い。とくに転生者の方に多く見受けられる傾向にあります。


 いいですか。よく考えてください。


 例えば、『はい受け付けましたー。これで貴方も今から冒険者でーす』となって、仕事を与えたとして、貴方がたがきちんと仕事を遂行すると、我々が信用できると思いますか?

 

 それに、気付いていないかも知れませんが、あくまでも貴方方のような転生者は『我が国外部の者である』ということをお忘れなく。多少の警戒感を持たれるのは、仕方のないことです。諦めてください。


 俺はSSランクの冒険者と同等の実力がある、と? なるほど、それは頼もしい。ですが、当ギルドに所属するのであれば、一番下のEランクから始めてもらう決まりです。


 ちなみに、ギルドランクの昇進方法ですが、いかに問題なく依頼数をこなすか、に重点を置かれます。もちろん個人の実力も重要ですが、強いかどうかのみで上に昇れることはありません。


 ランクというものは、そのギルドでの立場をはかるものです。確かに高ランクになればなるほど、任務を選ぶ幅も広がります。現場によっては、リーダーをお任せすることも増えてくることでしょう。


 そのためには、任務をこなしていただいて、いかに信用できるか。きちんと任務をこなしてくれるか。どういった現場が向いているのかなどを、我々は見定めないといけないのです。


 そのために、冒険者志望の方々にはまず説明会に参加していただき、Eランクの現場をこなしていただいているのです。ご理解いただけましたか?


 結構。他にご質問は?


 お仕事の選び方ですね。説明会などを経て正式にギルドメンバーになりましたら、こちらから通信板と呼ばれる、通信魔法を施した魔道具を貸与いたします。それを使い、当ギルドの手配部にご連絡ください。


 手配員から、今現在貴方にお願いしたいお仕事をいくつか紹介させていただきます。その中から選んでいただくかたちになります。


 え? ギルドで直接張り出された依頼を選ぶのではないのか、ですって? そんなわけないでしょう。そんなことをしたら、明らかにレベルの違う依頼を受けたいと、駄々をこねる冒険者が出てくるに決まっています。


 事実、それで何人の命が失われたと思いますか? しかもその責任は、私どもギルドにかかってくるのです。命知らずのアホどもが死んだ責任を被せられるなど、まっぴらごめんです。


 そうそう。ちなみに、参加人数には限りがありますので、パーティでのご参加などがあれば、事前に申し出てください。無許可でパーティでの参加などは、認められません。


 だってそうでしょう? 依頼主が提示してくる予算には、限りがあります。その予算に見合った人数でなければ、赤字になってしまいます。稀に追加などもありますが、基本的にはありません。


 それに、任務遂行の制限時間なども設定されています。何時から何時まで、何日間など。その時間内で終わらせることが出来なければ、その任務は失敗。ギャラは払えません。


 同じ理由で、複数で臨む任務を「俺ひとりで充分だ」などと、勝手に人数を変更するのもNGです。


 なぜ怒るのです。当然でしょう。こちらとクライアントは、約束事と契約で成り立っているのです。そんなことをされたら、また我がギルドの信用がなくなってしまう。貴方はその責任が、取れますか?


 この際ですのでお教えしておきますが、当ギルドでは、冒険者の方々が座ってお酒を飲むラウンジも、戦利品を買い取る施設もございません。


 当たり前でしょう。そんなことをしていたら、どれだけ大きな建物が必要になると思いますか。貴方はギルドをなんだと思っているのですか。我々は冒険者にお仕事をお願いするための組織ですよ。


 まぁ、当ギルドの周囲には、買い取りをしてくれる道具屋さんや、飲食が出来る居酒屋さんなどが、冒険者の需要を見込んで営業していますので、そちらへどうぞ。

 

 他にご質問は? ございませんか。では、明日の説明会、どうぞよろしくお願いいたします。貴方の当ギルドへの正式参加を、心よりお待ち申し上げております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ